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The Ugly Duckling
Divide the pain 5/7
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「あ。そだ。昨日のことなんだけど。静さんにはちゃんと理解してもらったから」
けれど、彼はため息を振り払うみたいに、明るい声で言う。それから、無理に作ったような笑顔になった。
「翡翠のことも、俺の気持ちもちゃんと話した。静さんは信じられる人だから、口止めはしたけど。翡翠がゲートだってことも話したよ? 勝手にごめんな。それ、話さないで理解してもらうの難しかったから」
一青が信じているなら、ゲートのことを話すのは構わない。昨日のスレイヤーの会話を聞いていると、周知の事実になるのも時間の問題のような気がする。
「それで、一青は……いいのか?」
けれど、翡翠が気になったのはそこではなかった。昨夜のことを思い出す。
『籍を入れるつもりはない』
と、きっぱりと言い切った一青の声が頭に甦る。
「いいって……どういう意味で?」
怪訝そうな顔で一青が問い返してきた。
「や。だから……静さん。まだ、一青のこと……」
昨夜の一青の電話。あれは、夢だったのだろうか。
あれが翡翠の夢でないなら、一青は静と別れる必要なんてない。たった一度だけ、別の人を抱くことを、彼女に理解してもらえばいいだけだ。しかも、その相手は、本命のまるで宝物みたいな静とは比べることすらできないようなガラクタだ。ただの奉仕活動、人命救助なのだ。
“理解してもらった”のは、本命は静で、便利使いのゲートを持つことへの理解だったんではないだろうか。
そんなことを考えてから、翡翠は首を振った。
一青がそんなことをする人間だと、冗談でも思いたくない。
「正直。別れるのは納得してくれたけど、諦めないとは言われたよ? でも、俺の気持ちは変わらない。翡翠が俺のゲートになってくれるなら、一生大切にする」
翡翠の細い手を握って、一青は言った。昨夜の電話の声とは全然違う。低くて優しくて暖かい声だ。
「……茂さんが言ってた。もちろん、守秘義務があるから、詳しいことは何にも教えては貰ってないけど。翡翠を一生大切にする覚悟がないなら、近寄るなって。初めて会った日、翡翠にも言われたよな。
俺は、とっくに覚悟したよ。や。てか、覚悟なんて必要ない。
無理だよ。あなたから離れるなんて。ずっと、大切にさせて?」
握った手の甲にキスをして、一青が見つめている。
ぎりぎりと、握りつぶされるくらいに腹が痛む。けれど、幸せで、愛おしくて、思いを止めることができない。
言葉にはならなくて、何度もこくこくと頷くと、一青は微笑んでくれた。
「翡翠? 痛いんだな? ごめんな?」
言葉とは裏腹に一青の顔は幸せそうだった。
思いが通じたのだと、ほっとする。
けれど、これ以上一青のことを思っていたら、身体がもちそうにない。
「だい……じょうぶ」
昨夜の電話は翡翠の勘違いなのだ。翡翠にとって、夢は大抵、見たくないものを見せつけてくるものだった。だから、きっと、一青にそんなふうに思われたくないという気持ちが、夢になって表れたのだろう。
けれど、彼はため息を振り払うみたいに、明るい声で言う。それから、無理に作ったような笑顔になった。
「翡翠のことも、俺の気持ちもちゃんと話した。静さんは信じられる人だから、口止めはしたけど。翡翠がゲートだってことも話したよ? 勝手にごめんな。それ、話さないで理解してもらうの難しかったから」
一青が信じているなら、ゲートのことを話すのは構わない。昨日のスレイヤーの会話を聞いていると、周知の事実になるのも時間の問題のような気がする。
「それで、一青は……いいのか?」
けれど、翡翠が気になったのはそこではなかった。昨夜のことを思い出す。
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と、きっぱりと言い切った一青の声が頭に甦る。
「いいって……どういう意味で?」
怪訝そうな顔で一青が問い返してきた。
「や。だから……静さん。まだ、一青のこと……」
昨夜の一青の電話。あれは、夢だったのだろうか。
あれが翡翠の夢でないなら、一青は静と別れる必要なんてない。たった一度だけ、別の人を抱くことを、彼女に理解してもらえばいいだけだ。しかも、その相手は、本命のまるで宝物みたいな静とは比べることすらできないようなガラクタだ。ただの奉仕活動、人命救助なのだ。
“理解してもらった”のは、本命は静で、便利使いのゲートを持つことへの理解だったんではないだろうか。
そんなことを考えてから、翡翠は首を振った。
一青がそんなことをする人間だと、冗談でも思いたくない。
「正直。別れるのは納得してくれたけど、諦めないとは言われたよ? でも、俺の気持ちは変わらない。翡翠が俺のゲートになってくれるなら、一生大切にする」
翡翠の細い手を握って、一青は言った。昨夜の電話の声とは全然違う。低くて優しくて暖かい声だ。
「……茂さんが言ってた。もちろん、守秘義務があるから、詳しいことは何にも教えては貰ってないけど。翡翠を一生大切にする覚悟がないなら、近寄るなって。初めて会った日、翡翠にも言われたよな。
俺は、とっくに覚悟したよ。や。てか、覚悟なんて必要ない。
無理だよ。あなたから離れるなんて。ずっと、大切にさせて?」
握った手の甲にキスをして、一青が見つめている。
ぎりぎりと、握りつぶされるくらいに腹が痛む。けれど、幸せで、愛おしくて、思いを止めることができない。
言葉にはならなくて、何度もこくこくと頷くと、一青は微笑んでくれた。
「翡翠? 痛いんだな? ごめんな?」
言葉とは裏腹に一青の顔は幸せそうだった。
思いが通じたのだと、ほっとする。
けれど、これ以上一青のことを思っていたら、身体がもちそうにない。
「だい……じょうぶ」
昨夜の電話は翡翠の勘違いなのだ。翡翠にとって、夢は大抵、見たくないものを見せつけてくるものだった。だから、きっと、一青にそんなふうに思われたくないという気持ちが、夢になって表れたのだろう。
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