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The Ugly Duckling
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よかった。
翡翠は思う。
一青を裏切るようなことをしなくてよかった。
自分を抱いてくれているのが一青でよかった。
「……あっ。は……あん。いっ……せい……。きもち……い……すご……っ」
快楽に蕩けた瞳で一青を見上げると、一青は眉を寄せて痛みに耐えるみたいな表情をしていた。
気持ちよくはないのだろうか。心配になる。自分の感じている快楽を一青にも感じてほしい。もちろん、身体だけではない。心もだ。
「いっ……せい? 一青……ね……? 俺……きもち……い? いっせい……いい?」
抱きしめたいけれど、拘束されている腕ではそれもできなくて、問いかけると、一青の視線が翡翠をとらえる。
「ん。すげーいい。ヤバい。俺……翡翠が好きだ……とまらねえ」
余裕なくそう言って一青は両手を放してくれた。そのままぎゅ。と、抱きしめられて、抱きしめられたまま、何度も奥を突かれる。
「……ぁあっ。あっ。あっ。……気持ち……いい……っいっせい……俺……っ。こんなの……はじめて……っ」
もしかしたら、それも呪いだったのかもしれない。激しくなっていく抽挿にいっぱいになってしまった頭の片隅で、ふと思う。
誰も本気で好きになったことなんてない。誰としたセックスもこんなに気持ちよくはなかった。
一青だから、一青がいてくれたから、自分の呪いは解けたのだ。
「一青……っ。一青。好き……好きだ。一青……っ」
心も身体も高まって、ばかみたいにその名前と、言葉しか出ては来なかった。一青に揺さぶられるまま身体も心も預けて、高められていくのが堪らなく心地よかった。
「俺も……俺も好きだよ。翡翠。愛してる。っ……あ……出すよ? 受け止めて」
余裕のない一青の声が耳元に聞こえる。それから、ぐん。と、最奥を穿って、一青はそこに熱い精を放った。
「……ぁ……あ」
びくん。びくん。と、ソコに熱いものを感じる。そんなものは分かるはずがないと言われるかもしれない。けれど、わかる。一青が自分の中で絶頂を迎えたのだ。そう思うだけで、堪らなくなって、翡翠も一青を胎内に感じたままイった。
「……いっ……せぇ」
何故か涙が溢れる。
たぶん、嬉しいのだ。
愛している人に、愛されていると分かるのが、身体の快感よりももっと気持ちがいいのだ。
だから、涙が零れる。
「ひ……すい」
荒く肩で息をしながら、一青は髪を撫でてくれた。その感触に翡翠はうっとりと目を細める。
「契約……するよ」
ふう。と、大きく息を吐いて、一青は真剣な顔に変わる。その顔も、信じられないくらいにセクシーだった。だから、翡翠も小さく頷いて答える。
「誓約……海より出でて、雲になりて、雨粒と落ち、集まりて還れ。
竜神の子の内にある因子。人を形作るもの。命を育むもの。その名に誓う。
我、いかなる時も、若葉の風の天に還るときまで、これを主とし、守り、称え、仕える成りと」
低い声で呟くように一青が詠唱をする。一青の言葉が魔道文字となって、きらきらと光って、翡翠の周りをまわっている。まるで夢みたいに綺麗で、翡翠はそれに見惚れていた。
「翡翠」
そ。と、翡翠の下腹部。ちょうど、その奥にゲートのあるあたりに触れて、一青に名前を呼ばれる。
「はい」
翡翠は答えた。とても、厳粛な気持ちだった。きっと、ヴァージンロードに立つ花嫁はこんな気持ちになるのではないだろうか。
「誓って」
一青の言葉に、翡翠は翡翠のゲートに触れる一青の手に自分の手を重ねた。
「俺は……一青だけのゲートになる。一青だけの伴侶になる。ずっと、ずっと、死ぬまで一青のこと……愛してる」
翡翠が言うと、彼の周りを舞っていた文字が色づいていく。透明だったものが、青く、それから翠に。そして、それは、吸い込まれるように二人が手を重ねた部分の翡翠の腹に入っていった。
眩しいくらいの光が部屋を包む。
「ありがとう。翡翠。俺も、愛してる」
一青の声が聞こえる。だから、翡翠は重ねていた一青の手をぎゅ。と、握りしめた。
「うん」
しばらく、そうしていると、次第に光は治まって、代わりに翡翠の腹に薄く桜色の魔道文字が浮かんできた。
「ごめんな。これは、消えない。落ち着いたらもう少し見えにくくはなるけど、約款だから」
そう言ってから、一青は翡翠をぎゅ。と、強く抱きしめた。
「これで、契約は完了だ。翡翠のゲートはもう、魔力崩壊するような心配はないよ。わかるか?」
抱きしめたままの耳元に囁くように一青が続ける。
身体の奥に川が流れている。それは分かるけれど、それは扉の向こうになって、静かな水音だけが聞こえてくる。そんな感じだった。
「ん。静かだ」
一青の背中に腕を回して、翡翠は答えた。
気分が悪くなるほどの濃厚な魔光の気配も、鎖で無理矢理吸い出し口をつけられたような違和感も、力を奪われ続ける脱力感もない。
ただ、静かで心地よいせせらぎの音が聞こえるだけだった。
翡翠は思う。
一青を裏切るようなことをしなくてよかった。
自分を抱いてくれているのが一青でよかった。
「……あっ。は……あん。いっ……せい……。きもち……い……すご……っ」
快楽に蕩けた瞳で一青を見上げると、一青は眉を寄せて痛みに耐えるみたいな表情をしていた。
気持ちよくはないのだろうか。心配になる。自分の感じている快楽を一青にも感じてほしい。もちろん、身体だけではない。心もだ。
「いっ……せい? 一青……ね……? 俺……きもち……い? いっせい……いい?」
抱きしめたいけれど、拘束されている腕ではそれもできなくて、問いかけると、一青の視線が翡翠をとらえる。
「ん。すげーいい。ヤバい。俺……翡翠が好きだ……とまらねえ」
余裕なくそう言って一青は両手を放してくれた。そのままぎゅ。と、抱きしめられて、抱きしめられたまま、何度も奥を突かれる。
「……ぁあっ。あっ。あっ。……気持ち……いい……っいっせい……俺……っ。こんなの……はじめて……っ」
もしかしたら、それも呪いだったのかもしれない。激しくなっていく抽挿にいっぱいになってしまった頭の片隅で、ふと思う。
誰も本気で好きになったことなんてない。誰としたセックスもこんなに気持ちよくはなかった。
一青だから、一青がいてくれたから、自分の呪いは解けたのだ。
「一青……っ。一青。好き……好きだ。一青……っ」
心も身体も高まって、ばかみたいにその名前と、言葉しか出ては来なかった。一青に揺さぶられるまま身体も心も預けて、高められていくのが堪らなく心地よかった。
「俺も……俺も好きだよ。翡翠。愛してる。っ……あ……出すよ? 受け止めて」
余裕のない一青の声が耳元に聞こえる。それから、ぐん。と、最奥を穿って、一青はそこに熱い精を放った。
「……ぁ……あ」
びくん。びくん。と、ソコに熱いものを感じる。そんなものは分かるはずがないと言われるかもしれない。けれど、わかる。一青が自分の中で絶頂を迎えたのだ。そう思うだけで、堪らなくなって、翡翠も一青を胎内に感じたままイった。
「……いっ……せぇ」
何故か涙が溢れる。
たぶん、嬉しいのだ。
愛している人に、愛されていると分かるのが、身体の快感よりももっと気持ちがいいのだ。
だから、涙が零れる。
「ひ……すい」
荒く肩で息をしながら、一青は髪を撫でてくれた。その感触に翡翠はうっとりと目を細める。
「契約……するよ」
ふう。と、大きく息を吐いて、一青は真剣な顔に変わる。その顔も、信じられないくらいにセクシーだった。だから、翡翠も小さく頷いて答える。
「誓約……海より出でて、雲になりて、雨粒と落ち、集まりて還れ。
竜神の子の内にある因子。人を形作るもの。命を育むもの。その名に誓う。
我、いかなる時も、若葉の風の天に還るときまで、これを主とし、守り、称え、仕える成りと」
低い声で呟くように一青が詠唱をする。一青の言葉が魔道文字となって、きらきらと光って、翡翠の周りをまわっている。まるで夢みたいに綺麗で、翡翠はそれに見惚れていた。
「翡翠」
そ。と、翡翠の下腹部。ちょうど、その奥にゲートのあるあたりに触れて、一青に名前を呼ばれる。
「はい」
翡翠は答えた。とても、厳粛な気持ちだった。きっと、ヴァージンロードに立つ花嫁はこんな気持ちになるのではないだろうか。
「誓って」
一青の言葉に、翡翠は翡翠のゲートに触れる一青の手に自分の手を重ねた。
「俺は……一青だけのゲートになる。一青だけの伴侶になる。ずっと、ずっと、死ぬまで一青のこと……愛してる」
翡翠が言うと、彼の周りを舞っていた文字が色づいていく。透明だったものが、青く、それから翠に。そして、それは、吸い込まれるように二人が手を重ねた部分の翡翠の腹に入っていった。
眩しいくらいの光が部屋を包む。
「ありがとう。翡翠。俺も、愛してる」
一青の声が聞こえる。だから、翡翠は重ねていた一青の手をぎゅ。と、握りしめた。
「うん」
しばらく、そうしていると、次第に光は治まって、代わりに翡翠の腹に薄く桜色の魔道文字が浮かんできた。
「ごめんな。これは、消えない。落ち着いたらもう少し見えにくくはなるけど、約款だから」
そう言ってから、一青は翡翠をぎゅ。と、強く抱きしめた。
「これで、契約は完了だ。翡翠のゲートはもう、魔力崩壊するような心配はないよ。わかるか?」
抱きしめたままの耳元に囁くように一青が続ける。
身体の奥に川が流れている。それは分かるけれど、それは扉の向こうになって、静かな水音だけが聞こえてくる。そんな感じだった。
「ん。静かだ」
一青の背中に腕を回して、翡翠は答えた。
気分が悪くなるほどの濃厚な魔光の気配も、鎖で無理矢理吸い出し口をつけられたような違和感も、力を奪われ続ける脱力感もない。
ただ、静かで心地よいせせらぎの音が聞こえるだけだった。
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