遠くて近い世界で

司書Y

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L's rule. Side Hisui.

Gulab Jamun 5

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 こんなことは初めてだった。
 愛する人と、身体を繋げるということがどういうことなのか、初めて知った。震えるくらいに幸福で、信じられないくらいに気持ちいい。
 その堪らない心地よさに。スイはうっとりと目を閉じた。

「……ぁ……こんな……ふうに……なるんだ……。すき……な……ひと……なら…………っん……きもち……い」

 目を閉じても、浮かんでくるのはアキの顔だけだった。その人でいっぱいで、悪夢の入りこむ場所なんてどこにもなかった。

「ごめん。翡翠……も無理だ。そんなに煽らないで……」

 アキの苦しげな吐息にそんな言葉が混じる。そして、突然。激しい動きが始まる。

「ひっ……あああぁ!」

 身体の最奥を激しく穿ち抜かれて、その白い首が限界までのけ反る。
 そうしないと、耐えきれないほどの快楽に、それでも耐えきれなくて、悲鳴のような声を上げて、翻弄される。

「……翡翠……愛してる」

 与えられる激しい快楽に掠れた喉から洩れる嬌声を、アキの噛みつくようなキスが飲みこむ。かわりに唇の端から二人分の唾液が零れる。その音も、激しい動きにその部分から聞こえる淫猥な水音も、もう、恥ずかしいとは思わなかった。それは、もう、スイの気持ちを煽る材料にしかならない。

「……んっふ……ああぁ……アキ……秋生……あいし……て……ひぁ」

 甘い、喘ぎの間に、何度も繰り返しその名前を呼ぶ。普段、呼べないその呼び方で。

「翡翠……っ愛してる。絶対に……離さない」

 離さないと。アキの言葉。それすらも、全部、身体のうちにある悦楽を引き出してくれる。
 頭が真っ白になって、目の前がちかちかと瞬く。限界がもう近いことを感じる。

「や……っ。あぁ……っ。いっしょ……だめ! イっちゃうから……ぁ」

 それなのにさらにアキの手が、スイ自身を握りこんで、刺激してきた。
 過ぎた快楽に必死に首を振る。スイはアキの手を止めようと震える手をアキの手首に伸ばした。でも、震える手には全く力が入らなくて、結局そのままもう片方のアキの手にからめ捕られてしまった。

「あ……あぁ……っ……アキ……っ」

 一際激しくなる抽挿。荒い吐息と、肌のぶつかる音と、淫靡な水音。
 解放を求めて、高まる熱に、その人のこと以外何も考えられずに、ただ揺れる視界の先その人の顔だけを見ていた。

「は……愛してる……翡翠……っも……イクよ?」

「……おれ……もっ……あ……ぁあ……アキっ……!」

 同時に。とは言えないけれど、アキはスイのなkで、スイはアキの手の中にそれぞれの精を吐きだした。

「……は……ぁ……」

 身体が痺れたようで全く力が入らない。
 脱力したその髪に、頬に、瞼に、アキがキスをくれる。
 それから、その綺麗な赤い瞳がすごく近くで見つめてくれた。
 重なる唇。

「愛してるよ?」

 きっと、これが幸せだ。

「……うん。俺も……愛してる」

 力の入らない手で、アキの首を抱きしめる。
 きっと、今日のことは一生忘れることはない。
 スイは思う。
 多分、今日、自分は生まれたんだと思う。いろいろなこと、沢山辛いことがあったけれど、彼に愛されてもいい自分に変われた気がした。
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