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The Ugly Duckling
misalliance? 5/7
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「てか、鏑木、月城女史と付き合ってんだろ?」
低い声の男性の言葉に、また、翡翠はどきり。とした。
高校の卒業式の出待ちをして告白したくらいだから、知っている人がいるのは当たり前だ。しかも、一青も静もあれほどの美形だ。注目を集めないわけがない。誰から見ても、あの二人ならお似合いに見えるだろう。
「いやいや。それが、別れたらしいよ? 静ちゃんが振られたって泣いてるの見たってやついるし」
意地の悪い言い方だな。
翡翠は思う。
まるで嘲笑しているみたいに聞こえるのは気のせいだろうか。大体、さっきから、高い声の男の言葉はいちいち翡翠の心に引っかかる。
「は? なんで?」
「ほら。あれ。例のゲート」
その言葉に、翡翠は思わず“え?”と、上げてしまいそうになった声を口を塞いで押し殺した。
翡翠のことは伏せられているはずだ。それなのにどうして。と、思う。
「あー。こないだの作戦の? でも、あれって、男だったんだろ? 本当かどうかわかんねーけど」
それを聞いて、少しだけほっとした。彼らはスレイヤーなのだ。“奈落”での作戦行動に参加していたスレイヤーなら知っていてもおかしくはない。けれど、極秘事項をこんな誰が聞いているかわからないような場所でしゃべるのは不用意過ぎないだろうか。
「だからだよ。男でもいいなら、俺もアピールしとけばよかった~」
その高い声の頭も尻も軽そうな発言を聞いているのが嫌になって、翡翠はベンチを立とうとした。足にはまだ、力が入らないけれど、立てないほどではない。
「おま……馬鹿か。あの鏑木が、お前ごときに靡くかよ」
低い声の男性の言葉に頷きながら、翡翠は立ち上がった。
「はぁ? 何言ってんだよ。お前、あのゲートみてないん? 作戦参加してたんだろ?」
けれど、歩き出す前に、高い声の男が言った言葉にまた、足が止まる。
“奈落”を出るとき、翡翠は意識を失っていたけれど、きっと、彼は自分の姿を見ているのだ。後で聞いた話によると、一青が抱いて連れ出してくれたらしい。それを見られていたと思うと、羞恥に頬が染まる。
「や。俺、別の被害者の保護命じられてたし。まるで、隠すみたいに連れ出されてただろ? お前、見たのか?」
翡翠はあってはならない人体実験の被害者であり、あるはずのない人造人型ゲートであり、世界でただ一人の男性型ゲートだ。事後の扱いがどうなるのせよ、簡単に人前に晒していい存在ではない。その点に対しての配慮はされていたはずだ。
「まーね。鏑木君がさ。すげー大事そうに抱えててさー。ほんと、宝物見つけました!みたいな顔でさ。マジで羨ましかった」
もちろん、気を失っていた翡翠はその時のことを覚えてはいない。だから、他人から聞くそんな言葉は、すごく恥ずかしくて、嬉しかった。
「でもさ。アレがいいって言うなら、俺でも絶対OKだって」
けれど、その言葉に翡翠は唇を噛んだ。
男の言いたいことくらいは分かっている。
「え? どういう意味?」
わざわざ問い返すな。と、翡翠は耳を塞ぎたくなった。
低い声の男性の言葉に、また、翡翠はどきり。とした。
高校の卒業式の出待ちをして告白したくらいだから、知っている人がいるのは当たり前だ。しかも、一青も静もあれほどの美形だ。注目を集めないわけがない。誰から見ても、あの二人ならお似合いに見えるだろう。
「いやいや。それが、別れたらしいよ? 静ちゃんが振られたって泣いてるの見たってやついるし」
意地の悪い言い方だな。
翡翠は思う。
まるで嘲笑しているみたいに聞こえるのは気のせいだろうか。大体、さっきから、高い声の男の言葉はいちいち翡翠の心に引っかかる。
「は? なんで?」
「ほら。あれ。例のゲート」
その言葉に、翡翠は思わず“え?”と、上げてしまいそうになった声を口を塞いで押し殺した。
翡翠のことは伏せられているはずだ。それなのにどうして。と、思う。
「あー。こないだの作戦の? でも、あれって、男だったんだろ? 本当かどうかわかんねーけど」
それを聞いて、少しだけほっとした。彼らはスレイヤーなのだ。“奈落”での作戦行動に参加していたスレイヤーなら知っていてもおかしくはない。けれど、極秘事項をこんな誰が聞いているかわからないような場所でしゃべるのは不用意過ぎないだろうか。
「だからだよ。男でもいいなら、俺もアピールしとけばよかった~」
その高い声の頭も尻も軽そうな発言を聞いているのが嫌になって、翡翠はベンチを立とうとした。足にはまだ、力が入らないけれど、立てないほどではない。
「おま……馬鹿か。あの鏑木が、お前ごときに靡くかよ」
低い声の男性の言葉に頷きながら、翡翠は立ち上がった。
「はぁ? 何言ってんだよ。お前、あのゲートみてないん? 作戦参加してたんだろ?」
けれど、歩き出す前に、高い声の男が言った言葉にまた、足が止まる。
“奈落”を出るとき、翡翠は意識を失っていたけれど、きっと、彼は自分の姿を見ているのだ。後で聞いた話によると、一青が抱いて連れ出してくれたらしい。それを見られていたと思うと、羞恥に頬が染まる。
「や。俺、別の被害者の保護命じられてたし。まるで、隠すみたいに連れ出されてただろ? お前、見たのか?」
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「まーね。鏑木君がさ。すげー大事そうに抱えててさー。ほんと、宝物見つけました!みたいな顔でさ。マジで羨ましかった」
もちろん、気を失っていた翡翠はその時のことを覚えてはいない。だから、他人から聞くそんな言葉は、すごく恥ずかしくて、嬉しかった。
「でもさ。アレがいいって言うなら、俺でも絶対OKだって」
けれど、その言葉に翡翠は唇を噛んだ。
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「え? どういう意味?」
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