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夏夜
今、しよう? 3
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図書館から利用者である鈴へ連絡する必要ががあった時に、鈴の誕生日をこっそり見たのは偶然じゃない。本当は意識して見ていた。プライバシーの侵害とか言われたら謝るだけでは済まないかもしれないけれど、それを口実にしてでも鈴に全部あげようと心に決めた。優しい鈴に頼るのではなくて、年上の自分から、その先へ進みたいと鈴に伝えたかった。
そうでなければ、鈴がいつか、いや、すぐに自分に飽きてしまうのではないかと、怖かった。
「……プレゼントなら。もう、もらいましたよ?」
菫が言おうとしていることを、鈴が分かっていないわけではないと思う。けれど、鈴ははぐらかすように言った。
「これの中身も見たいんで……せめて、コーヒーくらいは淹れます」
そう言って、菫の視線から逃れるように、鈴はソファへと菫を促す。そうして、菫の元を離れて、キッチンへ向かおうとする。
そこで、菫ははっとした。考えてみれば、鈴は意識的にそうなることを避けていたような気がする。
そうだ。
菫は思う。
鈴は女性とも付き合っていた。
菫のことは好きでいて入れているけれど、あくまでそれは人間性が。ということで、身体の関係なんて望んでいないのかもしれない。あるいは、菫がそんな素振りを見せて初めて、そんな対象として意識して、その上で『なし』だったのかもしれない。
どちらにせよ。
きっと、鈴はそういう対象として菫を見てはいない。
「……あ。の」
思わず、鈴の服の裾を掴む。言い訳をしようとしたのかもしれない。
鈴が嫌なら、今まで通りでいいと。
身体の関係なんてなくても、大丈夫だと。
けれど、それは言葉にはならなかった。
「……ごめん」
身体の関係は必ずしも必要ではない。そういう形があるのも分かってはいるし、そんなことで愛情を量ることなんてできないとは思う。
「池井……さん?」
鈴と想いが通じる前。諦めないといけないとか、友達でいられたらそれでいいとかそんなふうに思っていた。だから、恋人の場所にいられるだけでも幸せなのだろう。とも、思う。
「や。その……」
鈴が自分とそういうことをしたいわけではないというなら、聞き分けないといけないことは分かっている。思春期みたいなキスも、家族みたいなハグも。鈴とするなら心地いい。
鈴が好きでいてくれるならそれで我慢しないといけない。
そうでなければ、鈴がいつか、いや、すぐに自分に飽きてしまうのではないかと、怖かった。
「……プレゼントなら。もう、もらいましたよ?」
菫が言おうとしていることを、鈴が分かっていないわけではないと思う。けれど、鈴ははぐらかすように言った。
「これの中身も見たいんで……せめて、コーヒーくらいは淹れます」
そう言って、菫の視線から逃れるように、鈴はソファへと菫を促す。そうして、菫の元を離れて、キッチンへ向かおうとする。
そこで、菫ははっとした。考えてみれば、鈴は意識的にそうなることを避けていたような気がする。
そうだ。
菫は思う。
鈴は女性とも付き合っていた。
菫のことは好きでいて入れているけれど、あくまでそれは人間性が。ということで、身体の関係なんて望んでいないのかもしれない。あるいは、菫がそんな素振りを見せて初めて、そんな対象として意識して、その上で『なし』だったのかもしれない。
どちらにせよ。
きっと、鈴はそういう対象として菫を見てはいない。
「……あ。の」
思わず、鈴の服の裾を掴む。言い訳をしようとしたのかもしれない。
鈴が嫌なら、今まで通りでいいと。
身体の関係なんてなくても、大丈夫だと。
けれど、それは言葉にはならなかった。
「……ごめん」
身体の関係は必ずしも必要ではない。そういう形があるのも分かってはいるし、そんなことで愛情を量ることなんてできないとは思う。
「池井……さん?」
鈴と想いが通じる前。諦めないといけないとか、友達でいられたらそれでいいとかそんなふうに思っていた。だから、恋人の場所にいられるだけでも幸せなのだろう。とも、思う。
「や。その……」
鈴が自分とそういうことをしたいわけではないというなら、聞き分けないといけないことは分かっている。思春期みたいなキスも、家族みたいなハグも。鈴とするなら心地いい。
鈴が好きでいてくれるならそれで我慢しないといけない。
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