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短編集 【L'Oiseau bleu】
遠きに在るものでなく、直ぐ其処の日常に 7
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そっ。と、力を込めて、ソファに横たえられる。
「触っていい?」
耳元に一青が囁く。完全に夜の雰囲気を纏った声だ。
「……い……いけど……」
それが、すごく艶っぽくて思わずしどろもどろになってしまった。
翡翠の返事を待ってから、大きな手が夜着の上から肩を撫でる。それから、鎖骨のあたりへ。ゆっくり、ゆっくりとした動作で手が動く。そのさまを翡翠はじっと見ていた。そしてその翡翠を一青は見ていた。
胸元まで進んで、動きが止まる。薄い布越しに指先がそこに触れた。
「……あ」
期待。していたからだろうか、そんな微かな感触で声が漏れてしまった。それが堪らなく恥ずかしくて顔が赤らむ。
「ここ?」
くる。と、指先が円を描く。けれど、小さなふくらみには触れない。
じれったい。
「ここ。どうしてほしい?」
弄ぶように、焦らすように、周りばかり触られて、まだ、そこには触っていないのに、ぷくり。と、そこが主張を始めるのがわかる。そんな場所。元々感じるような場所ではないはずなのに、触ってほしくて堪らない気持ちになってしまった。
「……さ……わって」
声は震えて、掠れて、消える。
言ってしまってから恥ずかしくて、恥ずかしくて、翡翠は顔を真っ赤にして精一杯一青から顔を逸らした。
「その顔。すげえ可愛い」
ため息のような吐息交じりの一青の声。同時にその小さな突起をかり。と、指先が掻いた。
「……あ」
二度。三度。何度も繰り返し、弾くように一青の指先がそこを往復する。それから、きゅ。と、服の上から少し強めに抓まれる。
「……んっ。ふ」
途端にぴり。と、何かが湧き上がって、思わず。鼻から抜けるような声が漏れた。鼻にかかった子猫のような甘ったるい声。それが自分の声だと信じられない気持ちになる。
「あ……一青……ま……って」
堪らなく恥ずかしくなって、翡翠は思わず身体を弄っていた一青の手に自分の手を重ねた。
女性ではあるまいし、本当なら、そんな場所で気持ちよくなるはずがない。と。思う。けれど、一青の指が触れていると思うことだけで、身体の奥にある何かが引っ張り出されているのが分かった。要するに感じているのだ。
無理矢理に男の相手をさせられている時には気付かなかった。否、そんな場所を触られて気持ちいなんて思ったことはない。大体、一青のように丁寧に翡翠を扱ってくれる人など誰もいなかった。
「……俺。……っあ」
待ってほしいと懇願したはずなのに、一青はそれを聞き入れてはくれない。聞こえていないわけではないはずなのに無視している。無視して何度も、何度もその指先が抓んだそれを刺激してきた。
気持ちいい。
と。素直に思う。
思うと、今度は少し物足りなくなる。もっと、強い刺激が欲しい。
「あ。や……ん」
甘くなってしまった声はもう隠しようがなかった。いや。隠す必要などないのだと、思う。一青がくれるものを素直に受け取って、蕩けて溺れてしまってもいいのだ。
「翡翠」
耳元で囁かれて、翡翠はびくり。と、身体を竦ませた。その吐息が熱くて、まるで脳に直接触れられたような感覚に襲われたからだ。
「……な……に? んっ。あ」
問い返すわずかな隙間も、一青の指は止まってはくれない。ずっと、くりくり。と、緩くそこを刺激され続けて、もう、そこは服越しに分かるくらいにぷくり。と、立ち上がっていた。
ぐい。と、不意に一青の手が夜着の裾をまくり上げる。露になった肌は日に焼けることもなく、生来のままに白い。その肌に花が咲くように色づく胸の突起は小さく快感を主張していた。
「……あ」
夜気に晒され翡翠の肩がふる。と、小さく震える。
その初々しい反応に一青は目を細めて、優しく、けれど、しっとりと濡れた欲を秘めた笑みを浮かべた。
「可愛い。翡翠。もっと、気持ちよくなりたい?」
青い瞳がじっと見ている。
答えなんて決まっていた。
ただ、素直になるには少しだけ、理性が邪魔をする。
「……なんで? どし……てそんなこと。聞くんだよ……ぉ」
気持ちよくなりたい。けれど、今更かもしれないけれど、そんなはしたない自分は見られたくない。
こんなふうに欲しくなってしまうのは相手が一青だからだけれど、少し触られたくらいですぐに誰彼構わず欲情するような浅ましい身体だと思われたくない。
高ぶった身体と、切ない心の板挟みになって、一青の目を見ていられなくなって、ぎゅ。と、目を閉じると、瞳の端からぽろ。と、涙が零れた。
「触っていい?」
耳元に一青が囁く。完全に夜の雰囲気を纏った声だ。
「……い……いけど……」
それが、すごく艶っぽくて思わずしどろもどろになってしまった。
翡翠の返事を待ってから、大きな手が夜着の上から肩を撫でる。それから、鎖骨のあたりへ。ゆっくり、ゆっくりとした動作で手が動く。そのさまを翡翠はじっと見ていた。そしてその翡翠を一青は見ていた。
胸元まで進んで、動きが止まる。薄い布越しに指先がそこに触れた。
「……あ」
期待。していたからだろうか、そんな微かな感触で声が漏れてしまった。それが堪らなく恥ずかしくて顔が赤らむ。
「ここ?」
くる。と、指先が円を描く。けれど、小さなふくらみには触れない。
じれったい。
「ここ。どうしてほしい?」
弄ぶように、焦らすように、周りばかり触られて、まだ、そこには触っていないのに、ぷくり。と、そこが主張を始めるのがわかる。そんな場所。元々感じるような場所ではないはずなのに、触ってほしくて堪らない気持ちになってしまった。
「……さ……わって」
声は震えて、掠れて、消える。
言ってしまってから恥ずかしくて、恥ずかしくて、翡翠は顔を真っ赤にして精一杯一青から顔を逸らした。
「その顔。すげえ可愛い」
ため息のような吐息交じりの一青の声。同時にその小さな突起をかり。と、指先が掻いた。
「……あ」
二度。三度。何度も繰り返し、弾くように一青の指先がそこを往復する。それから、きゅ。と、服の上から少し強めに抓まれる。
「……んっ。ふ」
途端にぴり。と、何かが湧き上がって、思わず。鼻から抜けるような声が漏れた。鼻にかかった子猫のような甘ったるい声。それが自分の声だと信じられない気持ちになる。
「あ……一青……ま……って」
堪らなく恥ずかしくなって、翡翠は思わず身体を弄っていた一青の手に自分の手を重ねた。
女性ではあるまいし、本当なら、そんな場所で気持ちよくなるはずがない。と。思う。けれど、一青の指が触れていると思うことだけで、身体の奥にある何かが引っ張り出されているのが分かった。要するに感じているのだ。
無理矢理に男の相手をさせられている時には気付かなかった。否、そんな場所を触られて気持ちいなんて思ったことはない。大体、一青のように丁寧に翡翠を扱ってくれる人など誰もいなかった。
「……俺。……っあ」
待ってほしいと懇願したはずなのに、一青はそれを聞き入れてはくれない。聞こえていないわけではないはずなのに無視している。無視して何度も、何度もその指先が抓んだそれを刺激してきた。
気持ちいい。
と。素直に思う。
思うと、今度は少し物足りなくなる。もっと、強い刺激が欲しい。
「あ。や……ん」
甘くなってしまった声はもう隠しようがなかった。いや。隠す必要などないのだと、思う。一青がくれるものを素直に受け取って、蕩けて溺れてしまってもいいのだ。
「翡翠」
耳元で囁かれて、翡翠はびくり。と、身体を竦ませた。その吐息が熱くて、まるで脳に直接触れられたような感覚に襲われたからだ。
「……な……に? んっ。あ」
問い返すわずかな隙間も、一青の指は止まってはくれない。ずっと、くりくり。と、緩くそこを刺激され続けて、もう、そこは服越しに分かるくらいにぷくり。と、立ち上がっていた。
ぐい。と、不意に一青の手が夜着の裾をまくり上げる。露になった肌は日に焼けることもなく、生来のままに白い。その肌に花が咲くように色づく胸の突起は小さく快感を主張していた。
「……あ」
夜気に晒され翡翠の肩がふる。と、小さく震える。
その初々しい反応に一青は目を細めて、優しく、けれど、しっとりと濡れた欲を秘めた笑みを浮かべた。
「可愛い。翡翠。もっと、気持ちよくなりたい?」
青い瞳がじっと見ている。
答えなんて決まっていた。
ただ、素直になるには少しだけ、理性が邪魔をする。
「……なんで? どし……てそんなこと。聞くんだよ……ぉ」
気持ちよくなりたい。けれど、今更かもしれないけれど、そんなはしたない自分は見られたくない。
こんなふうに欲しくなってしまうのは相手が一青だからだけれど、少し触られたくらいですぐに誰彼構わず欲情するような浅ましい身体だと思われたくない。
高ぶった身体と、切ない心の板挟みになって、一青の目を見ていられなくなって、ぎゅ。と、目を閉じると、瞳の端からぽろ。と、涙が零れた。
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