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The Ugly Duckling

Will you marry me? 6/7

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「翡翠さんは可愛いよ」

 しかし、一青の声は優しかった。す。と伸びてきた手が、そっと。本当にそっと、頬に触れる。

「小動物みたいで可愛い」

 そう言って擽るみたいに頬を撫でて、一青は微笑んだ。

「いきなり、こんな状況になって、今日あったばかりで、こんなこと言って、信じられないっていうのはわかるよ。でも、揶揄ってるわけでも、冗談でもない。本気だ。だから、触れさせて」

 もう片方の手も頬に伸びてきて、その両手が頬を包み込む。そうすると、目を逸らせなくて、翡翠は一青を見つめた。

「俺は本気だ。翡翠さんのゲートキーパーになりたい」

 一青の声も、瞳も真剣だった。嘘とは思えないし、こんな笑えない嘘を吐く人だと思いたくなかった。

「……でも、すぐに答えを出せって言っても、無理だと思う。だから……あんまり時間はあげられないと思うけど、俺のこと真剣に考えて」

 一青に自分は相応しくないと思う気持ちは嘘ではない。
 信じるのが怖いという気持ちも嘘ではない。
 でも、断りたくないという気持ちも本心だった。こんなふうに誰かにまっすぐに見つめてもらうのも、自分のことを真剣に考えてもらうのも初めてだった。その初めての相手が、100点満点以上の一青のような人だったことが信じられない。

「1週間。ごめんだけど、これが限界だ。
 翡翠さんが寝ている間に、せめて危険を減らそうと思って、簡易的な蓋をつけようと思ったけど、ダメだった。吸魔の十三が内側にあって邪魔してる。
 あ。言っとくけど、簡易的な蓋は扉とは違うから、その……やらしいことしようと思ったわけじゃないよ? 短時間しかもたないし、自由に開閉はできないけど、外から魔光の排出を完全に遮断する蓋をすることができるんだ」

 まるで、取り繕うみたいに一青がいう。
 散々男たちの好き勝手にされた身体なのに、と。翡翠は思う。今更、そんなふうに大切にしてくれなくても、もう自分はどこもかしこも綺麗ではない。でも、一青の心遣いは嬉しい。

「その蓋ができれば、もっと時間稼げたけど。この状態じゃ……。零れ落ちる魔光の量が多すぎて危険だ。もちろん、翡翠さんの魔昏耐性はすごく高いけど、翡翠さんの中にあんまり魔光が溜まると、バランスが崩れるかもしれないし、魔光酔いしたら、精神に異常をきたすこともある。他の人型ゲートの人みたいに、身体が変化して障害が出ることも考えられる。
 吸魔の十三の精度はすごく高いけど、精度の問題と言うより、翡翠さんのゲート……見たことないくらい大きい。もしかしたら……箱根ゲート規模だ
 あなたの身体が溜まっていく魔光に耐えられるのは多分2週間くらいだ。もちろん、“発散”させなければ……だけど。でも、もう、あなたにそんなことはさせたくない。手……出して」

 言われるままに手を伸ばすと、その手を一青が握る。

「ほら、もう、溜まり始めてる」

 一青に手を握られると、重かった身体が少し楽になった。

「手を握ったくらいじゃ、全部は受け取り切れないけど、こうやって少しでも吐き出したほうがいい」

 あの店で男たちに抱かれても、楽になったと思ったことはない。嫌な脱力感とか、喪失感を味わっただけだった。けれど、一青になら、手を握られるだけで、身体の中に渦巻いている何かが薄まったような気がした。

「あなたの……中にあるもの。ほかのヤツに渡したくない。だから、俺といて?
うちには三重結界と識阻の十三を用意しといたから。一週間でいい。俺と過ごしてみてください。それで、ダメだと思ったら、断ってくれていいし、もちろん、並行してほかのゲートキーパーも探させるから」

 そう言って一青は深く頭を下げた。
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