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The Ugly Duckling
Epiloge Not swan,But kingfisher 5/16
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「それで、籍はいつ入れるんだ? 和臣が立会人をすると意気込んでいたぞ」
いきなりそんなことに話を振られて、翡翠は大泉を見て固まった。昨夜の電話のことが思い出される。一青が自分を好きでいてくれるのはわかっているけれど、一青の家柄のことを考えると、結婚を許して貰える気はしなかった。
「和臣さん気がはえーな」
一青が苦笑する。苦笑はしているけれど、決して嫌そうではない。
「まだ、そんなこと話し合ってもいないけど……翡翠。籍を入れるのは、少し待ってもらっていいか?」
けれど、意外にも一青はもう、籍を入れることを前提に話をしているようだった。
「……え? あの……結婚とか……本当にできんの?」
躊躇いがちに問い返すと、一青がきょとんとしている。
「え? やだった? 伴侶になるってそいうことじゃねーの?」
焦ったように一青がたずねてくる。もちろん翡翠だってそのつもりではあるけれど、そんなに簡単な話なのだろうか。
「……や。俺は、もちろん、したいけど……俺みたいなのが……一青の相手なんて、成願寺さんが……」
そこまで言ったところで、いきなり一青が、がしっ。と、翡翠の両肩を掴んで、一青の方向に向かされた。
「翡翠と結婚するのは俺。親父は関係ねー。俺はもう成人してるし、文句言われる筋合いなんてない」
少し怒ったように眉を寄せて一青が言った。なんだかすごくムキになっているような気がする。たぶん、国政の名前を出されたのが気に入らないのだ。
「でも一青は籍を入れる気がないんだって。昨夜……あ」
思わず口を滑らせて翡翠ははっとして口を押えた。
「昨夜? あ。電話のとき、やっぱり起きてたのか?」
少し驚いた顔をしてから、一青は苦笑した。
「ごめん。盗み聞きする気なんてなかったんだけど……声かけられなくて」
すごく罰が悪い。盗み聞きしていたかどうかは別にして、聞いていたことを言わなかったのは、故意なのだ。
「別にいいよ。聞かれて困ることなんて言ってねーし。
あれは、渉の爺様の光成さんから。
昔から会うたびに、散々、緋色のことばかにして、俺が成願寺に相応しくないとか言ってたくせに、人型ゲートのゲートキーパーになれそうだってわかった途端に、成願寺の籍に入れとかわいれてさ。も、腹立って。
翡翠にはちょっとわからないかもしれないけど、ゲートキーパーにとっては、人型ゲートに選ばれるってのはすごく栄誉あることなんだ。ゲートキーパーとしての能力に太鼓判押してもらったみたいな?
親父と緋色の子供は俺と紅二だけだけど、聖子さんとの間にあと4人兄弟がいて、三男の重政ってのがゲートキーパーだから、公式には跡継ぎってことになってる。にもかかわらず、人型ゲートのゲートキーパーが成願寺の跡継ぎに相応しいって思ったらしい。あほくさいけどな」
そこまで話して一青はため息を吐いた。翡翠が思っている以上に一青と成願寺家の間にはいろいろな確執があるようだ。ただ、父である国政と疎遠にしているという以上の何かがあったのだろう。
「俺だって。翡翠に選んでもらったことは誇らしい。いろんな人に自慢したいけど……それは翡翠がゲートだからじゃない。だから、翡翠のプライバシーを守るためなら、ゲートだってことは、別に誰にも言えなくてもいい。ただ、翡翠が俺の恋人だってことは隠すつもりはまったくないから。
でも、爺にはそうじゃなかったらしい……」
爺といったときの顔が何だかすごく憎々し気に見えた。だから、翡翠はその手をぎゅ。と、握る。そうすると一青はその手に気付いて笑ってくれた。
「あの爺、人が呪いを解く方法で悩んでるときに、呪いだけ別の術者に解かせればいいとか、言ってくるし。そんで、さっさと契約して翡翠を連れて成願寺の家に来いとか。翡翠を成願寺の専属のゲートにしろとか。その上、翡翠以外に嫁貰って子供作れとか言われて、も。マジで切れた。
光成さんは俺から見たら祖父に当たる成願寺成政って人の執事をしていたんだけど、成政じいさんが親父を甘やかしたから、男に走ったとか思ってるらしくて。
光成さんの息子の久則さんは親父の親友で、すげーいい人だし、緋色のことも応援したり守ったりしてくれてたんだけど、渉は爺そっくりなんだよ。俺のことを甘やかさずに跡継ぎとして相応しいゲートキーパーに育てろとか言われてるらしい。親父は成願寺の跡継ぎは重政だって言いきってるのにききゃーしねー」
一青の言葉に、翡翠は混乱した。一青は結婚するのは自分だ。と言い切っていたけれど、家庭環境が複雑すぎる。出てきた名前を覚えるのがやっとだ。
大体、執事がいる家ってどんなだよ。と、心の中で突っ込みを入れたくなってしまう。しかも、代々仕えてる執事がいるレベルのご家庭なんて、恐らく日本中を探してもそんなにあるわけではないと思う。
そんな一青と自分が本当に結婚なんてできるんだろうか。
いきなりそんなことに話を振られて、翡翠は大泉を見て固まった。昨夜の電話のことが思い出される。一青が自分を好きでいてくれるのはわかっているけれど、一青の家柄のことを考えると、結婚を許して貰える気はしなかった。
「和臣さん気がはえーな」
一青が苦笑する。苦笑はしているけれど、決して嫌そうではない。
「まだ、そんなこと話し合ってもいないけど……翡翠。籍を入れるのは、少し待ってもらっていいか?」
けれど、意外にも一青はもう、籍を入れることを前提に話をしているようだった。
「……え? あの……結婚とか……本当にできんの?」
躊躇いがちに問い返すと、一青がきょとんとしている。
「え? やだった? 伴侶になるってそいうことじゃねーの?」
焦ったように一青がたずねてくる。もちろん翡翠だってそのつもりではあるけれど、そんなに簡単な話なのだろうか。
「……や。俺は、もちろん、したいけど……俺みたいなのが……一青の相手なんて、成願寺さんが……」
そこまで言ったところで、いきなり一青が、がしっ。と、翡翠の両肩を掴んで、一青の方向に向かされた。
「翡翠と結婚するのは俺。親父は関係ねー。俺はもう成人してるし、文句言われる筋合いなんてない」
少し怒ったように眉を寄せて一青が言った。なんだかすごくムキになっているような気がする。たぶん、国政の名前を出されたのが気に入らないのだ。
「でも一青は籍を入れる気がないんだって。昨夜……あ」
思わず口を滑らせて翡翠ははっとして口を押えた。
「昨夜? あ。電話のとき、やっぱり起きてたのか?」
少し驚いた顔をしてから、一青は苦笑した。
「ごめん。盗み聞きする気なんてなかったんだけど……声かけられなくて」
すごく罰が悪い。盗み聞きしていたかどうかは別にして、聞いていたことを言わなかったのは、故意なのだ。
「別にいいよ。聞かれて困ることなんて言ってねーし。
あれは、渉の爺様の光成さんから。
昔から会うたびに、散々、緋色のことばかにして、俺が成願寺に相応しくないとか言ってたくせに、人型ゲートのゲートキーパーになれそうだってわかった途端に、成願寺の籍に入れとかわいれてさ。も、腹立って。
翡翠にはちょっとわからないかもしれないけど、ゲートキーパーにとっては、人型ゲートに選ばれるってのはすごく栄誉あることなんだ。ゲートキーパーとしての能力に太鼓判押してもらったみたいな?
親父と緋色の子供は俺と紅二だけだけど、聖子さんとの間にあと4人兄弟がいて、三男の重政ってのがゲートキーパーだから、公式には跡継ぎってことになってる。にもかかわらず、人型ゲートのゲートキーパーが成願寺の跡継ぎに相応しいって思ったらしい。あほくさいけどな」
そこまで話して一青はため息を吐いた。翡翠が思っている以上に一青と成願寺家の間にはいろいろな確執があるようだ。ただ、父である国政と疎遠にしているという以上の何かがあったのだろう。
「俺だって。翡翠に選んでもらったことは誇らしい。いろんな人に自慢したいけど……それは翡翠がゲートだからじゃない。だから、翡翠のプライバシーを守るためなら、ゲートだってことは、別に誰にも言えなくてもいい。ただ、翡翠が俺の恋人だってことは隠すつもりはまったくないから。
でも、爺にはそうじゃなかったらしい……」
爺といったときの顔が何だかすごく憎々し気に見えた。だから、翡翠はその手をぎゅ。と、握る。そうすると一青はその手に気付いて笑ってくれた。
「あの爺、人が呪いを解く方法で悩んでるときに、呪いだけ別の術者に解かせればいいとか、言ってくるし。そんで、さっさと契約して翡翠を連れて成願寺の家に来いとか。翡翠を成願寺の専属のゲートにしろとか。その上、翡翠以外に嫁貰って子供作れとか言われて、も。マジで切れた。
光成さんは俺から見たら祖父に当たる成願寺成政って人の執事をしていたんだけど、成政じいさんが親父を甘やかしたから、男に走ったとか思ってるらしくて。
光成さんの息子の久則さんは親父の親友で、すげーいい人だし、緋色のことも応援したり守ったりしてくれてたんだけど、渉は爺そっくりなんだよ。俺のことを甘やかさずに跡継ぎとして相応しいゲートキーパーに育てろとか言われてるらしい。親父は成願寺の跡継ぎは重政だって言いきってるのにききゃーしねー」
一青の言葉に、翡翠は混乱した。一青は結婚するのは自分だ。と言い切っていたけれど、家庭環境が複雑すぎる。出てきた名前を覚えるのがやっとだ。
大体、執事がいる家ってどんなだよ。と、心の中で突っ込みを入れたくなってしまう。しかも、代々仕えてる執事がいるレベルのご家庭なんて、恐らく日本中を探してもそんなにあるわけではないと思う。
そんな一青と自分が本当に結婚なんてできるんだろうか。
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