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月夕に落ちる雨の名は
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「それは、俺が、あいつを選ぶかもって思ったってこと?」
それまで何も言わずに鈴の言葉を聞いていた菫が、不意に言葉を挟んできた。
「菫さん」
「鈴も。そんなこと。不安になるのか……?」
信じられないとでもいうように、菫は独り言のような言葉を漏らす。
「そか。そうか……同じなんだ」
納得したみたいに頷いてから、菫はまた、顔をあげて、鈴を見た。
「俺は、縁とか、わかんない。でも、あいつと縁があるんだとしたら、それは、俺じゃなくて、多分、生まれ変わる前の人。魂とか、再利用されてるから、無関係ではないのかもしれないけど、俺は俺だよ」
それから、ふにゃり。と、いつもの笑顔。
「鈴は。その。すごく綺麗だし、鈴を好きな人はたくさんいるから、自信があるんだって、思い込んでた。けど、鈴も。同じなんだな。俺も。いつか鈴が俺みたいに平凡なモブじゃなくて、特別な誰かに出会って、その人を選ぶんじゃないかって、いつも不安だよ。
ごめん。本当は、言わなきゃいけなかったんだよな。これからは、言わなきゃいけないことは、もっと、ちゃんと、言うよ。
俺は俺。縁なんてどうでもいい。俺は鈴が好き。のぶを放っておけないのは、恋愛って意味で好きだからじゃない。ただ、貰った優しさとか、あいつなりの誠実さとか、俺の中に残ってる人の感謝とかは返したいし、あいつが頑張ってきたことに労いがあってもいいと思う」
菫が言う通り、鈴はいつだって不安だ。
菫が自分を好きでいてくれる自信はない。だから、いまだって、あの狐に菫を近づけたくはない。
でも、そんな情けない自分を正面から受け止めて、笑ってくれるその人が堪らなく好きだ。その上で、何も諦めないその人が好きだ。
菫は自分を平凡なモブというけれど、鈴には菫が輝いて見える。少なくとも、鈴の物語の中で、菫は紛れもなく主人公で、たった一人のヒーローで、ヒロインだ。
「だから、ごめん。約束は。やっぱりなしにしてほしい。
あ。けど。もう一つの約束は。絶対に守るよ?
俺は、鈴への気持ちを裏切るようなことは、絶対にしない。ずっと、鈴が好きだ」
何故か少し得意げに菫が笑う。その笑顔も好きだ。
だから、主人公がそうしたいなら、仕方がない。どんな菫も好きだけれど、その笑顔を見るためなら、鈴はどんなこともできると思うからだ。
「ところで……鈴。どうしてこんなところにいるんだ?」
菫の言葉に、ここが病院だったことをやっと思い出した鈴だった。
それまで何も言わずに鈴の言葉を聞いていた菫が、不意に言葉を挟んできた。
「菫さん」
「鈴も。そんなこと。不安になるのか……?」
信じられないとでもいうように、菫は独り言のような言葉を漏らす。
「そか。そうか……同じなんだ」
納得したみたいに頷いてから、菫はまた、顔をあげて、鈴を見た。
「俺は、縁とか、わかんない。でも、あいつと縁があるんだとしたら、それは、俺じゃなくて、多分、生まれ変わる前の人。魂とか、再利用されてるから、無関係ではないのかもしれないけど、俺は俺だよ」
それから、ふにゃり。と、いつもの笑顔。
「鈴は。その。すごく綺麗だし、鈴を好きな人はたくさんいるから、自信があるんだって、思い込んでた。けど、鈴も。同じなんだな。俺も。いつか鈴が俺みたいに平凡なモブじゃなくて、特別な誰かに出会って、その人を選ぶんじゃないかって、いつも不安だよ。
ごめん。本当は、言わなきゃいけなかったんだよな。これからは、言わなきゃいけないことは、もっと、ちゃんと、言うよ。
俺は俺。縁なんてどうでもいい。俺は鈴が好き。のぶを放っておけないのは、恋愛って意味で好きだからじゃない。ただ、貰った優しさとか、あいつなりの誠実さとか、俺の中に残ってる人の感謝とかは返したいし、あいつが頑張ってきたことに労いがあってもいいと思う」
菫が言う通り、鈴はいつだって不安だ。
菫が自分を好きでいてくれる自信はない。だから、いまだって、あの狐に菫を近づけたくはない。
でも、そんな情けない自分を正面から受け止めて、笑ってくれるその人が堪らなく好きだ。その上で、何も諦めないその人が好きだ。
菫は自分を平凡なモブというけれど、鈴には菫が輝いて見える。少なくとも、鈴の物語の中で、菫は紛れもなく主人公で、たった一人のヒーローで、ヒロインだ。
「だから、ごめん。約束は。やっぱりなしにしてほしい。
あ。けど。もう一つの約束は。絶対に守るよ?
俺は、鈴への気持ちを裏切るようなことは、絶対にしない。ずっと、鈴が好きだ」
何故か少し得意げに菫が笑う。その笑顔も好きだ。
だから、主人公がそうしたいなら、仕方がない。どんな菫も好きだけれど、その笑顔を見るためなら、鈴はどんなこともできると思うからだ。
「ところで……鈴。どうしてこんなところにいるんだ?」
菫の言葉に、ここが病院だったことをやっと思い出した鈴だった。
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