真鍮とアイオライト 1

司書Y

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錨草と紫苑

1 ケータとすみれおにいさん 3

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「いいじゃん。昔話と祭。両方調べてまとめよう」

 そんな二人の女の子に提案したのは、いかにも育ちがよさそうな少年だった。大抵、これくらいのお年頃の男子はスポーツメーカーのバッグを持っている。S市のような田舎なら、100人中95人まではその括りにはいるだろう。けれど、その少年はファッションに疎い菫でも知っているようなブランドのロゴが入ったカバンを背負っていた。周りの子が気付いているかは怪しいけれど、たかが市民センターに行くのにこんなものを持たせる親が経済的に貧困しているはずはない。着ている服もほかの二人の男子がTシャツに短パン(これもスポーツメーカーのロゴ入り)なのに対して、アイロンの効いた半そでシャツにハーフ丈のスラックス。明らかに異彩を放っていた。

「メインはそれでいいんじゃないかな。でも。他に面白そうな話があったら、それも書いておいたらいいかも。スペース余ったら埋められるし」

 少しばかりふっくらした体形の色白で眼鏡の少年が答える。気は弱そうだけれど頭は良さそうだと思う。眼鏡行=頭がいいは、偏見だとはわかっている。そもそも、菫だって眼鏡をかけている(伊達なのでよく忘れる)が別に頭がいいということはない。鈴はきっと頭がいいほうだとは思うけれど、眼鏡のお陰ではないだろう。

「ケータどう思う?」

 色白の少年は隣にいた少年に声をかけた。半そでハーパンから覗く手足も、やんちゃそうな顔も日に焼けて真っ黒だ。着ているTシャツは地元のJ3のサッカーチームのユニホームのレプリカ。膝小僧に絆創膏を貼っているところを見ると、サッカー少年らしい。

「……別に。好きにすれば」

 いつもそうなのか、ご機嫌が斜めなのか、ムスっとした表情でケータと呼ばれた少年は答えた。

「じゃ、決まりな」

 ボンボン(言い方)風の少年がまとめるように言うと、二人の間に最初の少女が割り込んでくる。

「ダメだよ。ちゃんと、みんながいいよ。っていうのにしよ? ケータ。やなんじゃないの?」

 やっぱり。この子がリーダーかな。と、菫は思う。ムスっとした顔をしたから覗き込まれて、サッカー少年・ケータはぷい。と、そっぽを向く。

「みんながいいならいいって。どーせ俺はバカだから勉強のことなんてわかんねえし」

 その頬が赤い。
 その顔を見て、菫もピンときた。きっと、勉強では『好きな子』にアピールできないから、拗ねているんだろう。

「本当に? じゃあ、みんな。それでいい?」

 少女が全員の顔を見渡して訊ねると、一同が頷いた。
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