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月夕に落ちる雨の名は
幕間 三食昼寝溺愛付き 後編 2
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二人しかいない広い家の鈴の部屋の中には、菫の甘い声と小さな水音だけが響いていた。
「……あ。あ……ぁ。や。すず……だめ」
ベッドの上、もう、菫は何も身に付けてはいない。気付いたときにはもう、この姿になっていた。鈴の手が、唇が、舌が、身体の敏感なところを余すところなく暴いて、初めは押し殺していた声を抑えることができない。
「も。やだぁ……だめ……また、イ……あっ」
ぐり。と、身体の中の最も弱い場所を指先で擦りあげられて、菫は、びくり。と、身体を跳ねさせる。もう、すでに、菫の腹には菫自身が吐き出した精が小さな水たまりを作っていた。そのくせ、吐精したはずの前はまた立ち上がって、菫が感じている快楽を主張している。
何処までも気持よくなってしまうのが怖くて、菫は身を捩って僅かな抵抗を試みる。
「いいよ? イって?」
けれど、逃げる腰は難なく引き戻されて、また、鈴の指先がいいところを掠めた。
「ああっ」
一際高い嬌声が菫の唇から零れる。
「だめっ。ダメだって……っ。やだ。鈴っ。イっちゃうよ」
必死で首を振って快楽を逃がそうとするけれど、鈴の腕が、指がそれを許してくれない。それどころか、菫を追い込むように、その舌先が菫の立ち上がったソレに触れる。
「鈴っ」
お世辞にも見目好いとは言えないソレが、鈴の綺麗な顔を汚しているような気がして、菫は思わず両手で鈴の顔を押しのけようとした。けれど、手には力が入らない。
ふ。と、優しく笑って、鈴はそれを咥内に迎え入れた。
「あっ。ア……ん。ま……って……だめやだ」
途端に、じん。と、別の快感が湧き上がる。
「だめ……だって。でちゃ……からっ」
前と後ろを同時に責められて、菫の瞳の端に涙が溜まる。それは、堪える間もなく零れ落ちた。
「やだ。……やだあ」
必死に首を振って抵抗する。涙の雫が飛び散ってシーツに吸い込まれた。
鈴とするのが嫌なわけじゃない。
もちろん、鈴になら、どこを触れられても、どこを暴かれても、構わない。
けれど、一人でイくのは嫌だ。
快楽に溺れた頭の片隅で菫は思う。
気持ちよくなるなら、一緒がいい。鈴と全部分け合いたい。
「……やだよ……すず……ひとり……も。やぁ」
しゃくりあげながら懇願すると、鈴の手がようやく止まった。
「……なんで泣くの? 嫌じゃないでしょ」
ぺろ。と、舌先が菫の涙を舐めとる。そんな僅かな接触でも敏感になっている肌が気持ちよくて、菫はびく。と、身体を竦めた。
「……一緒じゃなきゃ……やだ」
まるで、子供が駄々をこねるような声になってしまった。
「一緒にイきたいの?」
けれど、鈴は嫌な顔をするどころか、すごく嬉しそうに頬を撫でてくれた。
「一緒がいい。鈴と気持ちよくなりたい」
力の入らない腕を鈴の首に回して抱きしめる。そして、菫の方からその唇にキスをした。
こんな気持ちになるのは初めてだ。
菫は思う。
自分だけが気持ちよくなっても意味がない。同じだけ、鈴にも気持ちよくなってほしい。
鈴の全部が欲しいし、全部をあげたい。
「鈴の……挿れて」
そ。と、手を伸ばしてそれに触れる。張り詰めて、脈打っているのが分かるくらいに固く、大きい。一瞬、驚いて躊躇するけれど、やわやわと握り込むと、鈴の口からため息のような吐息が漏れた。
「……久しぶりだから。ゆっくり。って思ってたのに」
小さな音を立てて、鈴の指が菫のソコから引き抜かれた。
「あ……」
思わず声が漏れる。
「も。止まれないですよ?」
手を伸ばして、ゴムを取ろうとした鈴の手を、菫は握って遮った。
「いいよ。要らない……」
どうしてそんなことを言ってしまったのか自分でも分からない。ただ、今夜は何にも邪魔されたくないと思った。鈴との間に何も遮るものがあってほしくないと思う。全部。全部。鈴が欲しい。
冷静に考えると、とんでもないことを言い出してしまったのは分かっている。でも、頭で考えて止めることはできなかった。
相手が望むより強く。相手を望む。というのは、きっとこういうことなんだろうと、今ならわかる。
「でも。菫さん」
少し困ったように鈴が言う。
「……お願いだよ。今日だけで……いいから」
懇願するように言うと、鈴は大きく息を吐いた。そして、ゴムに伸ばした手を引っ込める。
「……我儘言ってごめん」
鈴が菫の身体を気遣ってくれているのは分かっている。それでも、そんなもの全部無視して、鈴のものにしてほしかった。
「バカ言わないで」
けれど、謝った菫をぐ。と、ベッドの上に押し付けるようにして、鈴はその顔を見つめてきた。
「……あ。あ……ぁ。や。すず……だめ」
ベッドの上、もう、菫は何も身に付けてはいない。気付いたときにはもう、この姿になっていた。鈴の手が、唇が、舌が、身体の敏感なところを余すところなく暴いて、初めは押し殺していた声を抑えることができない。
「も。やだぁ……だめ……また、イ……あっ」
ぐり。と、身体の中の最も弱い場所を指先で擦りあげられて、菫は、びくり。と、身体を跳ねさせる。もう、すでに、菫の腹には菫自身が吐き出した精が小さな水たまりを作っていた。そのくせ、吐精したはずの前はまた立ち上がって、菫が感じている快楽を主張している。
何処までも気持よくなってしまうのが怖くて、菫は身を捩って僅かな抵抗を試みる。
「いいよ? イって?」
けれど、逃げる腰は難なく引き戻されて、また、鈴の指先がいいところを掠めた。
「ああっ」
一際高い嬌声が菫の唇から零れる。
「だめっ。ダメだって……っ。やだ。鈴っ。イっちゃうよ」
必死で首を振って快楽を逃がそうとするけれど、鈴の腕が、指がそれを許してくれない。それどころか、菫を追い込むように、その舌先が菫の立ち上がったソレに触れる。
「鈴っ」
お世辞にも見目好いとは言えないソレが、鈴の綺麗な顔を汚しているような気がして、菫は思わず両手で鈴の顔を押しのけようとした。けれど、手には力が入らない。
ふ。と、優しく笑って、鈴はそれを咥内に迎え入れた。
「あっ。ア……ん。ま……って……だめやだ」
途端に、じん。と、別の快感が湧き上がる。
「だめ……だって。でちゃ……からっ」
前と後ろを同時に責められて、菫の瞳の端に涙が溜まる。それは、堪える間もなく零れ落ちた。
「やだ。……やだあ」
必死に首を振って抵抗する。涙の雫が飛び散ってシーツに吸い込まれた。
鈴とするのが嫌なわけじゃない。
もちろん、鈴になら、どこを触れられても、どこを暴かれても、構わない。
けれど、一人でイくのは嫌だ。
快楽に溺れた頭の片隅で菫は思う。
気持ちよくなるなら、一緒がいい。鈴と全部分け合いたい。
「……やだよ……すず……ひとり……も。やぁ」
しゃくりあげながら懇願すると、鈴の手がようやく止まった。
「……なんで泣くの? 嫌じゃないでしょ」
ぺろ。と、舌先が菫の涙を舐めとる。そんな僅かな接触でも敏感になっている肌が気持ちよくて、菫はびく。と、身体を竦めた。
「……一緒じゃなきゃ……やだ」
まるで、子供が駄々をこねるような声になってしまった。
「一緒にイきたいの?」
けれど、鈴は嫌な顔をするどころか、すごく嬉しそうに頬を撫でてくれた。
「一緒がいい。鈴と気持ちよくなりたい」
力の入らない腕を鈴の首に回して抱きしめる。そして、菫の方からその唇にキスをした。
こんな気持ちになるのは初めてだ。
菫は思う。
自分だけが気持ちよくなっても意味がない。同じだけ、鈴にも気持ちよくなってほしい。
鈴の全部が欲しいし、全部をあげたい。
「鈴の……挿れて」
そ。と、手を伸ばしてそれに触れる。張り詰めて、脈打っているのが分かるくらいに固く、大きい。一瞬、驚いて躊躇するけれど、やわやわと握り込むと、鈴の口からため息のような吐息が漏れた。
「……久しぶりだから。ゆっくり。って思ってたのに」
小さな音を立てて、鈴の指が菫のソコから引き抜かれた。
「あ……」
思わず声が漏れる。
「も。止まれないですよ?」
手を伸ばして、ゴムを取ろうとした鈴の手を、菫は握って遮った。
「いいよ。要らない……」
どうしてそんなことを言ってしまったのか自分でも分からない。ただ、今夜は何にも邪魔されたくないと思った。鈴との間に何も遮るものがあってほしくないと思う。全部。全部。鈴が欲しい。
冷静に考えると、とんでもないことを言い出してしまったのは分かっている。でも、頭で考えて止めることはできなかった。
相手が望むより強く。相手を望む。というのは、きっとこういうことなんだろうと、今ならわかる。
「でも。菫さん」
少し困ったように鈴が言う。
「……お願いだよ。今日だけで……いいから」
懇願するように言うと、鈴は大きく息を吐いた。そして、ゴムに伸ばした手を引っ込める。
「……我儘言ってごめん」
鈴が菫の身体を気遣ってくれているのは分かっている。それでも、そんなもの全部無視して、鈴のものにしてほしかった。
「バカ言わないで」
けれど、謝った菫をぐ。と、ベッドの上に押し付けるようにして、鈴はその顔を見つめてきた。
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