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手紙
手紙 2
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拝啓
水瀬翡翠様。
初めてお便りさせていただきます。私の名は柳大路村正と申します。あなたの父親正兼の兄にあたります。
まず初めに。あなたに初めてご挨拶するのがこのような形になってしまったことをお詫びします。本来なら弟がいなくなった時点で無理にでもお会いすべきでした。けれど、弟から自分たちには関わるなと強く言われていたためにお会いする機会を作ることなく今頃になってしまいました。
いえ。弟に止められていたというのは言い訳にしかなりません。私は家の体裁を守るために、あなたを見捨てたのです。そのことについて、私はあなたにどう謝罪していいのか言葉すら見つかりません。本当に申し訳ありませんでした。
私どもの家、柳大路のことをあなたがご存知かどうかはわかりません。スレイヤーをしていたとお聞きしているので、名前くらいは聞き及んでいるかもしれません。柳大路はゲートキーパーを多く輩出する家柄です。お恥ずかしながら、六大家と呼ばれる名家の末席に名を連ねさせていただいております。
弟にはゲートキーパーの能力はありませんでした。両親もほかの兄弟と分け隔てなく接していましたし、彼には私やもう一人の兄以上のスレイヤーとしての才能がありましたが、三人の兄弟のうち一人だけゲートキーパーの力を持たずに生まれたことに、本人は劣等感を持っていたようでした。ですから、弟はスレイヤーの資格を得ると、すぐに家を出てしまったのです。もちろん、けんか別れをしたわけではありませんから、その頃は私とも両親とも頻繁に連絡は取っていましたし、実家に顔を出すことも少なくはありませんでした。
彼がスレイヤーとして中堅となったころ、ある依頼で中国地方の田舎町に行く機会があったそうです。依頼内容がどんなものだったのかは守秘義務があるため私にはわかりません。けれど、そこで、彼は、あなたのお母さんに出会いました。
あなたのお母さんは翠さんと言います。小柄でとても可愛らしい少女のような方でした。けれど、強い魔光の持ち主で、魔道系のスレイヤー資格をお持ちだったそうです。
二人の間にどんなことがあったのか、ゆっくりと聞く機会はありませんでしたが、二人はすぐに恋に落ちました。けれど、私の家族も、彼女の家族も彼らの交際を認めなかったのです。それは、二人が若いからという理由ではありません。
水瀬翡翠様。
初めてお便りさせていただきます。私の名は柳大路村正と申します。あなたの父親正兼の兄にあたります。
まず初めに。あなたに初めてご挨拶するのがこのような形になってしまったことをお詫びします。本来なら弟がいなくなった時点で無理にでもお会いすべきでした。けれど、弟から自分たちには関わるなと強く言われていたためにお会いする機会を作ることなく今頃になってしまいました。
いえ。弟に止められていたというのは言い訳にしかなりません。私は家の体裁を守るために、あなたを見捨てたのです。そのことについて、私はあなたにどう謝罪していいのか言葉すら見つかりません。本当に申し訳ありませんでした。
私どもの家、柳大路のことをあなたがご存知かどうかはわかりません。スレイヤーをしていたとお聞きしているので、名前くらいは聞き及んでいるかもしれません。柳大路はゲートキーパーを多く輩出する家柄です。お恥ずかしながら、六大家と呼ばれる名家の末席に名を連ねさせていただいております。
弟にはゲートキーパーの能力はありませんでした。両親もほかの兄弟と分け隔てなく接していましたし、彼には私やもう一人の兄以上のスレイヤーとしての才能がありましたが、三人の兄弟のうち一人だけゲートキーパーの力を持たずに生まれたことに、本人は劣等感を持っていたようでした。ですから、弟はスレイヤーの資格を得ると、すぐに家を出てしまったのです。もちろん、けんか別れをしたわけではありませんから、その頃は私とも両親とも頻繁に連絡は取っていましたし、実家に顔を出すことも少なくはありませんでした。
彼がスレイヤーとして中堅となったころ、ある依頼で中国地方の田舎町に行く機会があったそうです。依頼内容がどんなものだったのかは守秘義務があるため私にはわかりません。けれど、そこで、彼は、あなたのお母さんに出会いました。
あなたのお母さんは翠さんと言います。小柄でとても可愛らしい少女のような方でした。けれど、強い魔光の持ち主で、魔道系のスレイヤー資格をお持ちだったそうです。
二人の間にどんなことがあったのか、ゆっくりと聞く機会はありませんでしたが、二人はすぐに恋に落ちました。けれど、私の家族も、彼女の家族も彼らの交際を認めなかったのです。それは、二人が若いからという理由ではありません。
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