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L's rule. Side Akiha.
俺にもあなたに話せないことがあります 2
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そんなことより、今はスイのことだ。
そう、自分自身に言い聞かせる。
スイが隠そうとしている過去がこういうことと無関係だとは思えない。先日のBIG Hでの一件で、アキはほぼ確信した。それでも、スイへの想いは少しも変わらない。アキだってスイに言っていないことがある。恋人だからといって全てを共有しなければいけないとは思わない。けれど、知りたいとは思う。
ただ、男と付き合ったことがあるだけならいい。いや。それでも嫉妬はするけれど、それは仕方のないことだと思う。しかし、スイが人といることを拒絶して、独りでいた理由を考えると、それが、どんなに残酷なことだったのかと考えてしまう。
「……言っては……くれない……か」
誰にともなく呟く。どんなことを言われても受け入れる覚悟はある。たとえどんな過去がスイにあっても、自分の気持ちが変わるようなことはない。そんなことで愛する人を軽蔑できるほど、綺麗な人生を自分も歩いてきてはいない。
「……アキ君?」
パジャマ代わりにしているアキのお下がりのだぼだぼの長そでTシャツにジャージ姿で、濡れ髪をタオルで拭きながら、スイがバスルームから出てきた。
気付けば随分時間が経っていたようだ。静かな雨音がずっとしていて、時間を忘れさせている気がした。
「またせたかな?」
アキの隣に座って、スイが問う。その顔はタオルで隠れて良く見えない。長い髪の先から滴がぽた。と、アキの手の甲に零れ落ちた。
「スイさん」
その肩を抱いて引き寄せる。
「あ……」
小さくスイが呟いた。タオルをどけると、頬が上気して目元が潤んでいる。その顔があんまり可愛くて、アキは頬に口づけた。
「アキ……くん」
キスを強請るように翠の瞳が閉じられる。その瞼に軽く口づけてから、アキはその唇にキスをした。
最初は啄ばむように。それから、その艶のある唇をぺろり。と、舐めて、スイが小さく漏らした吐息を逃さずにその唇の間を割って、舌を差し入れる。
「……ん。ん。……は」
スイの鼻から、吐息が漏れるのに気を良くして、硬く閉じた歯列を舌で擽るとおずおずとそれが開く。ゆっくりと上顎を舐めて、アキは遠慮がちに戸惑う舌を絡めとった。
たまらない。
と、アキは思う。
たまらなく、甘い。まるで、砂糖菓子のようだ。
「んむ……んん」
次第にスイの吐息に艶が混じる。絡まる舌の立てる音が静かな部屋に響いて、スイの顔がさらに上気した。ぎゅっと、アキの服の胸を握りしめて、されるがままになっている可愛い人にそれだけで、熱が集まって行くのを感じる。
「……は。ん」
思うさまその咥内を蹂躙して、唇が離れると、スイがため息のような声を漏らす。潤んだ瞳が恥ずかしげに瞬いて、じっとアキを見ていた。
「……アキ……く……。あの……ここじゃ……」
震える声でスイが言う。
「どこがいい? スイさんの部屋? それも、俺の部屋がいい?」
分かっているのに、意地悪く尋ねると、スイが泣きそうな顔になった。
「……アキ君の部屋……やだ」
アキの胸に顔をうずめて、いやいやする様があんまりにも可愛いから、もう、意地悪をするのはやめにして、アキはスイを抱きあげた。いわゆる、お姫さまだっこで。
「……あ。アキ君……重いだろ?」
慌てるスイの額にキスをする。
「ばかにしないでよ? これでも、鍛えてるんだけど」
それから、そのままスイの部屋に移動する。スイは重いと言ったけれど、抱きあげたその身体は軽くて少し心配になる。
だから、壊れ物を扱うようにそっと、スイをベッドの端に座らせた。
そう、自分自身に言い聞かせる。
スイが隠そうとしている過去がこういうことと無関係だとは思えない。先日のBIG Hでの一件で、アキはほぼ確信した。それでも、スイへの想いは少しも変わらない。アキだってスイに言っていないことがある。恋人だからといって全てを共有しなければいけないとは思わない。けれど、知りたいとは思う。
ただ、男と付き合ったことがあるだけならいい。いや。それでも嫉妬はするけれど、それは仕方のないことだと思う。しかし、スイが人といることを拒絶して、独りでいた理由を考えると、それが、どんなに残酷なことだったのかと考えてしまう。
「……言っては……くれない……か」
誰にともなく呟く。どんなことを言われても受け入れる覚悟はある。たとえどんな過去がスイにあっても、自分の気持ちが変わるようなことはない。そんなことで愛する人を軽蔑できるほど、綺麗な人生を自分も歩いてきてはいない。
「……アキ君?」
パジャマ代わりにしているアキのお下がりのだぼだぼの長そでTシャツにジャージ姿で、濡れ髪をタオルで拭きながら、スイがバスルームから出てきた。
気付けば随分時間が経っていたようだ。静かな雨音がずっとしていて、時間を忘れさせている気がした。
「またせたかな?」
アキの隣に座って、スイが問う。その顔はタオルで隠れて良く見えない。長い髪の先から滴がぽた。と、アキの手の甲に零れ落ちた。
「スイさん」
その肩を抱いて引き寄せる。
「あ……」
小さくスイが呟いた。タオルをどけると、頬が上気して目元が潤んでいる。その顔があんまり可愛くて、アキは頬に口づけた。
「アキ……くん」
キスを強請るように翠の瞳が閉じられる。その瞼に軽く口づけてから、アキはその唇にキスをした。
最初は啄ばむように。それから、その艶のある唇をぺろり。と、舐めて、スイが小さく漏らした吐息を逃さずにその唇の間を割って、舌を差し入れる。
「……ん。ん。……は」
スイの鼻から、吐息が漏れるのに気を良くして、硬く閉じた歯列を舌で擽るとおずおずとそれが開く。ゆっくりと上顎を舐めて、アキは遠慮がちに戸惑う舌を絡めとった。
たまらない。
と、アキは思う。
たまらなく、甘い。まるで、砂糖菓子のようだ。
「んむ……んん」
次第にスイの吐息に艶が混じる。絡まる舌の立てる音が静かな部屋に響いて、スイの顔がさらに上気した。ぎゅっと、アキの服の胸を握りしめて、されるがままになっている可愛い人にそれだけで、熱が集まって行くのを感じる。
「……は。ん」
思うさまその咥内を蹂躙して、唇が離れると、スイがため息のような声を漏らす。潤んだ瞳が恥ずかしげに瞬いて、じっとアキを見ていた。
「……アキ……く……。あの……ここじゃ……」
震える声でスイが言う。
「どこがいい? スイさんの部屋? それも、俺の部屋がいい?」
分かっているのに、意地悪く尋ねると、スイが泣きそうな顔になった。
「……アキ君の部屋……やだ」
アキの胸に顔をうずめて、いやいやする様があんまりにも可愛いから、もう、意地悪をするのはやめにして、アキはスイを抱きあげた。いわゆる、お姫さまだっこで。
「……あ。アキ君……重いだろ?」
慌てるスイの額にキスをする。
「ばかにしないでよ? これでも、鍛えてるんだけど」
それから、そのままスイの部屋に移動する。スイは重いと言ったけれど、抱きあげたその身体は軽くて少し心配になる。
だから、壊れ物を扱うようにそっと、スイをベッドの端に座らせた。
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