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The Ugly Duckling
encounter 1/7
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その部屋には窓がなかった。天井には、固く青白い光を放つ飾り気のない蛍光灯が光っている。けれど、それは彼が知っている限りでは消えたことがないから、ずっとそこにいると、今が何時なのか、次第に曖昧になってくる。それどころか、完全に空調が効いたその部屋では、季節さえも、彼にはもう、思い出せなくなっていた。
「……っつ……んっ」
その部屋には装飾品も何もない。
あるのはベッドと、黒い一人掛けのソファ。あとは、ガラスで仕切られたシャワールームと、トイレのドアがあるだけだ。それもまるで四角い箱のようになっていて、完全に立方体になっている部屋の一角に置かれているような作りになっていた。
「ん……ふっ」
その部屋のベッドの上に彼、翡翠はいた。
両腕を手錠でベッドに拘束されて、仰向けにされて、脚を大きく開かれて、その脚の間に大柄な男が覆いかぶさっている。
「……っ……ふ……っん」
翡翠の身体は病的なほど白く、細い。男性器だけを覆って、後孔を晒すような卑猥な下着だけをつけさせられて、彼は男に犯されていた。
その脚の間の男はせわしなく身体を、いや、腰を振っている。衣服を身につけたまま、男はじっと目を閉じて、額に汗を浮かべながら夢中になって、翡翠を貪っていた。完全防音の部屋には男の息遣いと、ぱちゅぱちゅと淫猥な音だけが大きく響いている。
「……っ……ん。……っ……つっ」
その行為に快感がないわけではない。強力な催淫効果のある“呪い”をかけられているのだ。すでに張り詰め過ぎた男性器は下着からはみ出すほどにぱんぱんになっている。先走りが滲んで染みを作っているほどだ。
けれど、腰を打ち付けられるその動きの度に零れてしまいそうになる声を翡翠はじっと唇を噛んで耐えていた。屈辱とか、プライドとかそんなことが理由なわけではない。
「は……あっ」
いきなり、ぐん。と、強く奥を突かれて、翡翠は思わず声を漏らしてしまった。その途端、目を閉じていた男の腰がぴたりと止まる。
短く舌打ちの音。
「声、出すんじゃねえっつっただろーが!!」
繋がったまま、男は翡翠の顔をいきなり殴りつけた。それも、何度も。肉を打つ鈍い音が響く。
「……ごめ……なさ……」
痛みで気が遠くなる。口の中が切れて血の味がした。頭の上で、両手を拘束している手錠ががちゃがちゃと音を立てて、手首に食い込む。
「折角、目閉じてヤってんだ。野郎の声なんて聞かせんじゃねえよ。萎えんだろうが」
それが、翡翠が必死で声を殺していた理由だ。買い主の言う通り声を殺していないと、酷い扱いを受ける。男に突っ込まれるだけでも身体も心も悲鳴を上げているというのに、この上殴られてボロボロにされるのはごめんだった。
「も……声……ださな……から」
ぼろぼろと涙が零れる。
プライドとか、屈辱とか忘れたわけではなかった。けれど、一度酷く逆らって、殺されかけてからはそんな気も失せた。
「くそっ。なんで俺がこんな貧相なガキとヤらなきゃなんねーんだよ」
翡翠の長い髪に指を突っ込んでぐい。と、掴んで顔を上げさせて、男が顔を覗き込んでくる。髪は、もうずいぶんと切っていないから、肩が隠れるくらいに長くなっていた。
「なー。瑠璃のほうにしてくれっていったじゃねーかよ」
男は不平を言いながらも、律動を再開する。“萎える”などと言っていたくせに、男の肉棒は固く、熱く、翡翠の苦痛も、快感も関係なく乱暴にただ抽挿を繰り返した。
殴られた痛みで“呪い”が解けかけているのか、繰り返し出し入れされるたび、快感より痛みが増していく。それでも、翡翠は血が滲むほどに唇を噛んで、声を殺した。
「なんで、翡翠なんだよ」
翡翠を乱暴に犯しながら、男はなおも続ける。
「瑠璃は2倍だ。それに、予約でいっぱいなんでな」
革張りの黒いソファに座って、ずっと黙って二人の行為を見ていた男が低く呟いた。翡翠を犯している男への返答らしい。
「は? 20かよ」
苛立ち紛れなのか、男はさらに激しく翡翠の奥を犯す。もはや、性行為というよりも、暴力だ。さっきまでは、反応していた翡翠の股間もすでに萎えて、痛みばかりが増してくる。けれど、後孔の中は行為の前にソファの男に仕込まれたローションでドロドロで、乱暴な抽挿にもまるで濡れた女性器のように男を受け入れていた。
「……っつ……んっ」
その部屋には装飾品も何もない。
あるのはベッドと、黒い一人掛けのソファ。あとは、ガラスで仕切られたシャワールームと、トイレのドアがあるだけだ。それもまるで四角い箱のようになっていて、完全に立方体になっている部屋の一角に置かれているような作りになっていた。
「ん……ふっ」
その部屋のベッドの上に彼、翡翠はいた。
両腕を手錠でベッドに拘束されて、仰向けにされて、脚を大きく開かれて、その脚の間に大柄な男が覆いかぶさっている。
「……っ……ふ……っん」
翡翠の身体は病的なほど白く、細い。男性器だけを覆って、後孔を晒すような卑猥な下着だけをつけさせられて、彼は男に犯されていた。
その脚の間の男はせわしなく身体を、いや、腰を振っている。衣服を身につけたまま、男はじっと目を閉じて、額に汗を浮かべながら夢中になって、翡翠を貪っていた。完全防音の部屋には男の息遣いと、ぱちゅぱちゅと淫猥な音だけが大きく響いている。
「……っ……ん。……っ……つっ」
その行為に快感がないわけではない。強力な催淫効果のある“呪い”をかけられているのだ。すでに張り詰め過ぎた男性器は下着からはみ出すほどにぱんぱんになっている。先走りが滲んで染みを作っているほどだ。
けれど、腰を打ち付けられるその動きの度に零れてしまいそうになる声を翡翠はじっと唇を噛んで耐えていた。屈辱とか、プライドとかそんなことが理由なわけではない。
「は……あっ」
いきなり、ぐん。と、強く奥を突かれて、翡翠は思わず声を漏らしてしまった。その途端、目を閉じていた男の腰がぴたりと止まる。
短く舌打ちの音。
「声、出すんじゃねえっつっただろーが!!」
繋がったまま、男は翡翠の顔をいきなり殴りつけた。それも、何度も。肉を打つ鈍い音が響く。
「……ごめ……なさ……」
痛みで気が遠くなる。口の中が切れて血の味がした。頭の上で、両手を拘束している手錠ががちゃがちゃと音を立てて、手首に食い込む。
「折角、目閉じてヤってんだ。野郎の声なんて聞かせんじゃねえよ。萎えんだろうが」
それが、翡翠が必死で声を殺していた理由だ。買い主の言う通り声を殺していないと、酷い扱いを受ける。男に突っ込まれるだけでも身体も心も悲鳴を上げているというのに、この上殴られてボロボロにされるのはごめんだった。
「も……声……ださな……から」
ぼろぼろと涙が零れる。
プライドとか、屈辱とか忘れたわけではなかった。けれど、一度酷く逆らって、殺されかけてからはそんな気も失せた。
「くそっ。なんで俺がこんな貧相なガキとヤらなきゃなんねーんだよ」
翡翠の長い髪に指を突っ込んでぐい。と、掴んで顔を上げさせて、男が顔を覗き込んでくる。髪は、もうずいぶんと切っていないから、肩が隠れるくらいに長くなっていた。
「なー。瑠璃のほうにしてくれっていったじゃねーかよ」
男は不平を言いながらも、律動を再開する。“萎える”などと言っていたくせに、男の肉棒は固く、熱く、翡翠の苦痛も、快感も関係なく乱暴にただ抽挿を繰り返した。
殴られた痛みで“呪い”が解けかけているのか、繰り返し出し入れされるたび、快感より痛みが増していく。それでも、翡翠は血が滲むほどに唇を噛んで、声を殺した。
「なんで、翡翠なんだよ」
翡翠を乱暴に犯しながら、男はなおも続ける。
「瑠璃は2倍だ。それに、予約でいっぱいなんでな」
革張りの黒いソファに座って、ずっと黙って二人の行為を見ていた男が低く呟いた。翡翠を犯している男への返答らしい。
「は? 20かよ」
苛立ち紛れなのか、男はさらに激しく翡翠の奥を犯す。もはや、性行為というよりも、暴力だ。さっきまでは、反応していた翡翠の股間もすでに萎えて、痛みばかりが増してくる。けれど、後孔の中は行為の前にソファの男に仕込まれたローションでドロドロで、乱暴な抽挿にもまるで濡れた女性器のように男を受け入れていた。
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