遠くて近い世界で

司書Y

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L's rule. Side Akiha.

可愛い人が俺を尊死させようとしてきます 1

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 朝方目が覚めた。
 自分は寝起きが悪いと、アキは自覚している。でも、今日はすんなりと目が覚めた。腕の中に温かで柔らかな感触があったから。
 腕の中にはその人がいる。
 泣かせてしまったから、目元が少し腫れていて、でも、眠るその表情は穏やかだった。
 起こさないようにそっと、髪を梳く。
 愛おしいと。気持ちが溢れだした。

 キス。したい。

 心の中で思う。でも、キスをしたら、起こしてしまうかもしれない。
 もちろん、昨夜は無理をさせたつもりはない。いや。何年かぶりの行為で無理をしていなかったはずはないのだが。一度でも受け入れてもらったことが幸せで、それ以上を望むつもりはなかった。
 自分たちにはまだ時間は沢山ある。それで、充分だ。
 ただ、今はその人の穏やかな寝顔を見ていたい。だから、起こしてしまいたくなかった。

「ん……」

 スイが小さく身じろぐ。それから、温かさを求めて、アキの胸にすり寄ってくる。
 そんな仕草が、心の底から愛おしい。

「……愛してるよ? スイさん」

 小さく呟いたつもりだった。
 でも、スイはその声で瞼を開けた。

「……ぁ。アキ君……おはよ」

 それから、アキの姿を見つけると柔らかく笑う。
 寝顔をもっと見たかったけれど、その笑顔が嬉しくて、アキはその唇に軽くキスをした。

「おはよう。も、秋生って呼んでくんないの?」

 昨夜、熱に浮かされたように呼んでいた自分の名前。いつもは他の人と同じ様に“君”づけで呼ばれているのに、呼び捨てで呼んでくれたのが特別な人になれたようで、嬉しかった。

「……え? ……あの」

 起きぬけにそんなことを言われて、スイが困ったような恥ずかしいような表情になる。

「えと……」

 本当に困っている顔に少し複雑な気持ちになる。一番無防備なところをさらけ出して身体を繋げたような仲なのに、そのくらいの何が恥ずかしいのだろうか。

「きっと……そんな風に呼んだら……その……俺の気持ちとか……他の人に全部駄々漏れになっちゃいそうだし……」

 なんだよそれ。可愛すぎか!

 スイと付き合い始めて、何度心の中で叫んだか分からない言葉をアキはまた叫んでいた。でも、実際には言葉には出さない。スイはすぐに拗ねてしまうからだ。

「……二人の時……だけじゃ。だめかな?」

 心の中でスイの可愛さに悶絶していたアキの様子を、気を悪くしたと勘違いしたのか、ご機嫌を窺うようにスイが聞いてくる。

「それで、いいよ」

 その顔も可愛い。もうなにもかも。顔がにやけてしまいそうになるのを押しとどめるので精一杯だ。でも、恋人が不安にならないように、優しい笑顔を作るのは忘れてはいけない。
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