真鍮とアイオライト 1

司書Y

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月夕に落ちる雨の名は

後日談 2 可愛いからって勝確なわけじゃない 1

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 暴力的だった夏の日差しも少しだけ秋の色を帯びてきた。と、言っても、昼間はまだまだ暑い。毎日30度を超える暑さだ。ただ、松の林を抜ける風は確実に昨日より今日、今日より明日と涼しさを増していた。
 松の木が作る日陰に座って、菫は一人、水筒に入れてきたお茶を飲んでいた。
 今日は鈴はゼミの教授に呼びだされている。他に手伝ってくれていた人たちも、一旦帰って、後でまた顔を出すと言っていた。

 あの騒動の後、開かれた区の会合は紛糾したらしい。そうだろうと、菫は思う。ここの出身ではない人にとって、この社のことなど他人事だ。いきなり区の管理にすると言われても納得できるはずがない。しかも、以前の会議では取り壊すことがほぼ決まっていたようなものだ。今更蒸し返されても文句しかないだろう。
 地区の老人会の人たちは殆どが元氏子という人々ばかりで、再建案に合意してくれた。これを機に氏子に戻るという人も現れたらしい。けれど、彼らは殆どが満足に作業もできないような歳だ。しかも、新興住宅地の人々と比べて数は少ない。同居している若い人たちもあまりいい顔はしていないようだ。

 しかし、別の場所から協力してもいいという声が上がった。
 地域の商工会の若い経営者と、農業従事者だ。子供たちのプレゼンを聞いて興味を持ったらしい。
 元々、この地区には目立った産業はない。核になるものがない。彼らは黒羽稲荷がこの地域に社を持つ稲荷神社だったことすら知らなかったし、子宝や縁結びにご利益があることも知らなかった。商工会では祭りのキャラクターとして使われて、すでに知名度がある黒羽狐をキャラクターとして使い、農業従事者や酒蔵が最近地域産業として市が力を入れている果実酒のPRに利用して、相乗効果で町おこしを図ろうというのだった。そのために、神社もある程度補修して参拝が可能な状態にしたい。と、子供たちの資金集めと、年に数回の掃除に参加してくれると言い出したのだ。

 そして、もう一つ。営利団体を振り向かせる出来事があったのだった。
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