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夏夜
じゃ、見ていて? 2
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「嘘じゃないです。菫さんに。嘘なんて言わないよ?」
ちゅ。と、あやすみたいに鈴の唇が瞼に触れる。それから、鼻先に、頬に、唇に、顎に。たくさんキスの雨。
「気持ちい? よかった。ネットで散々調べたし、毎日イメトレしてた。尊重したいなんて言いながら、ずっと、ずっと……こうしたくてたまらなかった」
まっすぐに顔を見つめて、鈴がそんなことを言う。
そんなことを言うもんだから、ほう。と、思わず息を詰める。その瞬間に鈴の指を受け入れたままのソコが、きゅ。と。締まったのが菫自身にもわかってしまった。
「ここ。菫さんよりずっと、素直ですね?」
また、少し意地悪く笑う鈴。
それから、また、指の動きを再開させた。
ぐちゅ。と、ローションで濡れたソコが音を立てる。痛みだって、もう、全くない。最初だけ感じていた違和感もない。ただ、気持ちいい。
「あ。……っああ……も。いいからぁ……ぁすずっ」
既に菫の前も硬く張り詰めて立ち上がっている。上半身しか脱いでいないから、スウェット越しだけれど、鈴のそれも張り詰めているのは明白だ。
だから、それは、もう、慣らすのは十分だと言っているつもりだった。
「こっち?」
けれど、鈴は後ろに入れた指はそのままに立ち上がり切った菫の男性器に手を伸ばした。
「や。だめっ。そこ」
ソコを触られたらすぐに達してしまう。
そんなのはわかっていた。でも、できることなら、まだ、イきたくない。
ふるふる。と、弱弱しく首を振ってその手を止める。けれど、その手に力はない。菫の手で手首を握られたまま、鈴はソレをその大きな手の中に収めた。
「……やだぁ。ま……ああん」
中を散々掻き回されて、前も擦るのをやめてくれなくて、ぐずぐずに溶かされて、気持ちいい以外考えられなくなってくる。
同時に、頭の片隅で思う。はじめてなのに、こんなに感じて、自分はおかしいんじゃないか。鈴に変に思われるんじゃないか。引かれるんじゃないか。嫌われるんじゃないか。
揺れる視界が滲んだ。
「菫……さん?」
鈴の手が止まる。
「どしたんですか?」
気付くと、涙が流れていた。
おろおろ。と、慌てたように鈴が抱きしめてくれた。
「ごめんなさい。俺。調子に乗って。嫌でした?」
声が慌てているのがわかる。
「違う。よ。違う。ただ……俺。おかしくない?」
鈴が、ローションやゴムを用意してあったこととか、上手過ぎるのを否定したときの気持ちがわかる。こんなことで疑われたくない。恥ずかしいヤツと思われたくない。
鈴に恋をしてから自分はおかしいと、菫は思う。
「鈴に上手過ぎるとか言ったけど。俺だって。なんも。……鈴以外誰とも、こんなことしたことないのに、嘘みたいに気持ちよくて。ネットでは、はじめてとか、気持ちよくないって書いてあったのに」
臆病になった。過敏になった。泣き虫になったし、弱虫になった。それなのに、我儘で貪欲になった。
鈴に嫌われるのが怖い。
「……なんだ。そんなこと……」
ため息のような吐息が菫の髪にかかる。抱きしめられているから顔は見えない。
「そんなことじゃない。俺は……鈴に……っん」
こんな時に中断してまで言うことじゃなかったかもしれないけれど、菫にとっては重要なことだった。そんなこと。なんて言われたくなくて、言葉をつづけようとすると、鈴はそれをキスで遮った。
「菫さんが初めてなんてことわかってます。菫さん、嘘。下手ですよね? だから、ネットの情報とかどうでもいいから、気持ちいいなら、ただ、感じていてください。
俺は、菫さんが見せてくれる表情の全部。好きです」
そう言ってもう一度、唇が重なる。
眩暈がしそうなほど甘いキスだった。
「……ほん……とに。変じゃない?」
唇が離れると、菫は聞いた。ず。と、鼻をすする音がみっともない。
「変じゃないです」
ベッドサイドのチェストからティッシュを引き抜いて、顔を拭いてくれる鈴。
「淫乱ビッチとか思ってない?」
「……なんですか? それ? あ。でも、もしそうでも、俺だけにならいいです」
驚いた顔をしてから、鈴は優しく笑った。
「鈴。だけだよ?」
「わかってます。そうじゃなかったら、相手を消します」
笑顔は張り付けたままだったけれど、目は笑っていなかった。
「鈴。好きだよ」
「俺は、愛してます」
そう言って、鈴はぎゅ。と、もう一度強く抱きしめてくれた。
全部、不安なんて溶けていくみたいに温かかった。
ちゅ。と、あやすみたいに鈴の唇が瞼に触れる。それから、鼻先に、頬に、唇に、顎に。たくさんキスの雨。
「気持ちい? よかった。ネットで散々調べたし、毎日イメトレしてた。尊重したいなんて言いながら、ずっと、ずっと……こうしたくてたまらなかった」
まっすぐに顔を見つめて、鈴がそんなことを言う。
そんなことを言うもんだから、ほう。と、思わず息を詰める。その瞬間に鈴の指を受け入れたままのソコが、きゅ。と。締まったのが菫自身にもわかってしまった。
「ここ。菫さんよりずっと、素直ですね?」
また、少し意地悪く笑う鈴。
それから、また、指の動きを再開させた。
ぐちゅ。と、ローションで濡れたソコが音を立てる。痛みだって、もう、全くない。最初だけ感じていた違和感もない。ただ、気持ちいい。
「あ。……っああ……も。いいからぁ……ぁすずっ」
既に菫の前も硬く張り詰めて立ち上がっている。上半身しか脱いでいないから、スウェット越しだけれど、鈴のそれも張り詰めているのは明白だ。
だから、それは、もう、慣らすのは十分だと言っているつもりだった。
「こっち?」
けれど、鈴は後ろに入れた指はそのままに立ち上がり切った菫の男性器に手を伸ばした。
「や。だめっ。そこ」
ソコを触られたらすぐに達してしまう。
そんなのはわかっていた。でも、できることなら、まだ、イきたくない。
ふるふる。と、弱弱しく首を振ってその手を止める。けれど、その手に力はない。菫の手で手首を握られたまま、鈴はソレをその大きな手の中に収めた。
「……やだぁ。ま……ああん」
中を散々掻き回されて、前も擦るのをやめてくれなくて、ぐずぐずに溶かされて、気持ちいい以外考えられなくなってくる。
同時に、頭の片隅で思う。はじめてなのに、こんなに感じて、自分はおかしいんじゃないか。鈴に変に思われるんじゃないか。引かれるんじゃないか。嫌われるんじゃないか。
揺れる視界が滲んだ。
「菫……さん?」
鈴の手が止まる。
「どしたんですか?」
気付くと、涙が流れていた。
おろおろ。と、慌てたように鈴が抱きしめてくれた。
「ごめんなさい。俺。調子に乗って。嫌でした?」
声が慌てているのがわかる。
「違う。よ。違う。ただ……俺。おかしくない?」
鈴が、ローションやゴムを用意してあったこととか、上手過ぎるのを否定したときの気持ちがわかる。こんなことで疑われたくない。恥ずかしいヤツと思われたくない。
鈴に恋をしてから自分はおかしいと、菫は思う。
「鈴に上手過ぎるとか言ったけど。俺だって。なんも。……鈴以外誰とも、こんなことしたことないのに、嘘みたいに気持ちよくて。ネットでは、はじめてとか、気持ちよくないって書いてあったのに」
臆病になった。過敏になった。泣き虫になったし、弱虫になった。それなのに、我儘で貪欲になった。
鈴に嫌われるのが怖い。
「……なんだ。そんなこと……」
ため息のような吐息が菫の髪にかかる。抱きしめられているから顔は見えない。
「そんなことじゃない。俺は……鈴に……っん」
こんな時に中断してまで言うことじゃなかったかもしれないけれど、菫にとっては重要なことだった。そんなこと。なんて言われたくなくて、言葉をつづけようとすると、鈴はそれをキスで遮った。
「菫さんが初めてなんてことわかってます。菫さん、嘘。下手ですよね? だから、ネットの情報とかどうでもいいから、気持ちいいなら、ただ、感じていてください。
俺は、菫さんが見せてくれる表情の全部。好きです」
そう言ってもう一度、唇が重なる。
眩暈がしそうなほど甘いキスだった。
「……ほん……とに。変じゃない?」
唇が離れると、菫は聞いた。ず。と、鼻をすする音がみっともない。
「変じゃないです」
ベッドサイドのチェストからティッシュを引き抜いて、顔を拭いてくれる鈴。
「淫乱ビッチとか思ってない?」
「……なんですか? それ? あ。でも、もしそうでも、俺だけにならいいです」
驚いた顔をしてから、鈴は優しく笑った。
「鈴。だけだよ?」
「わかってます。そうじゃなかったら、相手を消します」
笑顔は張り付けたままだったけれど、目は笑っていなかった。
「鈴。好きだよ」
「俺は、愛してます」
そう言って、鈴はぎゅ。と、もう一度強く抱きしめてくれた。
全部、不安なんて溶けていくみたいに温かかった。
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