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L's rule. Side Akiha.
俺にもあなたに話せないことがあります 4
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「スイさん」
身体を震わせたまま泣き出してしまった恋人に申し訳なくなって、アキはスイの身体をベッドの上に起こして、優しく抱き締めた。やはり、急ぎすぎたのだ。もっと、ちゃんと話しあって、スイの気持ちを聞くべきだったと後悔する。
「ごめん。怖い思いさせたな。もう、しないから、泣かないでよ?」
よしよしするようにその背を撫でると、殆ど聞こえないような声で、スイが何かを呟いた。
「え?」
「アキ君が……わる……んじゃない……俺……大丈……夫だと……思ったのに……も……わす……れられてるって……」
子供のようにしゃくりあげながら、スイが言う。
細いと思っていた身体がさらに小さく見えていたたまれない。
「……アキ……くんなら……きっと……だいじょ……ぶ……だって……も。やな……だ。あんな……ことに……いつまでも……し……ばられたく……ない……っ」
心がずきん。と痛む。スイは隠しておきたいと願っていたはずななのに、スイの言っている意味が分かってしまったからだ。彼が話すのを躊躇う過去はやはり、そういうことなのだろう。
だから、アキは何も言わずにスイを抱き締めて、落ち着くまで、その背中を撫でていた。すこしでも、その人の傷を癒せればいいと思った。
「も、いいから。そんなに泣かないで。俺は大丈夫だから。スイさん。無理しないで」
まだしゃくりあげているけれど、少し落ち着いてきたスイの顔の涙を指で拭って、濡れた髪を撫でる。涙が伝う頬は、さっきは熱かったのに、今は冷え切っているように感じた。
「違う……アキ君」
ふるふる。と、スイが首を振る。それから、アキの目を見て、アキの手を握って、その手に頬を寄せてスイが言った。
「俺。アキ君と……したい。アキ君のものにしてほしい」
見つめてくる瞳は真摯で、アキを気遣っているのだとしても、嘘をついているなんてとても思えない。
「でも。うまく……できなくて。その……ちゃんと理由話すから……聞いてくれる?」
スイは怖くて話せないことがあると言った。間違いなくスイが話そうとしているのは、それの一つだ。今、それを言わせてしまってもいいのだろうか。それを自分だけが聞いてしまって、いいのだろうか。
アキは思う。
もしスイが辛いなら、身体を繋げることを強いるつもりはない。もちろん、ほしいという気持ちはなくなることはないけれど、それよりもスイがそばにいてくれることが大事だと思う。
だから、話してくれるのだとしても、もっと、スイの傷が癒えてからでもいいのではないかと思う。
「スイさん。でも、きつくない? 大丈夫?」
ぎゅっと、白くなるほど唇を噛みしめて俯いてから、心を決めたようにスイが顔を上げた。
「……怖いし……きついけど。俺、全部話して、やっぱりちゃんと、アキ君の恋人だって言えるようになりたい。も。心だけじゃ……足りないよ」
まだ涙は乾いていなかったけれど、スイは真っ直ぐにアキの顔を見た。だから、アキも覚悟を決めることにした。ユキには悪いけれど、スイの過去を飲み込む役目は譲ってもらうぞ。と、心の中で呟く。
「わかった」
そう言って、ベッドの淵に掛けてスイの肩を抱く。できるだけ優しく。
「スイさんが話してくれるなら、俺はちゃんと聞くよ」
アキの肩に頭を預けて、その手を握って、スイは話し始めた。
身体を震わせたまま泣き出してしまった恋人に申し訳なくなって、アキはスイの身体をベッドの上に起こして、優しく抱き締めた。やはり、急ぎすぎたのだ。もっと、ちゃんと話しあって、スイの気持ちを聞くべきだったと後悔する。
「ごめん。怖い思いさせたな。もう、しないから、泣かないでよ?」
よしよしするようにその背を撫でると、殆ど聞こえないような声で、スイが何かを呟いた。
「え?」
「アキ君が……わる……んじゃない……俺……大丈……夫だと……思ったのに……も……わす……れられてるって……」
子供のようにしゃくりあげながら、スイが言う。
細いと思っていた身体がさらに小さく見えていたたまれない。
「……アキ……くんなら……きっと……だいじょ……ぶ……だって……も。やな……だ。あんな……ことに……いつまでも……し……ばられたく……ない……っ」
心がずきん。と痛む。スイは隠しておきたいと願っていたはずななのに、スイの言っている意味が分かってしまったからだ。彼が話すのを躊躇う過去はやはり、そういうことなのだろう。
だから、アキは何も言わずにスイを抱き締めて、落ち着くまで、その背中を撫でていた。すこしでも、その人の傷を癒せればいいと思った。
「も、いいから。そんなに泣かないで。俺は大丈夫だから。スイさん。無理しないで」
まだしゃくりあげているけれど、少し落ち着いてきたスイの顔の涙を指で拭って、濡れた髪を撫でる。涙が伝う頬は、さっきは熱かったのに、今は冷え切っているように感じた。
「違う……アキ君」
ふるふる。と、スイが首を振る。それから、アキの目を見て、アキの手を握って、その手に頬を寄せてスイが言った。
「俺。アキ君と……したい。アキ君のものにしてほしい」
見つめてくる瞳は真摯で、アキを気遣っているのだとしても、嘘をついているなんてとても思えない。
「でも。うまく……できなくて。その……ちゃんと理由話すから……聞いてくれる?」
スイは怖くて話せないことがあると言った。間違いなくスイが話そうとしているのは、それの一つだ。今、それを言わせてしまってもいいのだろうか。それを自分だけが聞いてしまって、いいのだろうか。
アキは思う。
もしスイが辛いなら、身体を繋げることを強いるつもりはない。もちろん、ほしいという気持ちはなくなることはないけれど、それよりもスイがそばにいてくれることが大事だと思う。
だから、話してくれるのだとしても、もっと、スイの傷が癒えてからでもいいのではないかと思う。
「スイさん。でも、きつくない? 大丈夫?」
ぎゅっと、白くなるほど唇を噛みしめて俯いてから、心を決めたようにスイが顔を上げた。
「……怖いし……きついけど。俺、全部話して、やっぱりちゃんと、アキ君の恋人だって言えるようになりたい。も。心だけじゃ……足りないよ」
まだ涙は乾いていなかったけれど、スイは真っ直ぐにアキの顔を見た。だから、アキも覚悟を決めることにした。ユキには悪いけれど、スイの過去を飲み込む役目は譲ってもらうぞ。と、心の中で呟く。
「わかった」
そう言って、ベッドの淵に掛けてスイの肩を抱く。できるだけ優しく。
「スイさんが話してくれるなら、俺はちゃんと聞くよ」
アキの肩に頭を預けて、その手を握って、スイは話し始めた。
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