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月夕に落ちる雨の名は
幕間 三食昼寝溺愛付き 後編 4
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ふと、目を覚ます。
夢を見ていた気がする。
けれど、どんな夢なのか、覚えてはいなかった。それは昨日まで頻繁に見ていたあの夢ではない。覚えていないのに何故わかるのか。と、問われたらなんと返答していいのかわからない。それでも、違う。と、菫は確信していた。
「菫さん?」
瞼を数回瞬かせる。それから、視線を移すと、すぐ近くには鈴の顔があった。
「大丈夫……ですか?」
心配そうな眼差し。
「あ……の……俺、何度でも……呼ぶよ。すず」
安心させたくて、言ったのだけれど、鈴はすごく驚いた顔をしていた。
「え? ……あれ?」
そこで、はた。と、気づく。
そこは、鈴の部屋の、鈴のベッドの上だった。
「俺……」
身体を起こそうとすると、ずきん。と、頭が痛い。その痛みで、半覚醒から引き上げられる。何を言っていたのか、何を考えていたのか、さっきまでは朧気ながら覚えていたのに、煙が空気に溶けるように消えて、思い出せない。
「いたた」
はじめに痛んだのは、頭。それから、背中に鈍い痛み。さらにそれを追うように、腰と、ソコが痛んで、菫は言葉を失った。
「ああ……横になって」
蹲った菫に手を貸して、鈴が身体が楽になるように横たえてくれる。下着しか身に着けてはいないけれど、いつの間にか、身体はきれいに清められていた。
散々イかされて、最後は記憶がないから、きれいにしてくれたのは鈴だろうと思う。まだ、身体には余韻が残っていて、意識は戻ったけれど、なんだかふわふわとした感覚。
「……すみません。無茶しました」
悪戯が見つかって、怒られている子供のような顔で鈴が言う。
「抑え効かなくて……菫さんが怪我してるのに……」
大きな身体を小さく屈めて本当に捨てられた子犬のような顔。それが、堪らなく可愛く見えて、菫はその頭に手を伸ばした。
届かなくて『痛』と、呟くと、慌ててその頭が下がってきた。
「謝んないでよ。鈴は悪くないよ? 俺……その。煽った自覚あるし……」
なでなで、と、その頭を撫でながらできるだけ優しく笑いかけると、鈴はホッとしたような表情になった。
思い出すと顔から火が出そうだ。たくさん。如何わしいことを言った覚えがある。
「てか……あの……応えてくれて、ありがと」
菫だって男だ。好きだと思っている人に、菫が言ってしまったようなことを言われたら、我慢が効かなくなることくらい想像はつく。
だから、鈴は何も悪くないし、むしろ応えてくれたことが、嬉しい。
「……そんなに甘やかさないでください」
お礼をいう菫のはにかんだような表情に、鈴は少し困り顔になる。けれど、隠しきれない喜びが溢れているのは、誰が見たって明らかだった。
「俺……どんどん贅沢になっちゃいますよ? 反省したばっかりなのに」
苦笑して、鈴は菫の横に寝転んで、腕枕をしてくれる。
「反省?」
オウム返しで返すと、鈴はまた、困ったような表情になった。顔が近い。吐息がかかるほどだ。
一瞬、これが夢なんじゃないかと、嫌な考えが頭をよぎる。本当は梁の下敷きになって、今際の際に見ている最期の悪足掻きなんじゃないだろうか。
夢を見ていた気がする。
けれど、どんな夢なのか、覚えてはいなかった。それは昨日まで頻繁に見ていたあの夢ではない。覚えていないのに何故わかるのか。と、問われたらなんと返答していいのかわからない。それでも、違う。と、菫は確信していた。
「菫さん?」
瞼を数回瞬かせる。それから、視線を移すと、すぐ近くには鈴の顔があった。
「大丈夫……ですか?」
心配そうな眼差し。
「あ……の……俺、何度でも……呼ぶよ。すず」
安心させたくて、言ったのだけれど、鈴はすごく驚いた顔をしていた。
「え? ……あれ?」
そこで、はた。と、気づく。
そこは、鈴の部屋の、鈴のベッドの上だった。
「俺……」
身体を起こそうとすると、ずきん。と、頭が痛い。その痛みで、半覚醒から引き上げられる。何を言っていたのか、何を考えていたのか、さっきまでは朧気ながら覚えていたのに、煙が空気に溶けるように消えて、思い出せない。
「いたた」
はじめに痛んだのは、頭。それから、背中に鈍い痛み。さらにそれを追うように、腰と、ソコが痛んで、菫は言葉を失った。
「ああ……横になって」
蹲った菫に手を貸して、鈴が身体が楽になるように横たえてくれる。下着しか身に着けてはいないけれど、いつの間にか、身体はきれいに清められていた。
散々イかされて、最後は記憶がないから、きれいにしてくれたのは鈴だろうと思う。まだ、身体には余韻が残っていて、意識は戻ったけれど、なんだかふわふわとした感覚。
「……すみません。無茶しました」
悪戯が見つかって、怒られている子供のような顔で鈴が言う。
「抑え効かなくて……菫さんが怪我してるのに……」
大きな身体を小さく屈めて本当に捨てられた子犬のような顔。それが、堪らなく可愛く見えて、菫はその頭に手を伸ばした。
届かなくて『痛』と、呟くと、慌ててその頭が下がってきた。
「謝んないでよ。鈴は悪くないよ? 俺……その。煽った自覚あるし……」
なでなで、と、その頭を撫でながらできるだけ優しく笑いかけると、鈴はホッとしたような表情になった。
思い出すと顔から火が出そうだ。たくさん。如何わしいことを言った覚えがある。
「てか……あの……応えてくれて、ありがと」
菫だって男だ。好きだと思っている人に、菫が言ってしまったようなことを言われたら、我慢が効かなくなることくらい想像はつく。
だから、鈴は何も悪くないし、むしろ応えてくれたことが、嬉しい。
「……そんなに甘やかさないでください」
お礼をいう菫のはにかんだような表情に、鈴は少し困り顔になる。けれど、隠しきれない喜びが溢れているのは、誰が見たって明らかだった。
「俺……どんどん贅沢になっちゃいますよ? 反省したばっかりなのに」
苦笑して、鈴は菫の横に寝転んで、腕枕をしてくれる。
「反省?」
オウム返しで返すと、鈴はまた、困ったような表情になった。顔が近い。吐息がかかるほどだ。
一瞬、これが夢なんじゃないかと、嫌な考えが頭をよぎる。本当は梁の下敷きになって、今際の際に見ている最期の悪足掻きなんじゃないだろうか。
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