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かの思想家が語るには
ストーカーと文字化け 3
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ghオp。・@prパエ。
-オ、0@p、オ、レ、v。イtr^jt
意味のない記号の羅列に、何故か背筋がぞっとして、思わずスマホを取り落とす。スマホが手から離れる刹那、糸を引くようなネバついた感触が指先に伝わってきた。反射的に自分の手に視線を移すが、そこにはいつも通りの自分の手があるだけで、何かが付いているようなことはなかった。
しゅぽん。
着信音にびくり。と、身体が反応する。けれど、今度は普通の着信音だ。
すまん。
犬にいじられた。
足元に落ちたスマホの画面に表示された言葉にほっとする。もちろん、スマホにも何かが付いているようなことはない。
安心すると、同時にこんなことくらいで怖がってしまった自分が恥ずかしくなってきた。五連勤最後の一日で疲れているのか、鈴のことで気が弱くなっているのか、理由はわからないけれど、意味もなくナーバスになっているみたいだ。
心霊番組を見てしまった後の子供みたいに、自分で不安を大きくしている自分がわかる。
「あー。も。今日は緑風堂行こ」
照れ隠しに、俺はわざと声を出して言った。
正直、同級会の夜のことはあまり覚えていない。確か、卒業後、あっていなかったメンバーとは、何人か交換したし、LINEグループもつくった。だから、戌井ともその時の流れで教えてもらったのを覚えていないだけなんだろう。
しかも、同級会で変なものを見たり、多分、同級会の時にいたのと同じと思われるやつに追いかけられたり、家まで付いてこられたり。兄ちゃんに鈴のことがバレたり反対されたり。戌井に鈴のことがバレたり、変なスタンプ送られたり。俺のキャパを超える出来事が起こりすぎた。
だから、戌井の平凡すぎる(失礼極まりない言い方だが)顔を覚えられなかったり、俺にとっては珍しくもない実体のないストーカーが家の前にいることくらいで、不安になっているんだ。
大体、さっきの生臭い匂いだって、朝飯に出そうと思っているニシンの匂いだ。指先のネバつきだって、気付かなかっただけで、洗って干してあった納豆の容器を片付けたときについたものだろう。
全部、全部俺の気のせい。きっと、猫様たちに癒されれば、不安なんて消えてしまうだろう。
スマホを拾い上げても、いつもと違う感触などはなかった。LINEもメッセージも何もおかしくはない。
やっぱり。
と、心の中で呟く。
そこで、手の中に納まっているスマホの時刻表示を見て、またしても俺はそれを落としそうになってしまった。もう、あと15分もしたら、兄ちゃんが朝飯を食う時間だ。
「ヤバっ」
慌てて、カウンターにスマホを置く。
心の奥に澱のようなものが蟠っている。言い訳して、説明して、理論で押さえつけていることに自分自身でも気付いていて、気付かないふりをしている。
それの名前を俺自身も知っていた。
不安。
けれど、俺は振り切るようにして、忙しいいつもの朝の時間に戻っていった。
-オ、0@p、オ、レ、v。イtr^jt
意味のない記号の羅列に、何故か背筋がぞっとして、思わずスマホを取り落とす。スマホが手から離れる刹那、糸を引くようなネバついた感触が指先に伝わってきた。反射的に自分の手に視線を移すが、そこにはいつも通りの自分の手があるだけで、何かが付いているようなことはなかった。
しゅぽん。
着信音にびくり。と、身体が反応する。けれど、今度は普通の着信音だ。
すまん。
犬にいじられた。
足元に落ちたスマホの画面に表示された言葉にほっとする。もちろん、スマホにも何かが付いているようなことはない。
安心すると、同時にこんなことくらいで怖がってしまった自分が恥ずかしくなってきた。五連勤最後の一日で疲れているのか、鈴のことで気が弱くなっているのか、理由はわからないけれど、意味もなくナーバスになっているみたいだ。
心霊番組を見てしまった後の子供みたいに、自分で不安を大きくしている自分がわかる。
「あー。も。今日は緑風堂行こ」
照れ隠しに、俺はわざと声を出して言った。
正直、同級会の夜のことはあまり覚えていない。確か、卒業後、あっていなかったメンバーとは、何人か交換したし、LINEグループもつくった。だから、戌井ともその時の流れで教えてもらったのを覚えていないだけなんだろう。
しかも、同級会で変なものを見たり、多分、同級会の時にいたのと同じと思われるやつに追いかけられたり、家まで付いてこられたり。兄ちゃんに鈴のことがバレたり反対されたり。戌井に鈴のことがバレたり、変なスタンプ送られたり。俺のキャパを超える出来事が起こりすぎた。
だから、戌井の平凡すぎる(失礼極まりない言い方だが)顔を覚えられなかったり、俺にとっては珍しくもない実体のないストーカーが家の前にいることくらいで、不安になっているんだ。
大体、さっきの生臭い匂いだって、朝飯に出そうと思っているニシンの匂いだ。指先のネバつきだって、気付かなかっただけで、洗って干してあった納豆の容器を片付けたときについたものだろう。
全部、全部俺の気のせい。きっと、猫様たちに癒されれば、不安なんて消えてしまうだろう。
スマホを拾い上げても、いつもと違う感触などはなかった。LINEもメッセージも何もおかしくはない。
やっぱり。
と、心の中で呟く。
そこで、手の中に納まっているスマホの時刻表示を見て、またしても俺はそれを落としそうになってしまった。もう、あと15分もしたら、兄ちゃんが朝飯を食う時間だ。
「ヤバっ」
慌てて、カウンターにスマホを置く。
心の奥に澱のようなものが蟠っている。言い訳して、説明して、理論で押さえつけていることに自分自身でも気付いていて、気付かないふりをしている。
それの名前を俺自身も知っていた。
不安。
けれど、俺は振り切るようにして、忙しいいつもの朝の時間に戻っていった。
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