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かの思想家が語るには
幕間 深淵を覗くものは 2
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次にすず君に会えたのは、日曜日です。
今更なんだけれど、友達がイケメンがいるカフェがあると言って、私を緑風堂に誘ってきました。私は知ってはいたけれど、知らないふりをして一緒に行くことにしました。今日は日曜日だから、きっとすず君がいるはずだと思いました。
緑風堂にはすず君がいました。初めて会った日と同じで、すごく素敵でした。黒のシャツと黒のボトムにカフェエプロンがとっても似合っていて、お店の中の女の子はみんなすず君を見ていました。
でも、彼の名前を知っているのは私だけ!
その名前を私は友達にも教えませんでした。心の中で何度もすず君を呼びます。きっと、そうしていたら、いつか彼に私の心が届くと思ったからです。
けれど、彼は私の方を振り返ってはくれませんでした。
注文をするのに呼び止めた女子大生のおばさんや、私たちと同じ高校でみたことがある勘違いブス。くたびれたサラリーマン。呼び止められると彼は振り向くのに、私の心の声には応えてくれません。
どうしてだろう。
こんなに呼んでいるのに。
『…けいさん』
その時彼が私を呼びました。小さな声だったから聞き取りづらかったけれど、確かに恵(けい)って、私の名前を呼んだんです!! 嬉しかった。これで、始められる。私と、すず君の物語。
きっと、すず君はすぐに私の気持ちにも気付いてくれる。そして、優しく微笑んで話を聞いてくれる。ただの図書館司書にもあんなに優しいんだから、大好きな私に優しくないはずがない。
でも、それだけでした。
一度だけ名前を呼んだだけで、その日、すず君は私を見てはくれなかった。
あの図書館司書が来ていたから。
折角すず君が私に気付いてくれたのに、邪魔者が現れたんです!
すず君はこの司書が好きなんだ。と、すぐにわかりました。だって、私とすず君は繋がってるから。
私に向けられるはずだった眼差し。あんな目で見つめられたら、蕩けてしまいそう。青くて、澄んでいるのに、夜みたいに昏い。
私に向けられるはずだった笑顔。宝物みたいに綺麗。優しい。愛しいと言葉より多く語ってる。
私に向けられるはずだった言葉。低くて、よく通る声で、あなたのことばかり考えてます。って、言ってるみたいに気遣いばかり。
私に向けられるはずだった好意。ほら、誰が言った。すずは大切なものを見つけたって。
全部、私の為に用意されていたのに。
それなのに、この男が割り込んできたから、すず君はその向こうにいる私への好意をこいつへのものだって勘違いしている!
どうにかしなくちゃ。
私と出会えないすず君が可哀想。
本当の愛に気づけないなんて、ひどすぎる!
だから、私は勇気を出して、声をかけることにしました。
本当はすぐにでも声をかけて私のことを教えてあげたかったけれど、女子大生のおばさんがどうでもいい話ですず君を呼びだして、話していたせいで話しかけられません。すず君はずっと、迷惑そうにしているのに気付かない馬鹿な人たちです。いなくなればいいのに。
その後、やっと、その人たちから解放されたのに、すず君はもう、帰ると言っています。
今更なんだけれど、友達がイケメンがいるカフェがあると言って、私を緑風堂に誘ってきました。私は知ってはいたけれど、知らないふりをして一緒に行くことにしました。今日は日曜日だから、きっとすず君がいるはずだと思いました。
緑風堂にはすず君がいました。初めて会った日と同じで、すごく素敵でした。黒のシャツと黒のボトムにカフェエプロンがとっても似合っていて、お店の中の女の子はみんなすず君を見ていました。
でも、彼の名前を知っているのは私だけ!
その名前を私は友達にも教えませんでした。心の中で何度もすず君を呼びます。きっと、そうしていたら、いつか彼に私の心が届くと思ったからです。
けれど、彼は私の方を振り返ってはくれませんでした。
注文をするのに呼び止めた女子大生のおばさんや、私たちと同じ高校でみたことがある勘違いブス。くたびれたサラリーマン。呼び止められると彼は振り向くのに、私の心の声には応えてくれません。
どうしてだろう。
こんなに呼んでいるのに。
『…けいさん』
その時彼が私を呼びました。小さな声だったから聞き取りづらかったけれど、確かに恵(けい)って、私の名前を呼んだんです!! 嬉しかった。これで、始められる。私と、すず君の物語。
きっと、すず君はすぐに私の気持ちにも気付いてくれる。そして、優しく微笑んで話を聞いてくれる。ただの図書館司書にもあんなに優しいんだから、大好きな私に優しくないはずがない。
でも、それだけでした。
一度だけ名前を呼んだだけで、その日、すず君は私を見てはくれなかった。
あの図書館司書が来ていたから。
折角すず君が私に気付いてくれたのに、邪魔者が現れたんです!
すず君はこの司書が好きなんだ。と、すぐにわかりました。だって、私とすず君は繋がってるから。
私に向けられるはずだった眼差し。あんな目で見つめられたら、蕩けてしまいそう。青くて、澄んでいるのに、夜みたいに昏い。
私に向けられるはずだった笑顔。宝物みたいに綺麗。優しい。愛しいと言葉より多く語ってる。
私に向けられるはずだった言葉。低くて、よく通る声で、あなたのことばかり考えてます。って、言ってるみたいに気遣いばかり。
私に向けられるはずだった好意。ほら、誰が言った。すずは大切なものを見つけたって。
全部、私の為に用意されていたのに。
それなのに、この男が割り込んできたから、すず君はその向こうにいる私への好意をこいつへのものだって勘違いしている!
どうにかしなくちゃ。
私と出会えないすず君が可哀想。
本当の愛に気づけないなんて、ひどすぎる!
だから、私は勇気を出して、声をかけることにしました。
本当はすぐにでも声をかけて私のことを教えてあげたかったけれど、女子大生のおばさんがどうでもいい話ですず君を呼びだして、話していたせいで話しかけられません。すず君はずっと、迷惑そうにしているのに気付かない馬鹿な人たちです。いなくなればいいのに。
その後、やっと、その人たちから解放されたのに、すず君はもう、帰ると言っています。
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