遠くて近い世界で

司書Y

文字の大きさ
上 下
148 / 414
L's rule. Side Akiha.

三人で幸せになるための恋人ルール 2

しおりを挟む
 二つの部屋のリビングに扉がついて、3人が完全な同居? 同棲? を始めて、約1カ月。アキとユキの部屋側のリビングは完全に仕事用の事務所になって、スイの部屋側のリビングが3人のくつろぎスペースになっていた。
 大型テレビを付けて、アキはソファで、ユキはラグの上でごろごろ転がりながら、スイはキッチンでそれぞれに会話を楽しんでいる。

「やっぱり、そのラグにしてよかったな」

 ごろごろ転がっているユキに目を細めて、スイが言う。

「まじで! すげえ、気持ちいい。あったかいし」

 スイの提案で大型テレビの前にはオレンジ色系のラグが敷いてある。ラグの下にはホットカーペットが敷いてあって、ユキはそこがお気に入りでいつもごろごろしていた。
 事務所の方は、もともとのインテリアが殆ど変っていない。どちらかというと、無機質というか、無造作というか、必要なものしか置いていないのも相まって、あまり寛ぐというイメージではない。しかし、リビングの方はスイのコーディネートで暖色を多く使って、温かみがある感じになっていた。

「スイさんセンスいいからな」

 素直に褒めると、少し照れたようにスイが笑った。

「二人だって、相談に乗ってくれたじゃん」

 そんな風に謙遜するけれど、アキは知っていた。
 二人が少しでも居心地がいいようにと、ラグの種類や肌触りにまで拘っていたこと。三人で並んで掛けられる大きなソファを特注で用意してくれていたこと。ダイニングの椅子をイメージに合うようにと、わざわざ一人一人違うものにしてくれていること。寒がりなアキがよく座る場所の近くにオイルヒーターを入れてくれていること。こっちの風呂に良く入るようになってからは、わざわざアキとユキの部屋と同じシャンプーに変えてくれたこと。
 全部、二人のためにしてくれた。何も言わないで、まるで偶然そうだったとでも言うように自然に。
 そんなスイの気遣いがアキは好きだった。

「ほんと。ここ居心地いい」

 ユキが言う。
 居心地がいいのは、部屋のせいだけじゃない。スイがいるからだ。
 一緒に暮らすようになって分かったのだが、頭がいいからなのか、育ち方のせいなのか、スイはとても気がきく。それはもう、考え過ぎってくらいに。多分、自分たちが気付いていない所でもスイは二人のためにいろいろと考えてくれているのだと思う。
 少しだけ心配になる。彼が疲れてしまうのではないかと。

「そう言ってもらえると嬉しい」

 スイは、どちらかというと、かなり我慢強い方だと思う。だめになるぎりぎりまで耐えてしまうタイプだ。そして、それを人に見せようとしない。
 だから、三人はルールを決めた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】ここで会ったが、十年目。

N2O
BL
帝国の第二皇子×不思議な力を持つ一族の長の息子(治癒術特化) 我が道を突き進む攻めに、ぶん回される受けのはなし。 (追記5/14 : お互いぶん回してますね。) Special thanks illustration by おのつく 様 X(旧Twitter) @__oc_t ※ご都合主義です。あしからず。 ※素人作品です。ゆっくりと、温かな目でご覧ください。 ※◎は視点が変わります。

朝起きたら幼なじみと番になってた。

オクラ粥
BL
寝ぼけてるのかと思った。目が覚めて起き上がると全身が痛い。 隣には昨晩一緒に飲みにいった幼なじみがすやすや寝ていた 思いつきの書き殴り オメガバースの設定をお借りしてます

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

彩雲華胥

柚月なぎ
BL
 暉の国。  紅鏡。金虎の一族に、痴れ者の第四公子という、不名誉な名の轟かせ方をしている、奇妙な仮面で顔を覆った少年がいた。  名を無明。  高い霊力を封じるための仮面を付け、幼い頃から痴れ者を演じ、周囲を欺いていた無明だったが、ある出逢いをきっかけに、少年の運命が回り出す――――――。  暉の国をめぐる、中華BLファンタジー。 ※この作品は最新話は「カクヨム」さんで読めます。また、「小説家になろう」さん「Fujossy」さんでも連載中です。 ※表紙や挿絵はすべてAIによるイメージ画像です。 ※お気に入り登録、投票、コメント等、すべてが励みとなります!応援していただけたら、幸いです。

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】

彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』 高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。 その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。 そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?

私の庇護欲を掻き立てるのです

まめ
BL
ぼんやりとした受けが、よく分からないうちに攻めに囲われていく話。

目覚ましに先輩の声を使ってたらバレた話

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
サッカー部の先輩・ハヤトの声が密かに大好きなミノル。 彼を誘い家に泊まってもらった翌朝、目覚ましが鳴った。 ……あ。 音声アラームを先輩の声にしているのがバレた。 しかもボイスレコーダーでこっそり録音していたことも白状することに。 やばい、どうしよう。

よく効くお薬〜偏頭痛持ちの俺がエリートリーマンに助けられた話〜

高菜あやめ
BL
【マイペース美形商社マン×頭痛持ち平凡清掃員】千野はフリーのプログラマーだが収入が少ないため、夜は商社ビルで清掃員のバイトをしてる。ある日体調不良で階段から落ちた時、偶然居合わせた商社の社員・津和に助けられ……偏頭痛持ちの主人公が、エリート商社マンに世話を焼かれつつ癒される甘めの話です◾️スピンオフ1【社交的爽やかイケメン営業マン×胃弱で攻めに塩対応なSE】千野のチームの先輩SE太田が主人公です◾️スピンオフ2【元モデルの実業家×低血圧の営業マン】千野と太田のプロジェクトチーム担当営業・片瀬とその幼馴染・白石の恋模様です

処理中です...