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The Ugly Duckling

Epiloge Not swan,But kingfisher 7/16

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「それで? さっきから気になっていたんだが……扉をつけたというのに、どうして、また魔光が溜まっているんだ?」

 だから、大泉の言葉に翡翠はきょとんと呆けてしまった。

「え?」

 ゲートキーパーが扉をつけるとことで、ゲートから排出される魔光や魔昏は完全に遮断できる。だから、今翡翠の中にある魔光は翡翠が生来持っている翡翠自身の魔光のはずだ。

「あれ?」

 けれど、精神を集中してみると、おかしなことに気付いた。
 魔光を生み出すことができる普通の“魔光持ち”は、時間をかけてその体内で魔光を作り出す。それは、魔法を使うことで消費されるが、放っておけばまた少しずつ回復していく。けれど、個人差はあるが人間が持てる魔光の量には制限がある。その最大限持てる魔光の量や、回復の速さがその人間の魔道の能力とされる。
 しかし、ゲートの魔光だけはその制約を受けない。だからこそ、ゲートはワイルドカードのような扱いなのだ。
 ゲートキーパーに扉をつけられると、排出される魔光の量をゲート自身が調節することはできなくなるのだが、その代わりに体内に溜めた魔光をゲートの意志で他人に譲渡したり、魔法に使用したりできるようになる。
 ゲートの意志によって行われる魔光の譲渡には上限がない。あまり多すぎると渡された相手が魔光酔いを起こすこともあるのだが、短時間で大量の魔光を受け渡しすることが可能だ。
 もちろん、ゲート自身にもその体内に魔光を蓄積しておける量には限りがある。普通の人間に比べて、その量は桁違いに多いのだが、溢れてしまうと周囲全部に魔光を撒き散らして、魔光酔いを誘発することもある。
 と、長々と書いてきたのだが、翡翠が気付いたのは、自分の中に溜まっている魔光の量が明らかにさっきより多くなっているということだった。
 いくら翡翠の魔道の能力が高いと言っても、溜まるのが早い気がする。

「ん。それなんだけど……翡翠のゲートは長いこと吸魔の十三をかけられていたせいで、形が歪んでる。普通に扉をつけると、どうしても隙間ができるんだ。変形した扉をつけることもできるけど、ゲートが元の形に戻ろうとするのを邪魔しちまうからな。ゲートには自己治癒力が備わってるから、ゆっくりとではあるけど元の形に戻るはずだ。だから、しばらくは隙間から魔光が零れるのは我慢してほしい」

 少しすまなそうに言う一青に翡翠は微笑みを返した。

「大丈夫。吸魔の十三と違って、自分で魔光使えるし」

 翡翠の笑顔に一青がほっとしたように笑う。

「これは、想像なんだけど……吸魔の十三だから翡翠のゲートが歪んでたわけじゃないと思う。久米木って男は相当に高い能力を持った術者だ。だから、おそらくはわざと歪んだ吸魔の十三をかけたままにしておいたんじゃないかと俺は思う。
 活性化して吸魔の十三をかけられた後も、おそらくは翡翠のゲートは成長を続けてた。それを元の大きさのままの吸魔の十三で無理矢理成長を止めてたんだと思う。だから、歪んで零れる魔光の量が多かったんだ。俺たちゲートキーパーの扉と同じように、ヤツらの吸魔の呪いにも大きさに限界がある。巨大化した翡翠のゲートに吸魔の呪いが追い付かなくなるのを恐れたんじゃないかな」

 そこまで言って、一青はため息を漏らす。

「あくまで、想像だけどな。
翡翠のゲートは今は安定して成長は止まってるけど、ゲートが活性化したときは多分中-くらいの大きさだったんだろ。箱根ゲートと同じくらい。でも、吸魔の十三を外した今は中規模ゲートになってる。このドームの電源を賄ってる江の島ゲートと、同じくらいの大きさだ。
 翡翠のゲートは、人型ゲートの中では、国内では最も大きい。もしかしたら、世界最大の可能性もある。これだけの規模を持っていて、翡翠の身体に障害が出ないのは殆ど奇蹟に近いと思う」

 その表情は複雑そうだった。
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