323 / 392
月夕に落ちる雨の名は
10 きいてほしいことがあるんだ 1
しおりを挟む
鈴。
きいてほしいことがあるんだ。
その日。菫は久しぶりに『ごめん』以外のメッセージを送った。
はじめに、守れない約束をしてしまったこと。
ごめん。
けれど、すぐにまた、『ごめん』と、言ってしまった。
あいつのこと、放っておけない。
それも、ごめん。
いや、やはり、『ごめん』ばかりになっていた。
それから、あいつにキスされた。
ごめん。
けれど、それまでとは違う『ごめん』だと、菫は思っていた。
あいつに小さいとき助けれたこととか、
なんか、知らない女の人の記憶とか見えていたこととか、
話さなかった。
ごめん。
今まではただ、鈴の怒りが怖くて、『ごめん』という言葉に、逃げていただけだった。
でも、今は違う。と。思う。
でも、俺は鈴が好きだから。
その気持ちを裏切るようなことは、しない。
約束する。
今度は守れない約束じゃない。
鈴に嫌われるのが怖いのは同じだけれど、自分の気持ちを伝えるための『ごめん』だ。
鈴がもう、俺のこと好きでなくなったなら、
それだけ返事してほしい。
そのメッセージを打っている間も、送信する瞬間も手が震えた。怖くて仕方ない。有耶無耶にしておいて、希望を少しでも持っていたかった。
たった数文字のメッセージを打つのに随分と時間がかかってしまった。
そしたら、もう、迷惑かけない。
喉の奥が熱い。今にも涙が零れそうで、菫は硬く目を閉じた。
けれど、もう一度目を開く。
迷惑にならないようにするから。
ずっと、好きでいるのは、許して。
送信ボタンを押して、菫はディスプレイをオフにした。
きいてほしいことがあるんだ。
その日。菫は久しぶりに『ごめん』以外のメッセージを送った。
はじめに、守れない約束をしてしまったこと。
ごめん。
けれど、すぐにまた、『ごめん』と、言ってしまった。
あいつのこと、放っておけない。
それも、ごめん。
いや、やはり、『ごめん』ばかりになっていた。
それから、あいつにキスされた。
ごめん。
けれど、それまでとは違う『ごめん』だと、菫は思っていた。
あいつに小さいとき助けれたこととか、
なんか、知らない女の人の記憶とか見えていたこととか、
話さなかった。
ごめん。
今まではただ、鈴の怒りが怖くて、『ごめん』という言葉に、逃げていただけだった。
でも、今は違う。と。思う。
でも、俺は鈴が好きだから。
その気持ちを裏切るようなことは、しない。
約束する。
今度は守れない約束じゃない。
鈴に嫌われるのが怖いのは同じだけれど、自分の気持ちを伝えるための『ごめん』だ。
鈴がもう、俺のこと好きでなくなったなら、
それだけ返事してほしい。
そのメッセージを打っている間も、送信する瞬間も手が震えた。怖くて仕方ない。有耶無耶にしておいて、希望を少しでも持っていたかった。
たった数文字のメッセージを打つのに随分と時間がかかってしまった。
そしたら、もう、迷惑かけない。
喉の奥が熱い。今にも涙が零れそうで、菫は硬く目を閉じた。
けれど、もう一度目を開く。
迷惑にならないようにするから。
ずっと、好きでいるのは、許して。
送信ボタンを押して、菫はディスプレイをオフにした。
1
お気に入りに追加
30
あなたにおすすめの小説

鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。

見ぃつけた。
茉莉花 香乃
BL
小学生の時、意地悪されて転校した。高校一年生の途中までは穏やかな生活だったのに、全寮制の学校に転入しなければならなくなった。そこで、出会ったのは…
他サイトにも公開しています

ハイスペックED~元凶の貧乏大学生と同居生活~
みきち@書籍発売中!
BL
イケメン投資家(24)が、学生時代に初恋拗らせてEDになり、元凶の貧乏大学生(19)と同居する話。
成り行きで添い寝してたらとんでも関係になっちゃう、コメディ風+お料理要素あり♪
イケメン投資家(高見)×貧乏大学生(主人公:凛)

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】
彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』
高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。
その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。
そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
幸せの温度
本郷アキ
BL
※ラブ度高めです。直接的な表現もありますので、苦手な方はご注意ください。
まだ産まれたばかりの葉月を置いて、両親は天国の門を叩いた。
俺がしっかりしなきゃ──そう思っていた兄、睦月《むつき》17歳の前に表れたのは、両親の親友だという浅黄陽《あさぎよう》33歳。
陽は本当の家族のように接してくれるけれど、血の繋がりのない偽物の家族は終わりにしなければならない、だってずっと家族じゃいられないでしょ? そんなのただの言い訳。
俺にあんまり触らないで。
俺の気持ちに気付かないで。
……陽の手で触れられるとおかしくなってしまうから。
俺のこと好きでもないのに、どうしてあんなことをしたの? 少しずつ育っていった恋心は、告白前に失恋決定。
家事に育児に翻弄されながら、少しずつ家族の形が出来上がっていく。
そんな中、睦月をストーキングする男が現れて──!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる