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第6章〜宮廷編〜
商品と怪しい動き
しおりを挟むアディライトから渡された紙に書かれていたのは、1枚のシンプルな衣装のデザイン画。
きちんと私の要望が盛り込まれている。
「っっ、すご、」
この一瞬で、この完成度。
アディライトの凄さと有能さを改めて思い知る。
「ディア様、どうでしょう?」
「うん、凄く気に入った。アディライト、私の当日の衣装はこれで進めて?」
「かしこまりました。」
当日の衣装、何とか決まったようです。
お披露目と言う名のパーティーの衣装作りに精を出すアディライト達とは別に、私はルドヴィックさんと新しい商品開発の話で忙しい。
商品を作るのは私ではないのだが、意見や仕上がりなどする事は多いのだ。
「ソウル様の言う通り、優先してあの商品をお店で販売しております。」
「ありがとうございます。で、商品の売れ行きはどうですか?」
「はい、商品の売れ行きはとても好評ですね。女性の方にとって、あれはまさに素晴らしい商品ですから。」
「ふふ、そうでしょうね。あれは女性にとって苦痛でもありますから。」
私のアイデアを商品化するにあたり、優先して販売してもらったもの。
それは下着だ。
「コルセットは女性とって一種の苦行。苦にならずに身体のラインを綺麗に保てれば、女性は大変嬉しいでしょうね?」
「はい、高貴な身分な女性の方がこぞって商品を買われております。このままの売れ行きですと、商品の製造が間に合わないと言う場合も出てきており、今は人手を増やしている所ですね。」
「そう、ですか。なら、良かった。」
日本では当たり前の下着、ブラジャーは、この世界でも受け入れてもらえたようだ。
「ルドヴィックさん、実は下着は美を保つだけではないのですよ。」
「と、言いますと?」
「あの下着は子に恵まれていない、又はマンネリ化した夫婦間の問題改善にも使えるのです。」
普段、外では貞淑な妻が見せたギャップ。
男は落ちないはずはない。
「ルドヴィックさん、考えてみてください。セクシーな姿で恥ずかしそうに妻に誘われて、不快に思う男性はいないのではありませんか?」
「ーーっっ、!?なるほど、あの下着は後継者問題と夫婦間の営みの改善にも繋がる、と。」
「えぇ、高貴な身分な方が後継者の問題に悩まない訳がありませんから。あの下着は、そんなお悩みも解決してくださる事でしょう。」
高貴な身分な方ほど、後継者問題は深刻だ。
その改善の役に立てば良い。
婚家で後継者を生めず、批難されるのは女性の方なのだから。
「実に素晴らしい!ソウル様は色々な面から物事を考えておられるのですね!?」
「私はコルセットは野蛮だと思っていますから。コルセットは苦しいし、強く締め付けるのは身体にも悪いんですよ?」
日本で育った私にはコルセットなど絶対に辛くて耐えられない。
身体を締め付けるんだよ?
なら、この世界で日本の下着を売ったら絶対にヒットすると思ったんだよね。
「女性は常に自分の美を追求するもの。その美が楽に得られるのなら、裕福層の奥方はお金を出す事を惜しまないでしょう?」
富裕層限定だけど。
綺麗な胸の形を苦もなく維持できるなら、私考案の下着が売れない訳がない。
「他の商品についても、次々と問い合わせが来ておりますよ。特に娯楽品は凄い売れ行きです。」
「当然ですね。娯楽品は少ないですから。」
売れたその分、アイデア料として利益の半分が私に元へと返ってくる。
美味しいことだ。
「ルドヴィックさん、下着の事は、あの方の耳にも?」
「はい、耳に入っているかと。」
「なら、その方から注文が入った時は最優先でお願いしますね?」
「万事、心得ております。」
頼もしく私のお願いをルドヴィックさんが請け負ってくれる。
これは商人であるルドヴィックさんにも理のある話だし、ね?
「今度あるお披露目会までに間に合うかしら?」
「あの方のご友人もシーリン商会の下着をご愛用ですので、大丈夫かと。快く宣伝して下さると確約を得ております。」
「あら、商売上。」
「ふふ、私も商人ですから。」
ルドヴィックさんと笑い合う。
さて、私は大物のご婦人からの下着の注文を待ちますか。
あの方も気にいると思うんだよね?
「お披露目会には私も招待されておるのですが、何事もなく終わるといいですね。」
「嫌な予感でも?」
「ある筋からカーシュ公が手練れの者を集めていると聞きました。」
ルドヴィックさんが声をひそめる。
「カーシュ公?」
あぁ、あの時に喚いてた人ね。
そのカーシュ公が何故だか手練れの者を集めている、と。
「それは、とてもきな臭い感じですね。」
「はい、ソウル様も十分にお気をつけ下さい。」
「えぇ、ありがとう。」
怪しい動きをするカーシュ公、か。
優秀なリリスの事、その配下辺りがすでに動いているかな?
リリスからの報告を待ちつつ、ルドヴィックさんと商品についての話を続けた。
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