真鍮とアイオライト 1

司書Y

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月夕に落ちる雨の名は

幕間 三食昼寝溺愛付き 後編 2

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 二人しかいない広い家の鈴の部屋の中には、菫の甘い声と小さな水音だけが響いていた。

「……あ。あ……ぁ。や。すず……だめ」

 ベッドの上、もう、菫は何も身に付けてはいない。気付いたときにはもう、この姿になっていた。鈴の手が、唇が、舌が、身体の敏感なところを余すところなく暴いて、初めは押し殺していた声を抑えることができない。

「も。やだぁ……だめ……また、イ……あっ」

 ぐり。と、身体の中の最も弱い場所を指先で擦りあげられて、菫は、びくり。と、身体を跳ねさせる。もう、すでに、菫の腹には菫自身が吐き出した精が小さな水たまりを作っていた。そのくせ、吐精したはずの前はまた立ち上がって、菫が感じている快楽を主張している。
 何処までも気持よくなってしまうのが怖くて、菫は身を捩って僅かな抵抗を試みる。

「いいよ? イって?」

 けれど、逃げる腰は難なく引き戻されて、また、鈴の指先がいいところを掠めた。

「ああっ」

 一際高い嬌声が菫の唇から零れる。

「だめっ。ダメだって……っ。やだ。鈴っ。イっちゃうよ」

 必死で首を振って快楽を逃がそうとするけれど、鈴の腕が、指がそれを許してくれない。それどころか、菫を追い込むように、その舌先が菫の立ち上がったソレに触れる。

「鈴っ」

 お世辞にも見目好いとは言えないソレが、鈴の綺麗な顔を汚しているような気がして、菫は思わず両手で鈴の顔を押しのけようとした。けれど、手には力が入らない。
 ふ。と、優しく笑って、鈴はそれを咥内に迎え入れた。

「あっ。ア……ん。ま……って……だめやだ」

 途端に、じん。と、別の快感が湧き上がる。

「だめ……だって。でちゃ……からっ」

 前と後ろを同時に責められて、菫の瞳の端に涙が溜まる。それは、堪える間もなく零れ落ちた。

「やだ。……やだあ」

 必死に首を振って抵抗する。涙の雫が飛び散ってシーツに吸い込まれた。
 鈴とするのが嫌なわけじゃない。
 もちろん、鈴になら、どこを触れられても、どこを暴かれても、構わない。
 けれど、一人でイくのは嫌だ。
 快楽に溺れた頭の片隅で菫は思う。
 気持ちよくなるなら、一緒がいい。鈴と全部分け合いたい。

「……やだよ……すず……ひとり……も。やぁ」

 しゃくりあげながら懇願すると、鈴の手がようやく止まった。

「……なんで泣くの? 嫌じゃないでしょ」

 ぺろ。と、舌先が菫の涙を舐めとる。そんな僅かな接触でも敏感になっている肌が気持ちよくて、菫はびく。と、身体を竦めた。

「……一緒じゃなきゃ……やだ」

 まるで、子供が駄々をこねるような声になってしまった。

「一緒にイきたいの?」

 けれど、鈴は嫌な顔をするどころか、すごく嬉しそうに頬を撫でてくれた。

「一緒がいい。鈴と気持ちよくなりたい」

 力の入らない腕を鈴の首に回して抱きしめる。そして、菫の方からその唇にキスをした。
 こんな気持ちになるのは初めてだ。
 菫は思う。
 自分だけが気持ちよくなっても意味がない。同じだけ、鈴にも気持ちよくなってほしい。
 鈴の全部が欲しいし、全部をあげたい。

「鈴の……挿れて」

 そ。と、手を伸ばしてそれに触れる。張り詰めて、脈打っているのが分かるくらいに固く、大きい。一瞬、驚いて躊躇するけれど、やわやわと握り込むと、鈴の口からため息のような吐息が漏れた。

「……久しぶりだから。ゆっくり。って思ってたのに」

 小さな音を立てて、鈴の指が菫のソコから引き抜かれた。

「あ……」

 思わず声が漏れる。

「も。止まれないですよ?」

 手を伸ばして、ゴムを取ろうとした鈴の手を、菫は握って遮った。

「いいよ。要らない……」

 どうしてそんなことを言ってしまったのか自分でも分からない。ただ、今夜は何にも邪魔されたくないと思った。鈴との間に何も遮るものがあってほしくないと思う。全部。全部。鈴が欲しい。
 冷静に考えると、とんでもないことを言い出してしまったのは分かっている。でも、頭で考えて止めることはできなかった。
 相手が望むより強く。相手を望む。というのは、きっとこういうことなんだろうと、今ならわかる。

「でも。菫さん」

 少し困ったように鈴が言う。

「……お願いだよ。今日だけで……いいから」

 懇願するように言うと、鈴は大きく息を吐いた。そして、ゴムに伸ばした手を引っ込める。

「……我儘言ってごめん」

 鈴が菫の身体を気遣ってくれているのは分かっている。それでも、そんなもの全部無視して、鈴のものにしてほしかった。

「バカ言わないで」

 けれど、謝った菫をぐ。と、ベッドの上に押し付けるようにして、鈴はその顔を見つめてきた。
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