92 / 414
FiLwT
ダメだ。だめだ。だめだ。1
しおりを挟む
◇小鳥遊兄弟の部屋:翡翠◇
メディスン。
と、一般的に呼ばれているのは、錠剤タイプの合成麻薬で、MDMAのようないわゆるセックスドラッグの一種だ。効果は高いとは言えず、その代わりに依存度も低い。かなり安価で、流通量が多く、中高生でも容易に手に入れることができる。ただ、結局は物足りなくなり、より依存度な毒性が強いものへと移行してしまうことが、問題になっていた。
使用すると多幸感と、軽い幻覚作用があり、触覚が敏感になる。そのため性行為の際に快感を高めるために使用されることが多い。しかし、近年、販路の拡大で、生活水準の高い家庭の子女が受験や人間関係のストレスから使用する例もかなり報告されていた。
先に触れたが、売人のほとんどは中高生。既使用者が友達を紹介してくれれば割引する。という謳い文句につられて次の使用者を作り出す。いわゆる、マルチ商法。商品は駅中の通販用受け取りボックスを利用して、金銭の受け渡しはネット用の金券。どれもこれも使い古された手口だ。
正攻法では時間がかかるかもしれない。けれど、手段を択ばなければ商品の流れは簡単に掴むことができたし、もちろん、非合法だが、中高生であれば健康診断の結果も入手可能だ。ある程度の『震源地』の推測はできる。ただ、被疑者が異常に多いため、こちらからこれ以上の情報を得るのは一人で(しかも短期間で)調査しているスイには難しい。
それにしても、警察の動きは鈍いことは一目瞭然だった。中学校の教室でさえ取引されているというのに、摘発されるのは末端の売人ばかりだ。本格的に調査をしていないスイですら、すでに数年前にはある程度の情報を得ていたというのに、警察はいまだおおよその主犯像すら把握しておらず、ほとんど何もしていないに等しい。
かわりに、動きを見せているのは、反社会的勢力だった。自分たちのシマで好き放題に商売されて、黙っているわけにはいかない。
メディスンの『流行』は主にK県の都市部に見られる。周辺各都県にも広がりつつあるが、中心地はK県の県庁所在地である。この地域を勢力圏に持つ組織は当初かなり強引なやり方でメディスンの販路を潰そうとしていたが、あるものはそのいたちごっこに疲弊し諦め、あるものはメディスンで満足できなくなった使用者に上位互換となる薬物の販売を優位に進めるという条件で手を出すのをやめ、あるものはまるで取るに足らないことだと静観していた。
いずれにせよ、反社会組織の連中にはメディスンの情報は決して手に入れなれないものではない。このことから、メディスンの販売の黒幕が検挙されないのは、彼らが警察に影響力を持つ誰かの庇護を受けているからだと、スイは結論付けた。
さらに調査を進める。
ニコの友人であるミナこと『田中三奈』。ニコと同じ名門女子高に通う俗にいうお嬢様。とはいえ、彼女が通う高校では彼女程度の家柄はごく普通で、彼女自身も目立つような存在ではない。ニコが教室の隅で本を読んでいるような子と評したように彼女の交友範囲はそれほど広くはない。というのが、彼女の周辺の友人の評価だったのだが、調査し始めてすぐにそうでもなかったことが分かった。
彼女はSNSの裏アカウントを持っていた。ニコは情報工学の技術を駆使するスイのようなタイプの情報屋ではない。もちろん、今時の女子だから全く興味がないわけではないけれど、鍵がかかったSNSを覗き見て情報を得るようなやり方には精通してはいないだろう。だから、気付かなかった。けれど、それを読むことで、スイの調査の殆どは終了してしまった。
メディスン。
と、一般的に呼ばれているのは、錠剤タイプの合成麻薬で、MDMAのようないわゆるセックスドラッグの一種だ。効果は高いとは言えず、その代わりに依存度も低い。かなり安価で、流通量が多く、中高生でも容易に手に入れることができる。ただ、結局は物足りなくなり、より依存度な毒性が強いものへと移行してしまうことが、問題になっていた。
使用すると多幸感と、軽い幻覚作用があり、触覚が敏感になる。そのため性行為の際に快感を高めるために使用されることが多い。しかし、近年、販路の拡大で、生活水準の高い家庭の子女が受験や人間関係のストレスから使用する例もかなり報告されていた。
先に触れたが、売人のほとんどは中高生。既使用者が友達を紹介してくれれば割引する。という謳い文句につられて次の使用者を作り出す。いわゆる、マルチ商法。商品は駅中の通販用受け取りボックスを利用して、金銭の受け渡しはネット用の金券。どれもこれも使い古された手口だ。
正攻法では時間がかかるかもしれない。けれど、手段を択ばなければ商品の流れは簡単に掴むことができたし、もちろん、非合法だが、中高生であれば健康診断の結果も入手可能だ。ある程度の『震源地』の推測はできる。ただ、被疑者が異常に多いため、こちらからこれ以上の情報を得るのは一人で(しかも短期間で)調査しているスイには難しい。
それにしても、警察の動きは鈍いことは一目瞭然だった。中学校の教室でさえ取引されているというのに、摘発されるのは末端の売人ばかりだ。本格的に調査をしていないスイですら、すでに数年前にはある程度の情報を得ていたというのに、警察はいまだおおよその主犯像すら把握しておらず、ほとんど何もしていないに等しい。
かわりに、動きを見せているのは、反社会的勢力だった。自分たちのシマで好き放題に商売されて、黙っているわけにはいかない。
メディスンの『流行』は主にK県の都市部に見られる。周辺各都県にも広がりつつあるが、中心地はK県の県庁所在地である。この地域を勢力圏に持つ組織は当初かなり強引なやり方でメディスンの販路を潰そうとしていたが、あるものはそのいたちごっこに疲弊し諦め、あるものはメディスンで満足できなくなった使用者に上位互換となる薬物の販売を優位に進めるという条件で手を出すのをやめ、あるものはまるで取るに足らないことだと静観していた。
いずれにせよ、反社会組織の連中にはメディスンの情報は決して手に入れなれないものではない。このことから、メディスンの販売の黒幕が検挙されないのは、彼らが警察に影響力を持つ誰かの庇護を受けているからだと、スイは結論付けた。
さらに調査を進める。
ニコの友人であるミナこと『田中三奈』。ニコと同じ名門女子高に通う俗にいうお嬢様。とはいえ、彼女が通う高校では彼女程度の家柄はごく普通で、彼女自身も目立つような存在ではない。ニコが教室の隅で本を読んでいるような子と評したように彼女の交友範囲はそれほど広くはない。というのが、彼女の周辺の友人の評価だったのだが、調査し始めてすぐにそうでもなかったことが分かった。
彼女はSNSの裏アカウントを持っていた。ニコは情報工学の技術を駆使するスイのようなタイプの情報屋ではない。もちろん、今時の女子だから全く興味がないわけではないけれど、鍵がかかったSNSを覗き見て情報を得るようなやり方には精通してはいないだろう。だから、気付かなかった。けれど、それを読むことで、スイの調査の殆どは終了してしまった。
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
【完結】ここで会ったが、十年目。
N2O
BL
帝国の第二皇子×不思議な力を持つ一族の長の息子(治癒術特化)
我が道を突き進む攻めに、ぶん回される受けのはなし。
(追記5/14 : お互いぶん回してますね。)
Special thanks
illustration by おのつく 様
X(旧Twitter) @__oc_t
※ご都合主義です。あしからず。
※素人作品です。ゆっくりと、温かな目でご覧ください。
※◎は視点が変わります。


【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】
彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』
高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。
その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。
そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?


目覚ましに先輩の声を使ってたらバレた話
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
サッカー部の先輩・ハヤトの声が密かに大好きなミノル。
彼を誘い家に泊まってもらった翌朝、目覚ましが鳴った。
……あ。
音声アラームを先輩の声にしているのがバレた。
しかもボイスレコーダーでこっそり録音していたことも白状することに。
やばい、どうしよう。
よく効くお薬〜偏頭痛持ちの俺がエリートリーマンに助けられた話〜
高菜あやめ
BL
【マイペース美形商社マン×頭痛持ち平凡清掃員】千野はフリーのプログラマーだが収入が少ないため、夜は商社ビルで清掃員のバイトをしてる。ある日体調不良で階段から落ちた時、偶然居合わせた商社の社員・津和に助けられ……偏頭痛持ちの主人公が、エリート商社マンに世話を焼かれつつ癒される甘めの話です◾️スピンオフ1【社交的爽やかイケメン営業マン×胃弱で攻めに塩対応なSE】千野のチームの先輩SE太田が主人公です◾️スピンオフ2【元モデルの実業家×低血圧の営業マン】千野と太田のプロジェクトチーム担当営業・片瀬とその幼馴染・白石の恋模様です
消えない思い
樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。
高校3年生 矢野浩二 α
高校3年生 佐々木裕也 α
高校1年生 赤城要 Ω
赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。
自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。
そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。
でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。
彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。
そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。

男子寮のベットの軋む音
なる
BL
ある大学に男子寮が存在した。
そこでは、思春期の男達が住んでおり先輩と後輩からなる相部屋制度。
ある一室からは夜な夜なベットの軋む音が聞こえる。
女子禁制の禁断の場所。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる