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第5章〜拠点編〜
貪欲に
しおりを挟むなんて伝えよう?
どう言えば、正解なの?
ぐるぐると頭の中を悩ませながら固まる私。
「で、ディア様。僕達にお話とは一体、なんでしょう?」
「まさか、悪い話ですか?」
「えっ、と、」
コクヨウとディオンの2人に、オリバーの事をなんて言えばいいんだろう。
分からなくて口を噤む。
「ディア様?」
「どうかされましたか?」
何も言えない私を心配そうに2人は見つめてくれるけど、考えが纏まらない。
私が話したいって2人に言ったのに。
「ディア様、まずは思っている事を言ってくだされば良いんですよ?」
「ちゃんと、聞きますから。」
「ん、」
甘えて良いだろうか?
2人に。
「・・あ、の、オリバーの事、なんだけど、」
「はい、ディア様。」
「オリバーが何か?」
「っっ、告白、された、」
ん、だよね?
羞恥に顔が熱くなっていく。
『ーー・・ディア様、俺も貴方の事を欲しいと望んでも、願っても良いですか?』
これって、そう言う意味でしょう?
やばい、挙動不審になる。
「・・・告白、ですか。で、ディア様のお答えは?」
「オリバーの告白を、ディア様はお受けになったのですか?」
「・・、えっ、と、保留?いや、答えれなかった・・?」
が正しいの、か?
訳が分からなくなってきたよ。
「・・なぜ、オリバーにお答えにならなかったんです?」
「もしや、私達にご遠慮されたのですか?」
「っっ、違うの。遠慮とかじゃなくて、私は2人が大事だがら、オリバーに安易に答えちゃダメだと思ってッ!」
2人の事を傷付けたくなかった。
・・例え、それでオリバーに答えを返せなかったとしても。
「ーー・・バカ、ですね、ディア様は。」
「コクヨウ、そこがディア様の可愛らしい所だろう?」
「ディオン、ディア様は全てが可愛いぞ。」
「そんな事、当たり前じゃないですか。ディア様に可愛らしくない所などありませんからね。」
「ふむ、確かに。」
・・・あの、2人とも?
なんだか話がずれてきてません?
「恥じらうディア様の姿も可愛らしい。」
「はにかんだ表情も、ですね。」
「っっ、もう、2人とも止めてッ!?」
出た、2人の羞恥プレイ。
先程とは別の意味で、羞恥心から顔から火を噴きそうなんですけど!?
「・・ディア様の泣き顔も良い、ですね。」
「・・コクヨウも、か。私もだ。」
「~~~っっ、」
虐めっ子が、ここにいる!
2人は私の事を揶揄うのが、そんなに楽しいのか!?
「冗談はともかく、」
「冗談!?コクヨウ、冗談だったの!!?」
さらりと涼しい顔で冗談だと言うコクヨウに私は目を剥いた。
やっぱり、私は2人に虐められてたの?
ひ、酷いッ!
「はぁ、ディア様がいけないんですよ?ご自分の気持ちが分かっているのに、そこから目を逸らそうとなさるから。」
半泣きの私をあやすようにディオンが髪を撫でてくる。
「っっ、そう、だけど。」
「これは少しディア様へお仕置きです。」
「うぅ、」
その通りなので何も言えない。
「オリバーの事、ディア様はお嫌いではないでしょう?」
「ディオンの言う通り、そうでなくてはディア様はその場でバッサリとオリバーへお断りの返事をしたでしょうからね。」
「うっ、」
た、確かに、本気で嫌だと思ったらオリバーからの告白も、私はその場で拒絶してただろう。
さすが2人は私の事を良く分かってらっしゃる。
「・・ごめんなさい。」
「ディア様?」
「なぜ、ディア様が私達に謝るのですか?」
「だって、浮気になるでしょう?」
心を1人にあげられない。
私は最低だ。
「ーー・・それでも、私は2人の事を手離せないの。」
誰の事も私は手離せない。
「もっと貪欲になっても良いかしら?」
ーーー・・欲しいの。
私を強烈に求めるオリバーの事が。
皆んなを幸せにしたいと思う。
でも、私のしている行為は本当に皆んなの幸せになる事なの?
「確かに、ディア様の事を独占したい気持ちが自分の中にない訳ではないですね。」
「コクヨウや他の誰かだけに微笑みかけているディア様を見ては、とても嫉妬しますし。」
「・・嫉妬するの?」
そんな素振り2人は私には見せないのに。
嫉妬してくれてたの?
「当たり前です。」
「愛おしい貴方の事ですよ?」
「っっ、」
私の頬が染まる。
・・嬉しい、と、思ってしまった。
「ですが、僕の、皆んなの願いはディア様が心から笑って幸せになって下さる事。」
「他の事は些細な事。どうでも良いんですよ。」
1番は私なのだと。
2人の、皆んなの愛情は私だけに向けられているのだとコクヨウとディオンが笑う。
「皆んなを大事にするディア様が僕達は愛おしいんですよ?」
「ディア様が私達を手離せない?そんなの、こちらこそ望む事です。」
「逆に僕達を手離そうとしたら許しませんからね!」
「最後の瞬間までディア様には私達を愛してもらいますから!」
「・・・最後の、瞬間まで、」
私は愛される。
湧き上がるのは歓喜。
愛を知らなかった私が心の中で喜びの声を上げて泣いた。
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