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はなびら
03-5
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翡翠の診察と検査を待っていた虎鉄と合流して、病院を出ようとした時にその電話がかかってきた。
「あ」
ディスプレイを確認すると、一青からだ。今日は仕事で現場に出ているはずだ。仕事の内容までは知らない。守秘義務があるのは分かっているから、翡翠も聞こうとはしないからだ。
電話がかかってきたということは、仕事が終わったということなのだろう。予想より早い。
虎徹の顔を見ると、翡翠の表情で相手が一青だと分かったのか、どうぞ。と、ジェスチャーで電話に出ることを促された。
「もしもし」
「翡翠か? 一青だけど。検査終わったか?」
明るい声に、仕事で問題が発生したわけではないことがわかる。
「うん。今、病院出るところ」
「ちょうどよかった。仕事、思ったより早く終わったから、そっち向かってる。すぐ行くから、待ってて」
「え? 来れるの? あ。でも、こっちからも、そっちに向かうよ。えと。確か、病院前の道を南だったよな?」
「検査で疲れてるんじゃないか?」
「現場に出てた人より疲れてるわけないだろ」
「じゃあ、急いでいくから、こっち向かってくれるか?」
「うん。じゃ、後で」
そんな会話をして、電話を切る。終わるのを待っていた虎鉄は翡翠の言葉だけで内容を理解したらしい。電話を切るとすぐに『行こう』と、促してくれた。
「予定変わってごめん」
隣に並んで歩く虎鉄に話しかける。
「いや。構わない」
基本的に彼は必要なこと以外はあまりしゃべらない。時々、怒らせてしまったのではないかと心配になることがあるけれど、本人はいたって平常運転で、全く気分を害していることはないらしかった。というのも、隼人の談なので、本当かどうかは分からない。
「翡翠は一青といたほうがいい」
これも、嫌味でも何でもない。虎鉄は本当にそう思っているだけなのだ。けれど、それが、ゲートはゲートキーパーと一緒にいるのが一番安定しているだろう。と、いう意味なのか、恋人同士は一緒にいたいもんだろ。と、いう意味なのかよく分からない。わからないけれど、彼は彼なりに翡翠のことをただの仕事としての警護対象としてだけ見ているわけでないことは、なんとなく感じる。大雑把な隼人と違って、彼の配慮の仕方は細やかだからだ。
「一青と合流したら、俺は先に帰っているから、何かあったらすぐ連絡してくれ」
虎徹の言葉に翡翠は頷いた。虎徹が一緒に行動するのに問題はないけれど、きっと、一青は複雑な顔をするだろう。翡翠も、彼が邪魔だとは思わないけれど、やっぱり、二人きりの時間が好きだ。
そんなことを話しながら歩いていくと、すぐに一青の感覚が近づいてくるのが分かるようになった。
「一青だ」
そう口に出すと、虎鉄が立ち止まって、翡翠を見る。それから、翡翠が見ている方角を見やった。真っすぐな道だから、もう、一青の姿は視認できる。
嬉しくて、早足になるのは止められない。一青も同じようだった。立ち止まった虎鉄を残して、翡翠は一青に駆け寄った。
「一青」
触れられる距離まで近づくと、翡翠はその名前を呼ぶ。
「翡翠。ただいま」
昨日とは逆に、家でもないのに一青が言った。それがおかしくて、翡翠が笑う。
「おかえり」
返事を返して振り返ると、やはり、と言うべきだろうか、虎鉄の姿はなくなっていた。二人が合流したのを見届けて、帰ったのだろう。ありがとう。と、口の中で呟いて、翡翠は一青に視線を戻した。
「あ」
ディスプレイを確認すると、一青からだ。今日は仕事で現場に出ているはずだ。仕事の内容までは知らない。守秘義務があるのは分かっているから、翡翠も聞こうとはしないからだ。
電話がかかってきたということは、仕事が終わったということなのだろう。予想より早い。
虎徹の顔を見ると、翡翠の表情で相手が一青だと分かったのか、どうぞ。と、ジェスチャーで電話に出ることを促された。
「もしもし」
「翡翠か? 一青だけど。検査終わったか?」
明るい声に、仕事で問題が発生したわけではないことがわかる。
「うん。今、病院出るところ」
「ちょうどよかった。仕事、思ったより早く終わったから、そっち向かってる。すぐ行くから、待ってて」
「え? 来れるの? あ。でも、こっちからも、そっちに向かうよ。えと。確か、病院前の道を南だったよな?」
「検査で疲れてるんじゃないか?」
「現場に出てた人より疲れてるわけないだろ」
「じゃあ、急いでいくから、こっち向かってくれるか?」
「うん。じゃ、後で」
そんな会話をして、電話を切る。終わるのを待っていた虎鉄は翡翠の言葉だけで内容を理解したらしい。電話を切るとすぐに『行こう』と、促してくれた。
「予定変わってごめん」
隣に並んで歩く虎鉄に話しかける。
「いや。構わない」
基本的に彼は必要なこと以外はあまりしゃべらない。時々、怒らせてしまったのではないかと心配になることがあるけれど、本人はいたって平常運転で、全く気分を害していることはないらしかった。というのも、隼人の談なので、本当かどうかは分からない。
「翡翠は一青といたほうがいい」
これも、嫌味でも何でもない。虎鉄は本当にそう思っているだけなのだ。けれど、それが、ゲートはゲートキーパーと一緒にいるのが一番安定しているだろう。と、いう意味なのか、恋人同士は一緒にいたいもんだろ。と、いう意味なのかよく分からない。わからないけれど、彼は彼なりに翡翠のことをただの仕事としての警護対象としてだけ見ているわけでないことは、なんとなく感じる。大雑把な隼人と違って、彼の配慮の仕方は細やかだからだ。
「一青と合流したら、俺は先に帰っているから、何かあったらすぐ連絡してくれ」
虎徹の言葉に翡翠は頷いた。虎徹が一緒に行動するのに問題はないけれど、きっと、一青は複雑な顔をするだろう。翡翠も、彼が邪魔だとは思わないけれど、やっぱり、二人きりの時間が好きだ。
そんなことを話しながら歩いていくと、すぐに一青の感覚が近づいてくるのが分かるようになった。
「一青だ」
そう口に出すと、虎鉄が立ち止まって、翡翠を見る。それから、翡翠が見ている方角を見やった。真っすぐな道だから、もう、一青の姿は視認できる。
嬉しくて、早足になるのは止められない。一青も同じようだった。立ち止まった虎鉄を残して、翡翠は一青に駆け寄った。
「一青」
触れられる距離まで近づくと、翡翠はその名前を呼ぶ。
「翡翠。ただいま」
昨日とは逆に、家でもないのに一青が言った。それがおかしくて、翡翠が笑う。
「おかえり」
返事を返して振り返ると、やはり、と言うべきだろうか、虎鉄の姿はなくなっていた。二人が合流したのを見届けて、帰ったのだろう。ありがとう。と、口の中で呟いて、翡翠は一青に視線を戻した。
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