真鍮とアイオライト 1

司書Y

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かの思想家が語るには

兄ちゃんバカだから 3

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「でもな。菫! 兄ちゃんは、あんな年下のチャラい大学生なんて認めん! お前は俺が一生養ってやるから、あれはやめとけ」

 せっかく納得しかかっていたのに、その兄ちゃんの言葉で、かちん。と、俺の心の中に鋭角な何かが投げ込まれた。聞き捨てならない。

「ちょっと待てよ。兄ちゃんに鈴君の何がわかってるって言うわけ? 鈴君はチャラくない! 年下だけど、すげえしっかりしてるし、大学だって真面目に通ってる。
 そりゃ俺は給料も少ないし、兄ちゃんの世話になってばっかだけど、それと鈴君のことはなんも関係ないだろ! 俺の好きな人のこと悪く言うのやめろよ」

 名誉のために言っておくが、俺は滅多なことでは家族に声を荒げるなんてことはない。男同士の兄弟だけれど、歳も離れているし喧嘩なんてほとんどしない。でも鈴のことをよく知りもしないで悪く言われるのは嫌だ。

「……やっぱり……す……惹かれているんだな」

 俺の発言をよっぽど認めたくなかったのか、兄ちゃんはす。で、一回止まって、首を横に振ってから言い直した。というか、今、俺、勢いで認めてしまっていなかっただろうか。いたよな。

「勘違いだと……思っていたかった。あんな……ガキに。俺の大事な菫が……」

 深夜、というには早いけれど、田舎の道には車は殆ど通らない。だからと言って、信号が青に変わっても全く走り出そうとしない車を後続車は放っておいてもくれない。パパ。と、短くなったクラクションに、それでも兄ちゃんは反応しなかった。諦めたのか、一台の車が俺たちの乗った車を追い越していく。

「……てか。今までだって、付き合った人いただろ。その時はなんも言わなかったのに、なんで、鈴君のことはそんなに否定するわけ? そりゃ、男の人好きとか兄ちゃんには……気持ち悪いかもだけど」

 さっき、男を好きなったっておかしくないと言っていたことに嘘はないと思う。けれど、俺が今まで女の子と付き合っても、兄ちゃんが何かを言ってきたことなんて一度もなかった。
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