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The Ugly Duckling

Epiloge Not swan,But kingfisher 6/16

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「でも。昨日の電話聞いてたならわかるだろ? 俺はちゃんと断ったよ。成願寺の籍に入るつもりなんてない。俺は鏑木一青として翡翠と結婚したい。それだけ。
 ただ……」

 成願寺のことに関して、一青は一片も迷いがないらしかった。緋色からもらった姓に誇りを持っているのだろうと思う。けれど、“ただ”のあと、少し彼は言い淀んだ。

「籍を入れるのは……紅二がスレイヤーの試験に合格するまでは待ってほしい」

 一青は躊躇いがちに言い淀んだのだけれど、続いた言葉に翡翠は安堵した。彼が心配しているのが、紅二のことなら、当たり前のことなのだ。

「あいつはさ。あんまり両親と過ごした記憶がない。だから、スレイヤー試験に合格して、大人と認められるまでは、家族として俺を一人占めさせてやりたい」

 その一青の優しい表情に翡翠はまた、一青に惚れ直していた。言葉にならないくらいにカッコイイと思う。

「あ。って言っても、同居のことは紅二にもちゃんと同意取ってるから、そのままうちに住んで? てか、多分……籍が入ってなくても、恋人としては……その。なんも変わんないと思うけど」

 ごにょごにょと呟くように一青が言った。きっとそのごにょごにょには、いちゃいちゃ一緒に飯を作ったり、休みの日にはごろごろだらだらと戯れ合ったり、同棲中の恋人同士なら当然あるべきエッロいことも含まれているのだろう。

「俺は構わないよ。てか、別に籍入れなくてもいいし。その。一青の扉はここにちゃんとあるから。俺はそれで充分」

 下腹のあたりにそっと触れて、翡翠は言った。書類一枚で繋がったり離れてしまったりする制度よりも、翡翠にとって大切なのは、自分が一青のゲートなのだと感じられるこの扉だった。もちろん、籍を入れたくないはずがないけれど、ほんの数年待てないことなんてない。

「翡翠。……マジで……そんな可愛いこと言って煽らないで? 茂さんが翡翠に惚れちゃったらどうすんの?」

 ちらり。と、大泉の顔を見てから、一青が言う。二人の会話を邪魔しないようにして聞いていた大泉は両手を広げてため息をついていた。

「確かに翡翠君は可愛らしいが……和臣には負ける。
 まあ、籍のことは二人で充分に話し合いなさい。時間はいくらでもあるからな」

 時間はいくらでもある。という言葉が翡翠には嬉しかった。一青とずっと一緒にいていいと許されているような気がして、笑顔がこぼれる。
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