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L's rule. Side Akiha.
過去を過去にするためにできること 3
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大きな雫が零れ落ちてスイの太ももを濡らす。
スイが願うことなら、何でも叶えたい。
素直にそう思う。
「……俺が……“いやだ”って言っても……やめないで。それは、絶対に君への言葉じゃないから。だから、俺を君のものにしてほしい」
スイは以前、過去のことを『呪い』と言った。きっと、古家という男の存在が、スイにとっては『呪い』そのものなのだろう。
付き合い始めたばかりで重いと思われるのが怖くて、はっきりと口にはできなかったけれど、アキはスイとこの先もずっと一緒にいたいと思う。一緒にいるならほしいと思う気持ちを抑えられなくなる時も来るかもしれない。でも、もう、愛するその人を抱き締められなくて、誰か他の人で渇きを誤魔化すようなまねはできない。
だから、この『呪い』とは、いつか正面から向き合わないといけない。
きっと、それが、今。なのだ。
「スイさん」
その相手に自分を選んでくれたのが、嬉しいと素直に思う。それから、多分ユキには無理だったと思う。優しい弟が泣きながらやめてと言うスイに何も出来るはずはない。
「どうしてもだめだったら、ちゃんと言うって約束してくれるか?」
その頬に触れてその翡翠の色の瞳を覗きこんで、問う。頷くだけでスイが答えた。
「分かった」
その唇に口づけて、もう一度その身体をベッドの上に横たえる。脅えたように強張る身体の緊張をほぐすように何度も深くキスをしながら、頬から顎へ、それから首筋に指先を滑らせる。
「……ん」
鎖骨の辺りを撫でると、スイの鼻から声が漏れる。ぎゅっと閉じた目の端から、涙が零れている。
「スイさん。目。開けて。俺だよ?」
耳元に唇を寄せて囁くと、震える睫毛が瞬いて、その翠の宝石のような瞳が見えた。
「……あ……きくん」
縋るように伸ばされた手を握りしめる。空いた片手で、服の上から胸元や脇腹、腰骨あたりを撫でると、僅かに身体を強張らせて、不安げな視線が宙を彷徨う。
その視線の先に何が見えているのか、脅えたような表情。それが、切ないと思うと同時に、いらつく。多分、これは嫉妬だ。たとえそれが憎しみでも、怒りでも、スイの心を自分の知らない男が占めているのが我慢できない。
「ほら、言っただろ? 俺だけ見ててよ?」
軽くキスをして、顔を自分の方に向けさせると、焦点のあった視線が、アキの赤い瞳をじっと見つめる。
「……うん……ん。あ」
スイの脚の間に差し入れた自分の脚でソコに軽く刺激を与えながら、ゆったりとした服の裾から手を入れる。
「……ん。ふぁ」
今度はスイが抵抗することはなかった。必死に抑え込んでいるのかもしれない。
形のよい眉を寄せて、苦しげな顔に見えて、アキはまた、その額にキスをした。
「スイ……さん。愛してるよ。聞こえてる? 俺の名前呼んで?」
直に触ったスイの肌は少しだけひやりとして、吸いつくような手触りにアキは息を飲む。肌の上に指先を滑らせると、それだけで、スイの身体がぴくりと反応を返した。
「……アキ……く……あっ。ん。……や……ん」
胸元に滑らせた指先に小さな突起の感触。それを指先でくるくると円を描くように刺激すると、スイの唇から高くて甘い声が漏れる。
まだ、少しだけ脅えが残っているのだろうか、片手が何かに耐えるようにアキの服の肩のあたりを握りしめていた。まるで、自分を引き離そうとしているようだと思う。
「スイさん? まだ、やめられるよ? これ以上したら、俺はもう自分を止められないかもしれない。それでも、いい?」
できるだけ、優しく囁いたつもりだった。しかし、スイはびくりと身体を竦ませて、両手を伸ばしてアキの首に抱きついた。
スイが願うことなら、何でも叶えたい。
素直にそう思う。
「……俺が……“いやだ”って言っても……やめないで。それは、絶対に君への言葉じゃないから。だから、俺を君のものにしてほしい」
スイは以前、過去のことを『呪い』と言った。きっと、古家という男の存在が、スイにとっては『呪い』そのものなのだろう。
付き合い始めたばかりで重いと思われるのが怖くて、はっきりと口にはできなかったけれど、アキはスイとこの先もずっと一緒にいたいと思う。一緒にいるならほしいと思う気持ちを抑えられなくなる時も来るかもしれない。でも、もう、愛するその人を抱き締められなくて、誰か他の人で渇きを誤魔化すようなまねはできない。
だから、この『呪い』とは、いつか正面から向き合わないといけない。
きっと、それが、今。なのだ。
「スイさん」
その相手に自分を選んでくれたのが、嬉しいと素直に思う。それから、多分ユキには無理だったと思う。優しい弟が泣きながらやめてと言うスイに何も出来るはずはない。
「どうしてもだめだったら、ちゃんと言うって約束してくれるか?」
その頬に触れてその翡翠の色の瞳を覗きこんで、問う。頷くだけでスイが答えた。
「分かった」
その唇に口づけて、もう一度その身体をベッドの上に横たえる。脅えたように強張る身体の緊張をほぐすように何度も深くキスをしながら、頬から顎へ、それから首筋に指先を滑らせる。
「……ん」
鎖骨の辺りを撫でると、スイの鼻から声が漏れる。ぎゅっと閉じた目の端から、涙が零れている。
「スイさん。目。開けて。俺だよ?」
耳元に唇を寄せて囁くと、震える睫毛が瞬いて、その翠の宝石のような瞳が見えた。
「……あ……きくん」
縋るように伸ばされた手を握りしめる。空いた片手で、服の上から胸元や脇腹、腰骨あたりを撫でると、僅かに身体を強張らせて、不安げな視線が宙を彷徨う。
その視線の先に何が見えているのか、脅えたような表情。それが、切ないと思うと同時に、いらつく。多分、これは嫉妬だ。たとえそれが憎しみでも、怒りでも、スイの心を自分の知らない男が占めているのが我慢できない。
「ほら、言っただろ? 俺だけ見ててよ?」
軽くキスをして、顔を自分の方に向けさせると、焦点のあった視線が、アキの赤い瞳をじっと見つめる。
「……うん……ん。あ」
スイの脚の間に差し入れた自分の脚でソコに軽く刺激を与えながら、ゆったりとした服の裾から手を入れる。
「……ん。ふぁ」
今度はスイが抵抗することはなかった。必死に抑え込んでいるのかもしれない。
形のよい眉を寄せて、苦しげな顔に見えて、アキはまた、その額にキスをした。
「スイ……さん。愛してるよ。聞こえてる? 俺の名前呼んで?」
直に触ったスイの肌は少しだけひやりとして、吸いつくような手触りにアキは息を飲む。肌の上に指先を滑らせると、それだけで、スイの身体がぴくりと反応を返した。
「……アキ……く……あっ。ん。……や……ん」
胸元に滑らせた指先に小さな突起の感触。それを指先でくるくると円を描くように刺激すると、スイの唇から高くて甘い声が漏れる。
まだ、少しだけ脅えが残っているのだろうか、片手が何かに耐えるようにアキの服の肩のあたりを握りしめていた。まるで、自分を引き離そうとしているようだと思う。
「スイさん? まだ、やめられるよ? これ以上したら、俺はもう自分を止められないかもしれない。それでも、いい?」
できるだけ、優しく囁いたつもりだった。しかし、スイはびくりと身体を竦ませて、両手を伸ばしてアキの首に抱きついた。
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