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市立図書館地下書庫奥、由緒正しき……
5 由緒正しき?
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かさ。
菫の足音とは確実に違う小さな音がして振り返ると、ふさ。とした何かが木の向こうに引っ込んでいく。
「あ」
それに菫は見覚えがあった。
冬になると散歩道でたまに見かけるやつだ。咄嗟に追いかけて走り出す。行く当てもないのだから、そうするしかないと後から言い訳した。
それが隠れた木の裏側に回ると既にそれの姿はない。けれど、少し先の木々の間にまた、それが見える。ふわ。と、火の粉のようなものが、その先から舞った。そして、また、木の向こうに隠れてしまう。それを追いかける。追いかけて、木の向こうにたどり着くとまた、その先の木の間にそれは消えていった。
そうしているうちに、どれくらい歩いただろうか。なんだか、随分と長く歩いていた気がするけれど、よくは覚えていない。
何度目かにそれが隠れた先は、赤い鳥居が立つ社の影だった。
「神社?」
松林が途切れが場所から、そこが手入れがされている場所だと分かる。低い石積みを隔てて松葉殆ど落ちていないからだ。恐らくは誰かが掃き清めているのだろう。鳥居の下を通って社の前に続く石畳も手入れがされていて草も生えてはいない。視線を奥へと移すと石の像が一対。赤い前掛けをかけている。
狛犬ではない。獅子でもない。
狐だ。
ああ。やっぱりと思う。さっきから菫を誘うように見え隠れしていた姿は確かにキツネだった。と、いうことはこの神社は稲荷社なのだ。
「これって、もしかして……」
鳥居はくぐらずに中を覗き込む。怖いからではない。なんだか、入ってはいけない神聖な場所のような気がしたからだ。あのキツネは自分を誘っていたのかもしれない。それでもなお、そこへはむやみに立ち入ってはいけない気がする。
躊躇っていると、社の前に音もなくキツネが現れた。野生動物の見分けなんてつかないけれど、おそらくはさっきから菫を誘っていたキツネなのだと思う。細い身体に、ふさ。っと、大きなしっぽを持つ綺麗なコだった。
「何? 俺に何かしてほしいの?」
菫は自他共に認める動物好きだ。猫様が一番好きだけれど、犬も大好きだし、目の前のもふもふは放っておけない性分だった。だから、声色が途端に優しくなってしまうのも仕方ないと思う。
……ココへ……。
りん。
一瞬。キツネ(?)の声が聞こえたような気がした。
けれど、それは、ひときわ大きくなった鈴の音にかき消された。
菫の足音とは確実に違う小さな音がして振り返ると、ふさ。とした何かが木の向こうに引っ込んでいく。
「あ」
それに菫は見覚えがあった。
冬になると散歩道でたまに見かけるやつだ。咄嗟に追いかけて走り出す。行く当てもないのだから、そうするしかないと後から言い訳した。
それが隠れた木の裏側に回ると既にそれの姿はない。けれど、少し先の木々の間にまた、それが見える。ふわ。と、火の粉のようなものが、その先から舞った。そして、また、木の向こうに隠れてしまう。それを追いかける。追いかけて、木の向こうにたどり着くとまた、その先の木の間にそれは消えていった。
そうしているうちに、どれくらい歩いただろうか。なんだか、随分と長く歩いていた気がするけれど、よくは覚えていない。
何度目かにそれが隠れた先は、赤い鳥居が立つ社の影だった。
「神社?」
松林が途切れが場所から、そこが手入れがされている場所だと分かる。低い石積みを隔てて松葉殆ど落ちていないからだ。恐らくは誰かが掃き清めているのだろう。鳥居の下を通って社の前に続く石畳も手入れがされていて草も生えてはいない。視線を奥へと移すと石の像が一対。赤い前掛けをかけている。
狛犬ではない。獅子でもない。
狐だ。
ああ。やっぱりと思う。さっきから菫を誘うように見え隠れしていた姿は確かにキツネだった。と、いうことはこの神社は稲荷社なのだ。
「これって、もしかして……」
鳥居はくぐらずに中を覗き込む。怖いからではない。なんだか、入ってはいけない神聖な場所のような気がしたからだ。あのキツネは自分を誘っていたのかもしれない。それでもなお、そこへはむやみに立ち入ってはいけない気がする。
躊躇っていると、社の前に音もなくキツネが現れた。野生動物の見分けなんてつかないけれど、おそらくはさっきから菫を誘っていたキツネなのだと思う。細い身体に、ふさ。っと、大きなしっぽを持つ綺麗なコだった。
「何? 俺に何かしてほしいの?」
菫は自他共に認める動物好きだ。猫様が一番好きだけれど、犬も大好きだし、目の前のもふもふは放っておけない性分だった。だから、声色が途端に優しくなってしまうのも仕方ないと思う。
……ココへ……。
りん。
一瞬。キツネ(?)の声が聞こえたような気がした。
けれど、それは、ひときわ大きくなった鈴の音にかき消された。
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