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The Ugly Duckling
surveillance 2/10
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「いやっ。ちょっと待てって!」
翡翠の言葉にいきなり一青が慌てたように、ぐい。とその両肩を掴んだ。
「え? は……一青君?」
一青はすごく真剣な顔だった。
「や。その……確かに、昨日まではその……彼女……みたいなもんだったけど、ちゃんと断ったから」
翡翠の瞳を覗き込んで、一青は言った。嘘なんてついているようには見えなかった。
「は? ちょ。え? 断った? 彼女……みたい?」
混乱して、翡翠は問い返す。
「彼女は、月城静さんって言って、高校の時の先輩だよ。その。高校時代も何度か告白されたんだけど。そのたび、断ってた。彼女はすごく真剣だったから、遊びとか適当なことできないし。正直俺は……その、タイプじゃないし」
一青の言葉に翡翠は言葉を失った。あれほどの美女を前にして、“タイプじゃない”の一言で済ませるなんて普通じゃ考えられない。確かに一青はそんじょそこらで見かけるような安っぽいイケメンではない。国立の美術館に飾っていいんじゃないかって程の美形だ。けれど、月城静と紹介された彼女だって、立っているだけで美術品のような美しい女性だった。
「俺の卒業式のとき、彼女、校門のところで待っててさ。も、何度目かはわからないけど、付き合ってほしいって言われて、やっぱ、断ったんだけど、『3か月だけ、付き合ってみて。その間に、絶対に一青のこと夢中にさせてみせるから』とか言われて……。あんな目立つところであんな美人恥かかせるわけにいかないし、その……正直何度も来られるの迷惑だったし。3か月って約束で付き合ってた」
一青の言葉にまたしても、翡翠は言葉を失う。あれほどの美人にそこまで言わせて、“迷惑”の一言で済ませるなんて信じられない。きっと、一青は本当にぶす専なのだ。と、翡翠は思う。
「あ。でも、キスだってしてないよ? 買い物付き合ったり、飯食いに行ったりしただけ。お互いスレイヤーだから、忙しいし。
それに……俺、翡翠さんを見つけたから。も、偽物はいらない。だから、昨夜、“本気で好きな人ができたらから、もう、付き合えない”って、LINEした」
一青の言葉にまたしても、以下略。何を考えたら、あんな美女より自分を選ぶのか翡翠にはわからない。確かに、翡翠は希少価値の高い人型ゲートだ。けれど、人型のゲートのゲートキーパーになることは、必ずしもゲートキーパーにとってのプラスになるわけではない。自然界に存在する普通のゲートを普通に守護することがごく普通のゲートキーパーの役目なのだ。
「彼女が誰だって同じだ。俺にとっては翡翠さん以外は全部同じ。静さんのことはスレイヤーとしては尊敬してるし、友達としては好きだよ。だから、適当なことはしたくない。
それ以上に、俺は本気だから、翡翠さんにプロポーズしといて、静さんと付き合ってるなんて無理」
一青の言葉……(略)。タクシーの運転手は何気ない顔で聞き流してくれているけれど、明らかにこちらを意識してはいる。その証拠にさっきから、耳がぴくぴくと動いている。
一青みたいなイケメンが、翡翠みたいな地味な男を必死で口説いているところなんて、なかなかお目にかかることはできないだろう。ようするに興味深々なのだ。
「あ、でも、翡翠さんは気にしないで。どうせ、3か月付き合っても断ってただろうし、俺が勝手にそうしたかっただけだから」
そう言って一青は笑う。
正直あんな美人、翡翠はテレビでくらいしか見たことなんてない。翡翠は女性には興味がないけれど、自分がストレートだったらあんな女性に告白されて“興味がない”なんて断れるわけがない。
一青が付き合ってきた人はきっと、レベルが違う美女ばかりだったのだろう。紅二の話から察するに、付き合った人は一人や二人ではないはずだ。だから、簡単に静みたいな人を振ることができるのだろう。
それにしても、その理由が自分のような男のため。という意味が分からない。
翡翠の言葉にいきなり一青が慌てたように、ぐい。とその両肩を掴んだ。
「え? は……一青君?」
一青はすごく真剣な顔だった。
「や。その……確かに、昨日まではその……彼女……みたいなもんだったけど、ちゃんと断ったから」
翡翠の瞳を覗き込んで、一青は言った。嘘なんてついているようには見えなかった。
「は? ちょ。え? 断った? 彼女……みたい?」
混乱して、翡翠は問い返す。
「彼女は、月城静さんって言って、高校の時の先輩だよ。その。高校時代も何度か告白されたんだけど。そのたび、断ってた。彼女はすごく真剣だったから、遊びとか適当なことできないし。正直俺は……その、タイプじゃないし」
一青の言葉に翡翠は言葉を失った。あれほどの美女を前にして、“タイプじゃない”の一言で済ませるなんて普通じゃ考えられない。確かに一青はそんじょそこらで見かけるような安っぽいイケメンではない。国立の美術館に飾っていいんじゃないかって程の美形だ。けれど、月城静と紹介された彼女だって、立っているだけで美術品のような美しい女性だった。
「俺の卒業式のとき、彼女、校門のところで待っててさ。も、何度目かはわからないけど、付き合ってほしいって言われて、やっぱ、断ったんだけど、『3か月だけ、付き合ってみて。その間に、絶対に一青のこと夢中にさせてみせるから』とか言われて……。あんな目立つところであんな美人恥かかせるわけにいかないし、その……正直何度も来られるの迷惑だったし。3か月って約束で付き合ってた」
一青の言葉にまたしても、翡翠は言葉を失う。あれほどの美人にそこまで言わせて、“迷惑”の一言で済ませるなんて信じられない。きっと、一青は本当にぶす専なのだ。と、翡翠は思う。
「あ。でも、キスだってしてないよ? 買い物付き合ったり、飯食いに行ったりしただけ。お互いスレイヤーだから、忙しいし。
それに……俺、翡翠さんを見つけたから。も、偽物はいらない。だから、昨夜、“本気で好きな人ができたらから、もう、付き合えない”って、LINEした」
一青の言葉にまたしても、以下略。何を考えたら、あんな美女より自分を選ぶのか翡翠にはわからない。確かに、翡翠は希少価値の高い人型ゲートだ。けれど、人型のゲートのゲートキーパーになることは、必ずしもゲートキーパーにとってのプラスになるわけではない。自然界に存在する普通のゲートを普通に守護することがごく普通のゲートキーパーの役目なのだ。
「彼女が誰だって同じだ。俺にとっては翡翠さん以外は全部同じ。静さんのことはスレイヤーとしては尊敬してるし、友達としては好きだよ。だから、適当なことはしたくない。
それ以上に、俺は本気だから、翡翠さんにプロポーズしといて、静さんと付き合ってるなんて無理」
一青の言葉……(略)。タクシーの運転手は何気ない顔で聞き流してくれているけれど、明らかにこちらを意識してはいる。その証拠にさっきから、耳がぴくぴくと動いている。
一青みたいなイケメンが、翡翠みたいな地味な男を必死で口説いているところなんて、なかなかお目にかかることはできないだろう。ようするに興味深々なのだ。
「あ、でも、翡翠さんは気にしないで。どうせ、3か月付き合っても断ってただろうし、俺が勝手にそうしたかっただけだから」
そう言って一青は笑う。
正直あんな美人、翡翠はテレビでくらいしか見たことなんてない。翡翠は女性には興味がないけれど、自分がストレートだったらあんな女性に告白されて“興味がない”なんて断れるわけがない。
一青が付き合ってきた人はきっと、レベルが違う美女ばかりだったのだろう。紅二の話から察するに、付き合った人は一人や二人ではないはずだ。だから、簡単に静みたいな人を振ることができるのだろう。
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