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The Ugly Duckling
Will you marry me? 4/7
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「俺はゲートキーパーだ。まだ、担当も決まっていない。翡翠さんが嫌でなければ、俺を選んでほしい」
ゲートキーパーは通常、ゲートの付近に居住し、その管理や排出量の調整を担当している。
けれど、ゲートが人型の場合。ただ一人のゲートキーパーを伴侶と選ぶ。そして、その伴侶と契約の印を結んで、特別な理由がない限りは一生涯を共にするのだ。ゲートキーパーが一度、扉をつけると、解除にはゲート・ゲートキーパーともに非常に酷い苦痛を伴う。場合によっては死すらもあり得る。だから、その関係は通常の婚姻とは比べ物にならないほど重かった。
「……や。でも。俺は……その男だし」
ゲートの伴侶として選ばれるゲートキーパーは100%男性だ。
何故なら、ゲートはほぼ100%女性であるからだ。ゲートは通常すべて女性の子宮の場所に存在する。理由は未だ分かっていない。
契約の印は人型ゲートの身体の内と外、両方から描かなくてはいけない。ゲートキーパーの遺伝子に描かれた契約の印をゲートの中に入れて、宣誓をする。
簡単に言えば、性交渉のあとに一生を共にすると誓い合う。けれど、それだけのこと。と言えるのは男女の場合だからだと言える。
「わかってるよ。裸も……見たしな」
一青の言葉に翡翠は頬を赤く染めた。
ゲートが開いてから現在まで300年間。一度たりとも、男性の身体にゲートが開いた記録はない。
人型のゲートは翡翠以外はすべて女性だ。彼女たちの約半数は重度の障害を抱えて、介護なしでまともな日常生活を送ることが不可能だ。
けれど、それでも、全員間違いなく女性で、男性を受け入れ、子供を宿すための器官を持っているし、その部分が欠けていればゲートとしては存在しえない。
「それでも、許されるなら、俺はあなたのゲートキーパーになりたい」
それなのに、翡翠にはその器官が存在しない。
人型ゲートとしてはありえない形をしているのだ。何故、翡翠の身体にゲートが開いたのか、開いたゲートが安定したのかは、わかっていない。わからないのだと、久米木が言っていた。
「や。何言ってんだよ。それ、どういう意味かわかってんの?」
まるで、プロポーズのような言葉に、翡翠は思わず語気を荒くした。
同性婚は法律でも認められている。魔道による性転換も認められている。仮に一青の言葉がプロポーズだとしても、それを受け入れられないわけではない。
けれど、これは普通のプロポーズとはわけが違うのだ。
「それ……結婚してくださいって言ってるのと変わらないんだぞ? ちゃんと、俺の顔見たのか? 君みたいな……そのちょっとレベルの違うイケメンが、そんなこと言うような男じゃないだろ? よく見ろって。俺、こんな冴えない普通の……男で……。可愛くも、綺麗でもないし……スレイヤーとしてだって、半人前だし。魔光なんて、ゲートなけりゃ君に比べておもちゃみたいなもんだし……それに……」
翡翠の口から出た言葉は核心とは少し違っていた。言っていることに間違いはないと翡翠は思う。しかし、本当に重要なのはそこではないのだ。
ゲートキーパーの能力は持って生まれたものだ。ゲートを感じ取る能力も、ゲートを管理する方法も遺伝子にすべて書き込まれているのだ。だから、なりたくてなれるものではないし、なりたくないからと言って拒否できるものでもない。ゲートキーパーに生まれてしまったら、ゲートキーパーとして生きるしかないのだ。
もちろん、ゲートキーパーにも能力の優劣がある。それは、魔光の多寡によるものではなく、単純にどれだけ大きな扉を持っているかということだ。初めてゲートキーパーに会ってみて、翡翠にはすぐに理解できた。一青がどれだけ優秀なゲートキーパーなのか、一目でわかった。きっと、感じ取っているのは翡翠の中のゲートだ。
その上、一青は翡翠より4歳下。つまりは19歳という若さで単独での行動を許される破格の優秀なスレイヤーなのだ。
おそらくはゲートキーパーとしても、スレイヤーとしても、将来を嘱望されているに違いない。
その彼が、自分などに縛られることなど、あってはならないのだ。
「……俺は、作り物で……偽物だ……」
翡翠が身体にゲートを宿すことになった理由は、人体実験だ。
翡翠を育てた孤児収容施設を経営していた企業は、魔道エネルギーの開発に力を入れていた。その彼らが目をつけたのはもちろんゲートだ。初めは人工ゲートの生成を目的とした研究室だったらしい。けれど、ゲートを開くことはできても、安定させること、放出する魔昏を魔光に変換することで躓いた。その両方を解決する策として、彼らは人造人型ゲートの研究に手を染めたのだ。
アンダーグラウンドのギルド『黒蛇』と手を組んで、孤児収容施設で素養のある子供を育て、スレイヤーにしてから、任務中の事故を装って拉致監禁し、実験に使う。
翡翠はその犠牲者だった。
「……君みたいな優秀なスレイヤーが。偽物のゲートになんて、縛られちゃだめだ」
その生成過程がどうあれ、翡翠の体内のゲートは紛れもなく本物だ。
けれど、それが本物であろうと、翡翠にとって、男である自分は“本物”ではなかった。この世界でたった一人の出来損ないのゲートに宝物みたいな一青が囚われていいわけがない。
ゲートキーパーは通常、ゲートの付近に居住し、その管理や排出量の調整を担当している。
けれど、ゲートが人型の場合。ただ一人のゲートキーパーを伴侶と選ぶ。そして、その伴侶と契約の印を結んで、特別な理由がない限りは一生涯を共にするのだ。ゲートキーパーが一度、扉をつけると、解除にはゲート・ゲートキーパーともに非常に酷い苦痛を伴う。場合によっては死すらもあり得る。だから、その関係は通常の婚姻とは比べ物にならないほど重かった。
「……や。でも。俺は……その男だし」
ゲートの伴侶として選ばれるゲートキーパーは100%男性だ。
何故なら、ゲートはほぼ100%女性であるからだ。ゲートは通常すべて女性の子宮の場所に存在する。理由は未だ分かっていない。
契約の印は人型ゲートの身体の内と外、両方から描かなくてはいけない。ゲートキーパーの遺伝子に描かれた契約の印をゲートの中に入れて、宣誓をする。
簡単に言えば、性交渉のあとに一生を共にすると誓い合う。けれど、それだけのこと。と言えるのは男女の場合だからだと言える。
「わかってるよ。裸も……見たしな」
一青の言葉に翡翠は頬を赤く染めた。
ゲートが開いてから現在まで300年間。一度たりとも、男性の身体にゲートが開いた記録はない。
人型のゲートは翡翠以外はすべて女性だ。彼女たちの約半数は重度の障害を抱えて、介護なしでまともな日常生活を送ることが不可能だ。
けれど、それでも、全員間違いなく女性で、男性を受け入れ、子供を宿すための器官を持っているし、その部分が欠けていればゲートとしては存在しえない。
「それでも、許されるなら、俺はあなたのゲートキーパーになりたい」
それなのに、翡翠にはその器官が存在しない。
人型ゲートとしてはありえない形をしているのだ。何故、翡翠の身体にゲートが開いたのか、開いたゲートが安定したのかは、わかっていない。わからないのだと、久米木が言っていた。
「や。何言ってんだよ。それ、どういう意味かわかってんの?」
まるで、プロポーズのような言葉に、翡翠は思わず語気を荒くした。
同性婚は法律でも認められている。魔道による性転換も認められている。仮に一青の言葉がプロポーズだとしても、それを受け入れられないわけではない。
けれど、これは普通のプロポーズとはわけが違うのだ。
「それ……結婚してくださいって言ってるのと変わらないんだぞ? ちゃんと、俺の顔見たのか? 君みたいな……そのちょっとレベルの違うイケメンが、そんなこと言うような男じゃないだろ? よく見ろって。俺、こんな冴えない普通の……男で……。可愛くも、綺麗でもないし……スレイヤーとしてだって、半人前だし。魔光なんて、ゲートなけりゃ君に比べておもちゃみたいなもんだし……それに……」
翡翠の口から出た言葉は核心とは少し違っていた。言っていることに間違いはないと翡翠は思う。しかし、本当に重要なのはそこではないのだ。
ゲートキーパーの能力は持って生まれたものだ。ゲートを感じ取る能力も、ゲートを管理する方法も遺伝子にすべて書き込まれているのだ。だから、なりたくてなれるものではないし、なりたくないからと言って拒否できるものでもない。ゲートキーパーに生まれてしまったら、ゲートキーパーとして生きるしかないのだ。
もちろん、ゲートキーパーにも能力の優劣がある。それは、魔光の多寡によるものではなく、単純にどれだけ大きな扉を持っているかということだ。初めてゲートキーパーに会ってみて、翡翠にはすぐに理解できた。一青がどれだけ優秀なゲートキーパーなのか、一目でわかった。きっと、感じ取っているのは翡翠の中のゲートだ。
その上、一青は翡翠より4歳下。つまりは19歳という若さで単独での行動を許される破格の優秀なスレイヤーなのだ。
おそらくはゲートキーパーとしても、スレイヤーとしても、将来を嘱望されているに違いない。
その彼が、自分などに縛られることなど、あってはならないのだ。
「……俺は、作り物で……偽物だ……」
翡翠が身体にゲートを宿すことになった理由は、人体実験だ。
翡翠を育てた孤児収容施設を経営していた企業は、魔道エネルギーの開発に力を入れていた。その彼らが目をつけたのはもちろんゲートだ。初めは人工ゲートの生成を目的とした研究室だったらしい。けれど、ゲートを開くことはできても、安定させること、放出する魔昏を魔光に変換することで躓いた。その両方を解決する策として、彼らは人造人型ゲートの研究に手を染めたのだ。
アンダーグラウンドのギルド『黒蛇』と手を組んで、孤児収容施設で素養のある子供を育て、スレイヤーにしてから、任務中の事故を装って拉致監禁し、実験に使う。
翡翠はその犠牲者だった。
「……君みたいな優秀なスレイヤーが。偽物のゲートになんて、縛られちゃだめだ」
その生成過程がどうあれ、翡翠の体内のゲートは紛れもなく本物だ。
けれど、それが本物であろうと、翡翠にとって、男である自分は“本物”ではなかった。この世界でたった一人の出来損ないのゲートに宝物みたいな一青が囚われていいわけがない。
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