真鍮とアイオライト 1

司書Y

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かの思想家が語るには

幕間 深淵を覗くものは 3

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 これを逃したら、また来週までは会えません。だから、私は、外ですず君を待つことにしました。

『お仕事、もう、おわりですよね?』

 声をかけると、すず君は少しだけ驚いた顔をした後に、す。と、表情を失くしてしまった。心を完全に閉ざしたような顔だった。

 どうして!?
 私はすず君の運命の恋人だよ?
 どうしてわからないの?

 そうしたら、隣にいたあの司書が言った。

『今日は電車で帰るから…』

 そうしたら、すず君。急に生まれ変わったみたいに笑顔になったの。世界の幸せを全部集めたみたいな笑顔。すごい宝物を見つけたみたいな笑顔。
 どうして。
 それを向ける相手はあの司書なの?

『すみませんけど、先約があるから』

 それなのに、私にはそんな空っぽな顔をみせるの?
 どうして?
 それを聞く前に、すず君は行ってしまった。一緒にいた友達は”やっぱ、あんなイケメンが相手にしてくれるわけないか”とか言って、納得してしまっている。
 当たり前だよ。あんたなんかにすず君が笑いかけるわけない。すず君が笑いかけるのは私だけのはずなんだ。
 だって、私はすず君の運命だから!

 どうしたらいいんでしょうか。
 すず君に思い出してもらうにはどうしたらいいの?
 すず君は、私を待っているのに。あの司書さえいなければ、きっと、思い出してくれるのに。私たちが本当は心の底から愛し合ってること。きっと、生まれ変わる前から愛し合ってたこと。

 そうだ。
 あの司書が。あいつがいなくなればいい。
 いなくなればいい。
 いなくなればいい。

 そんなとき、出会いました。
 彼女に。
 その人は、私と同じ制服を着ていました。周りにある学校の生徒からは、『喪服』と呼ばれている黒のブレザー。髪の毛も真っ黒でさらさらのストレートでした。透き通るみたいに白くてきれいな肌。色素が薄い唇。まるで、モノクロの写真のような人でした。
 ただ、青に近い紫色の瞳だけが彼女の中にある色彩でした。

 彼女が、くれました。
 邪魔な人を消す方法を。
 そういえば、少し前に同級生が話していたかな。
 誰かの命と引き換えに。邪魔なものを消す方法。

 もうすぐだよ。
 すず君。もうすぐ、君と出会える。
 邪魔なものをなくしたら、きっと、すず君。笑ってくれるよね?
 私のためだけに笑ってくれるよね。

 あなたは私の運命の人。
 私はあなたの運命になりたい。
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