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かの思想家が語るには
今夜は最高の夜だ 2
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「……じゃ。この間緑風堂の前で話してたのは……好きだって」
考え込んでいたから、思わず、ぽろ。と、言ってしまった言葉に、俺ははっとして、口を押える。俺が聞いていたことなんて鈴は知らない。盗み聞きしていたなんて趣味が悪いこと、知られたくなかった。
「あのとき。来ていたんですか?
……あ。違うんですよ? 付き合ってないし、好きでもないです。ストーカーみたいなことされてたのは、葉さんも、知ってますから。緑風堂に届いてた俺宛ての手紙もちゃんと保管してあるから証明できます」
たぶん、どっちかというと、盗み聞きしていたこと責められても仕方ないのは俺の方だ。それなのに、必死になって鈴は弁解している。でも、そんなに否定されると、余計に心配になってしまう。別にやましいことがなければ、慌てることなんてないのに。というか、そもそも彼女と付き合っていたとしても、俺は鈴を責めることなんてできない。
できない。よな?
「や。本当に。好きだとか。話合わせたのは……どこかに呪具が……あ、呪具っていうのは、呪いをかけるための道具で……ってか、それは、どうでもいいんですけど。とにかく、それが、どこかにあるって気付いて。回収できれば、池井さんに被害が及ばないって思ったから。結局できなくて、こんなことになっちゃいましたけど。
でも、本当に彼女とは何もないです。
その……さっきの……どさくさにまぎれたみたいになっちゃいましたけど、俺。本気ですから」
真剣な面持ちで、鈴がいきなり、真っ直ぐに俺を見つめてきた。
あんまりにもいろいろなことがありすぎて、もちろん忘れたわけじゃないけれど、そのことは、頭の隅に追いやられていた。いや、少し意識的に追いやっておかないと、きっと、鈴の顔を見ることすらできなかったと思う。
今だってもう、綺麗な鈴の顔を直視できない。心臓が壊れてしまいそうだ。
「もう一度、ちゃんと、聞いてもらってもいいですか?」
鈴の顔があんまり真剣で、俺は頷くしかできなかった。言葉なんて発したら、一緒に口から心臓飛び出るんじゃないかと思う。鈴が眩しくて見ていたら目が眩みそうな気がする。
だから、俺は目が合わないように俯いたまま、鈴の言葉を待った。
考え込んでいたから、思わず、ぽろ。と、言ってしまった言葉に、俺ははっとして、口を押える。俺が聞いていたことなんて鈴は知らない。盗み聞きしていたなんて趣味が悪いこと、知られたくなかった。
「あのとき。来ていたんですか?
……あ。違うんですよ? 付き合ってないし、好きでもないです。ストーカーみたいなことされてたのは、葉さんも、知ってますから。緑風堂に届いてた俺宛ての手紙もちゃんと保管してあるから証明できます」
たぶん、どっちかというと、盗み聞きしていたこと責められても仕方ないのは俺の方だ。それなのに、必死になって鈴は弁解している。でも、そんなに否定されると、余計に心配になってしまう。別にやましいことがなければ、慌てることなんてないのに。というか、そもそも彼女と付き合っていたとしても、俺は鈴を責めることなんてできない。
できない。よな?
「や。本当に。好きだとか。話合わせたのは……どこかに呪具が……あ、呪具っていうのは、呪いをかけるための道具で……ってか、それは、どうでもいいんですけど。とにかく、それが、どこかにあるって気付いて。回収できれば、池井さんに被害が及ばないって思ったから。結局できなくて、こんなことになっちゃいましたけど。
でも、本当に彼女とは何もないです。
その……さっきの……どさくさにまぎれたみたいになっちゃいましたけど、俺。本気ですから」
真剣な面持ちで、鈴がいきなり、真っ直ぐに俺を見つめてきた。
あんまりにもいろいろなことがありすぎて、もちろん忘れたわけじゃないけれど、そのことは、頭の隅に追いやられていた。いや、少し意識的に追いやっておかないと、きっと、鈴の顔を見ることすらできなかったと思う。
今だってもう、綺麗な鈴の顔を直視できない。心臓が壊れてしまいそうだ。
「もう一度、ちゃんと、聞いてもらってもいいですか?」
鈴の顔があんまり真剣で、俺は頷くしかできなかった。言葉なんて発したら、一緒に口から心臓飛び出るんじゃないかと思う。鈴が眩しくて見ていたら目が眩みそうな気がする。
だから、俺は目が合わないように俯いたまま、鈴の言葉を待った。
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