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The Ugly Duckling
Will you marry me? 7/7
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「……一青君」
そんなふうにされなくても、翡翠の心なんてもう、殆ど一青のものだった。本当なら、すぐにでも自分のゲートキーパーになってと、言いたかった。それでも、翡翠は踏み出せずにいた。
ずく。と、腹に描かれた刻印が疼く。
だから、言葉が出てはくれなかった。
「翡翠さんが、本気で好きになって他のゲートキーパーを選ぶんだとしたら……諦めるのは無理だけど。邪魔したりしない。でも、もし、さっき言ったみたいな……その、あんな店にいたからとか、そういう理由で拒否されるなら、翡翠さんが受け入れてくれるまで何度でもプロポーズするし、俺はほかのゲートの担当者にはならない。
俺、本気だから」
ずく。と、また、腹の刻印が疼く。まるで、一青にどんどんと傾いていく心を繋がれた鎖で引き戻されるような嫌な感覚だった。
「……わかった」
翡翠は頷いた。
一青を選ぶかはともかく、これ以上、久米木に囚われているのが嫌だった。
「本当に?」
頷いた翡翠に一青が本当に嬉しそうな表情になる。まるで、子供のようで可愛い笑顔だった。
翡翠は思う。
彼はまだ19歳なのだ。
非凡なスレイヤーであり、将来を嘱望されているゲートキーパーだけれど、まだ、高校を卒業したばかりなのだ。スレイヤーの資格を得ると、年齢にかかわらず、成人と同じ権利を得ることができる。選挙権も発生するし、飲酒や喫煙することも可能だ。もちろん、義務も発生する。
けれど、それでも彼はまだ自分より4歳も下の19歳なのだ。
「じゃあ。看護婦さん、着替え持ってきてくれるって言うから。着替えたら、俺んち帰ろ? すげー部屋余ってるし」
さっきまで頼りになる大人の男。という顔をしていたのに、急に少年みたいに笑うから、目が離せない。次はどんな顔を見せてくれるのかと、考えるだけで心臓が跳ねる。
繋いだままの手が、まるで初恋のようでくすぐったい。でも、離したくない。
「手。繋いでていい? 少しでも魔光溜まらないように……」
翡翠の気持ちが分かったかのように、タイミングよく一青が言った。
「や。……ホントは繋いでたいだけ」
じっ。っと、翡翠の細い指を見つめて一青はつづける。一青の大きな手に包まれると、翡翠の細い指は全部隠れてしまう。
守られてるみたいだ。
翡翠は思う。顔が熱くて、鼓動が早くて、恥ずかしくても目が逸らせなくて、本当にまるで初恋だ。
「いいよ。繋いでて。……その。魔光……溜まらないように」
一青が言ったのと同じように言うと、一青が笑う。本当は、一青と同じで、翡翠もただ繋いでいたいだけだ。でも、それは言えなかった。言う勇気がなかった。頬が赤くなっていることに、気づかれてはいないだろうか。
「ありがと」
結局、一青はうちに帰るまで、殆ど手を離してはくれなかった。それが、すごくうれしい翡翠だった。
そんなふうにされなくても、翡翠の心なんてもう、殆ど一青のものだった。本当なら、すぐにでも自分のゲートキーパーになってと、言いたかった。それでも、翡翠は踏み出せずにいた。
ずく。と、腹に描かれた刻印が疼く。
だから、言葉が出てはくれなかった。
「翡翠さんが、本気で好きになって他のゲートキーパーを選ぶんだとしたら……諦めるのは無理だけど。邪魔したりしない。でも、もし、さっき言ったみたいな……その、あんな店にいたからとか、そういう理由で拒否されるなら、翡翠さんが受け入れてくれるまで何度でもプロポーズするし、俺はほかのゲートの担当者にはならない。
俺、本気だから」
ずく。と、また、腹の刻印が疼く。まるで、一青にどんどんと傾いていく心を繋がれた鎖で引き戻されるような嫌な感覚だった。
「……わかった」
翡翠は頷いた。
一青を選ぶかはともかく、これ以上、久米木に囚われているのが嫌だった。
「本当に?」
頷いた翡翠に一青が本当に嬉しそうな表情になる。まるで、子供のようで可愛い笑顔だった。
翡翠は思う。
彼はまだ19歳なのだ。
非凡なスレイヤーであり、将来を嘱望されているゲートキーパーだけれど、まだ、高校を卒業したばかりなのだ。スレイヤーの資格を得ると、年齢にかかわらず、成人と同じ権利を得ることができる。選挙権も発生するし、飲酒や喫煙することも可能だ。もちろん、義務も発生する。
けれど、それでも彼はまだ自分より4歳も下の19歳なのだ。
「じゃあ。看護婦さん、着替え持ってきてくれるって言うから。着替えたら、俺んち帰ろ? すげー部屋余ってるし」
さっきまで頼りになる大人の男。という顔をしていたのに、急に少年みたいに笑うから、目が離せない。次はどんな顔を見せてくれるのかと、考えるだけで心臓が跳ねる。
繋いだままの手が、まるで初恋のようでくすぐったい。でも、離したくない。
「手。繋いでていい? 少しでも魔光溜まらないように……」
翡翠の気持ちが分かったかのように、タイミングよく一青が言った。
「や。……ホントは繋いでたいだけ」
じっ。っと、翡翠の細い指を見つめて一青はつづける。一青の大きな手に包まれると、翡翠の細い指は全部隠れてしまう。
守られてるみたいだ。
翡翠は思う。顔が熱くて、鼓動が早くて、恥ずかしくても目が逸らせなくて、本当にまるで初恋だ。
「いいよ。繋いでて。……その。魔光……溜まらないように」
一青が言ったのと同じように言うと、一青が笑う。本当は、一青と同じで、翡翠もただ繋いでいたいだけだ。でも、それは言えなかった。言う勇気がなかった。頬が赤くなっていることに、気づかれてはいないだろうか。
「ありがと」
結局、一青はうちに帰るまで、殆ど手を離してはくれなかった。それが、すごくうれしい翡翠だった。
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