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第13章〜帝国編〜
寵妃の襲撃、その顛末
しおりを挟む目の前の女を眺める。
妖艶な女だ。
男を惑わす魔性の魅力を備えている。
「っっ、お前、まさか本当に私の素性を知って!?」
「・・嘘だと思っていたの?私が貴方の事を魔族だと皆へ通達したのはハッタリだと?」
愚かな。
ニュクスお母様の娘として名乗った以上、こんな嘘で国を混乱させる訳がないじゃないか。
「で?一応聞きますけど、リュストヘルゼ帝国の皇帝であるガルドフェイン様の寵妃様である貴方がこんな夜更けに私に何のご用でしょうか?」
「っっ、全て分かっているのでしょう?こうして私が来た理由も。」
「えぇ、もちろん。ですが、一応お聞きするのが礼儀かと。」
にっこりと笑う私にマリージュアが鼻で笑う。
「小娘が良い気になるなんじゃないわ!いくらお前がニュクス神の娘だろうと、所詮は人間の小娘にすぎないのよ!」
「私が小娘ですか。」
マリージュアが話す度に、私の子達が不機嫌になっていくんですが?
ガチギレの予感。
早急にマリージュアを止めねば。
「この場にいる全員、この私があの世に送ってあげる。どう?魔王様への餞の礎になれて嬉しいでしょう?」
・・は?
そう思っていたのも一瞬。
続いたマリージュアの言葉に私の怒りは頂点に達した。
「ふふふ、のこ場にいる全員をあの世に送る?ねぇ、その全員って誰の事かしら?」
まさか、私の可愛い子達の事じゃないわよね?
ぴしり。
漏れ出した私の魔力が部屋の中の温度を下げ、どんどん凍らせていく。
「なっ、お前、」
漏れ出した私の魔力に押され、マリージュアの顔が恐怖に染まる。
だからどうした。
目の前の女は、私の可愛い子達に手を出すと言ったのだ。
承服する訳がない。
「もう貴方を生かしておく必要はないわね。だって、私の可愛い子達をあの世に送るなんて言うんですもの。」
「っっ、あっ、」
「黙れ!お前の声を聞くのも不快だ!」
ますます強くなる私の魔力。
蒼白になるマリージュアだけど、私の心は冷えていくばかり。
「楽しく遊ぼうと思っていたけど、止めたわ。お前は生きているだけで不愉快だもの。」
「ぁ、い、や、」
「さようなら、寵妃マリア。そして、魔族マリージュア。」
冷ややかに告げ、レイピアを振るった。
「ーーーディア様、僕達の為に怒ってくださるのは嬉しいのですが、元凶である寵妃の口から今回の戦乱の事実を語らせる予定ではありませんでしたか?」
「・・・。」
コクヨウの言葉にピタリと止まる私の手。
「・・別に生きていなくてもマリージュアの本来の姿が戻れば問題ないわ。」
隠蔽されて隠されたマリージュア本来の色。
魔族である証でもある色だ。
マリージュの息の根が止まれば隠蔽の魔法も解けて問題はない。
「しかし、寵妃の偽物を捏造したと騒ぐものが出るのでは?特にリュストヘルゼ帝国のグズども達のことですが。」
「でも、」
「僕は嫌ですよ?ディア様が嘘つき呼ばわりされるなんて。」
「ぐっ、」
確かに喚く者はいそうだ。
ロッテマリーとルルーシェルの玩具となる者達が。
犯罪人なので特に困らないが、少しの疑惑も残さず、リュストヘルゼ帝国が悪いと周囲の思わせたい。
「当然、その時は僕達も暴れる事になりますが良いですか?」
「うっ、」
「ディア様の事を愚弄する者に容赦はしませんよ。」
「ぐぬぬ、」
怒りと、皆んなとの平穏な生活の天秤が揺らぎ。
そして傾く。
皆んなとの平穏な生活の方へと。
「・・分かった、この場ではマリージュアの命は取らない。」
無念だけど。
不本意だけど、私へのほんの少しの疑念の声が上がれば喜んで皆んなが粛清に動いてしまう。
その事を考えれば、我慢だ。
部屋中を凍らせていた魔力を霧散させる。
「ーーーーっっ、」
自分に向けられた私の殺気から解放されて安堵するマリージュアだが、コクヨウ達が彼女を野放しにする訳がない。
「と言う事で、リリスさん。例の物を寵妃へお願いします。」
ん?
例の物を寵妃へ?
コクヨウからのリリスへのお願いへ首を傾げる。
「もちろんです、コクヨウ。躾のなっていない者には必要ですからね。」
にこやかに微笑むリリスの手には首輪が一つ。
「くっ、」
「逃がしません!」
咄嗟に逃げ出そうと身を翻そうとしたマリージュアをリリスが組み敷き、容赦なく背中を踏み付ける。
「大人しくなさい。」
そのまま、マリージュアの首に首輪を嵌めてしまう。
「それ、服従の首輪じゃん。」
なんと、悠々とリリスがマリージュアの首へと装着したのは服従の首輪。
私が皆んなから頼まれて製作した魔道具の1つ。
「これで寵妃は僕達の意のままに動かせますし、証言もさせられますね、ディア様。」
爽やかに微笑むコクヨウさん。
「これで静かになりますし、ディア様への暴言も減り、良い事ばかりですね。」
その為に用意してたのね。
なんて計画的な子達なのだろうか。
「さぁ、寵妃様?色々と話していただきますよ?」
「くっ、こんなもの、」
「壊そうとしても無駄ですよ?お前ごときがディア様が作られた場道具を壊す事なんて不可能なのですから。」
小馬鹿にした様にコクヨウが鼻で笑う。
屈辱に顔を歪ませるマリージュアを、コクヨウが冷ややかに見下ろした。
「無駄な足掻きはやめて、正直に話してくださいね?」
ーーーまぁ、その魔道具がある限り逆らえないと思いますけど。
こうして、マリージュアへの尋問が始まった。
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