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Mission Impossible 4
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◇小鳥遊兄弟宅リビング:秋生◇
小鳥遊兄弟の部屋のリビングルームのキッチンのカウンターに座って、アキはカフェオレを飲んでいた。外はまた、静かな雨が降ている。けれど、暖房のきいた室内は温かい。部屋の中にはジャズが流れているけれど、雨音が心地よく聞こえるほど静かだ。
さっきから、ユキはリビングのソファに座ってパソコンで動画を見ている。ヘッドホンをしているから何を見ているかは分からない。ただ、時折、あ。とか、うそ。とか、リアクションしているからおそらく好きなアクション系の映画か、ゲーム実況系の配信動画だろう。クッションを抱いて、殆どソファに横になった状態だから、かなりリラックスしているようだ。
「おかわり。する?」
その高めの声に視線を向けると、カウンターの向こうからスイが笑顔を向けてくれていた。
「ん」
短く答えてカップを差し出す。スイは笑顔を一層濃くして、同じように、ん。と、短く答えた。
カップを受け取って、スイはミルクパンに牛乳入れてコンロにかけた。それから、コーヒーメーカーにひいた豆をセットする。何も言わなくても、砂糖もミルクもマシマシのアキの好みを覚えていてくれるのが嬉しい。
「ちょっと、待ってて」
アキのカフェオレの準備をしながら、スイは元々していた夕食の準備に戻る。今日はハマグリと鯛のアクアパッツァらしい。正直料理のことはよくわからないけれど、スイに任せて美味くなかったためしはなかったから、全てお任せだ。
アキはスイが料理をしているのを見るのが好きだった。料理をしている時のスイはまるで軽やかにステップを踏んでいるように見えて、どこか楽し気だからだ。
「明日は晴れるといいな」
アキに。というよりは、独りごとのようにスイが呟く。静かに流れるジャズピアノの音に重なって歌っているようだと思う。スイの声は雨音よりも耳に心地いい。
「……仕事もないし雨でもいいよ」
別に適当に答えているわけではなかった。ただ、思った通り素直に答えただけだ。けれど、その答えにスイはふは。と、笑う。楽し気な笑顔だった。
「うん。そだな。雨降ったら、家に籠ってればいいんだ」
告白の日から数日。殆ど依然と変わらない日常に戻っているが、その表情は以前に増して柔らかい。前よりもっと、笑顔が増えた。それが堪らなく嬉しい。
もちろん、アキもユキも仕事以外で夜出かけるようなこともなく、三人で過ごす時間が戻ってきた。
「じゃあ、明日雨なら……」
言いかけたところで、コンロのミルクが湧き上がってきた。スイが慌てて火を止める。それから、手早くカップに注いで砂糖を溶かす。すでに出来上がっていたコーヒーを入れて出来上がりだ。
アキの前にカップを置いて、どうぞ。と、短くスイが言った。だから、ありがと。と、アキも短く答える。
「明日。雨なら?」
スイが前に置いてくれたカップに口をつける。甘い。まるで、出来立ての恋人のような甘さだ。今のアキにはちょうどいい。
「や。大したことじゃないんだけど。前にアキ君が言ってた海外ドラマあったろ?」
料理をする手元に視線を落としたまま、スイが答える。さら。と、後ろで束ねていた髪が一筋頬に落ちた。そのさまがまた、息をのむくらいに綺麗で、アキは思わず見惚れる。
「……? アキ君?」
見惚れていて返事が遅れたから、スイが顔を上げた。翡翠の色の大きな瞳が不思議そうに見つめている。なんだか堪らない気持ちになってアキはスイの方に手を伸ばした。そして、頬に落ちた髪を耳のかけてやる。あの日、アキの手を拒絶したスイは擽ったそうに身を竦めてはいたけれど、素直に秋の手を受け入れてくれた。
「海外ドラマ? うん。いいな。買い物も用事も全部済ませて、昼間っから酒飲みながら見たい」
スイの素直な態度に嬉しくなって、頬に手を置いたまま、自然に溢れるままに笑顔を向けると、一瞬、間を置いてから、スイは分かりやすく頬を染める。告白の日以来、スイは何か吹っ切れたみたいにこんな表情を隠さずに見せてくれるようになった。
「……ん」
アキの手に頬擦りして、スイが微笑む。
戻ってきた日常は概ね幸福そのものだ。
小鳥遊兄弟の部屋のリビングルームのキッチンのカウンターに座って、アキはカフェオレを飲んでいた。外はまた、静かな雨が降ている。けれど、暖房のきいた室内は温かい。部屋の中にはジャズが流れているけれど、雨音が心地よく聞こえるほど静かだ。
さっきから、ユキはリビングのソファに座ってパソコンで動画を見ている。ヘッドホンをしているから何を見ているかは分からない。ただ、時折、あ。とか、うそ。とか、リアクションしているからおそらく好きなアクション系の映画か、ゲーム実況系の配信動画だろう。クッションを抱いて、殆どソファに横になった状態だから、かなりリラックスしているようだ。
「おかわり。する?」
その高めの声に視線を向けると、カウンターの向こうからスイが笑顔を向けてくれていた。
「ん」
短く答えてカップを差し出す。スイは笑顔を一層濃くして、同じように、ん。と、短く答えた。
カップを受け取って、スイはミルクパンに牛乳入れてコンロにかけた。それから、コーヒーメーカーにひいた豆をセットする。何も言わなくても、砂糖もミルクもマシマシのアキの好みを覚えていてくれるのが嬉しい。
「ちょっと、待ってて」
アキのカフェオレの準備をしながら、スイは元々していた夕食の準備に戻る。今日はハマグリと鯛のアクアパッツァらしい。正直料理のことはよくわからないけれど、スイに任せて美味くなかったためしはなかったから、全てお任せだ。
アキはスイが料理をしているのを見るのが好きだった。料理をしている時のスイはまるで軽やかにステップを踏んでいるように見えて、どこか楽し気だからだ。
「明日は晴れるといいな」
アキに。というよりは、独りごとのようにスイが呟く。静かに流れるジャズピアノの音に重なって歌っているようだと思う。スイの声は雨音よりも耳に心地いい。
「……仕事もないし雨でもいいよ」
別に適当に答えているわけではなかった。ただ、思った通り素直に答えただけだ。けれど、その答えにスイはふは。と、笑う。楽し気な笑顔だった。
「うん。そだな。雨降ったら、家に籠ってればいいんだ」
告白の日から数日。殆ど依然と変わらない日常に戻っているが、その表情は以前に増して柔らかい。前よりもっと、笑顔が増えた。それが堪らなく嬉しい。
もちろん、アキもユキも仕事以外で夜出かけるようなこともなく、三人で過ごす時間が戻ってきた。
「じゃあ、明日雨なら……」
言いかけたところで、コンロのミルクが湧き上がってきた。スイが慌てて火を止める。それから、手早くカップに注いで砂糖を溶かす。すでに出来上がっていたコーヒーを入れて出来上がりだ。
アキの前にカップを置いて、どうぞ。と、短くスイが言った。だから、ありがと。と、アキも短く答える。
「明日。雨なら?」
スイが前に置いてくれたカップに口をつける。甘い。まるで、出来立ての恋人のような甘さだ。今のアキにはちょうどいい。
「や。大したことじゃないんだけど。前にアキ君が言ってた海外ドラマあったろ?」
料理をする手元に視線を落としたまま、スイが答える。さら。と、後ろで束ねていた髪が一筋頬に落ちた。そのさまがまた、息をのむくらいに綺麗で、アキは思わず見惚れる。
「……? アキ君?」
見惚れていて返事が遅れたから、スイが顔を上げた。翡翠の色の大きな瞳が不思議そうに見つめている。なんだか堪らない気持ちになってアキはスイの方に手を伸ばした。そして、頬に落ちた髪を耳のかけてやる。あの日、アキの手を拒絶したスイは擽ったそうに身を竦めてはいたけれど、素直に秋の手を受け入れてくれた。
「海外ドラマ? うん。いいな。買い物も用事も全部済ませて、昼間っから酒飲みながら見たい」
スイの素直な態度に嬉しくなって、頬に手を置いたまま、自然に溢れるままに笑顔を向けると、一瞬、間を置いてから、スイは分かりやすく頬を染める。告白の日以来、スイは何か吹っ切れたみたいにこんな表情を隠さずに見せてくれるようになった。
「……ん」
アキの手に頬擦りして、スイが微笑む。
戻ってきた日常は概ね幸福そのものだ。
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