リセット〜絶対寵愛者〜

まやまや

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第5章〜拠点編〜

オリバーの告白

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オリバー、辛かったね。
誰にも弱音を吐けず、兄だからと自分の弱さを隠して生きてきたオリバーは偉いよ。
尊敬する。


「大丈夫、全て分かっているから。」
「っっ、」
「もう、私がいるから1人で頑張らなくて良いよ。」
「っっ、」
「ふふ、お兄ちゃん、今日まで良く頑張りました。」


お疲れ様、オリバー。
お兄ちゃん、良く頑張りました。


「これは、頑張ったお兄ちゃんへのご褒美、ね?」


頑張ったオリバーへ、私からの褒美。
静かな部屋の中。
オリバーの寝息が聞こえるまで、私はその髪を撫で続けた。
私の膝枕でオリバーを甘やかした翌日。

「っっ、ディア様、本当に申し訳ありませんでしたッ!」


跪き私に頭を下げるオリバー。
目を覚ました時のオリバーと言ったら、顔を赤くしたと思ったら青くなったりと朝から大忙し。
疲れないのかな?
ころころと変わるオリバーの表情に笑ってしまった。


「ふふ、オリバー、それは何の謝罪よ。」
「そ、それは、ディア様の部屋で寝てしまうなど許されない事なので。」
「あら、私が許した事なのに?」


真面目ね、オリバーは。
全く気にする事はないのに。


「・・でも、お2人は俺の事をお許しにならないのでは?」
「うん?2人?」


オリバーの言う2人って誰の事だ?
私は首を傾げる。


「・・・その、ディア様の一番近くにおられる、コクヨウさんとディオンさんです。」


オリバーの目が彷徨う。


「あのお2人は、ディア様にとって大事な方、何ですよね・・?」
「うん、コクヨウもディオンも私の大事な子だね。ふふ、それにオリバーも、だよ。」
「はい?」
「私、皆んなに順位はつけてない。皆んな私にとって等しく大事な子なの。」


コクヨウとディオンの2人は夫でもあるけれど、私の一番じゃない。
私の一番は、この家の子全員なの。


「えっと、」
「理解が出来ない?」
「・・はい、少し。」
「ふふ、素直だね?私、ね、オリバー、皆んなの事を愛してるの。」


皆んなへ向けるのは愛情と執着。
私だけを見て欲しい。
強く愛して欲しいと願い、渇望する。


「だから、皆んなから愛されたい。私が誰かを一番になんて決めたら、その子からの強い愛しか与えてもらえないでしょう?」


足りないの。
たった1人からの愛情だけでは、私の心は満たされないから。


「でも、こんな最低で傲慢な気持ちを抱えているのが本当の私なの。」


オリバーの頬を撫でる。


「・・オリバー、私の事を幻滅した?」
「え?」
「1人の事を大事にしないで、他の皆んなも等しく愛してるなんて、さ。」


日本でなら、これは浮気だ。
到底、この思いは許される事じゃない。
最低な事だ。


「・・・、いえ、俺の方がディア様に幻滅されるかもしれません。」
「ん?何で?」


私がオリバーを幻滅する?
そんな要素、オリバーには何一つないんだけど。


「嬉しいと思ってしまいました。」
「はい?嬉しい?」
「皆んなを平等に愛するなら、俺にもチャンスはありますよね?ディア様に愛を乞い、触れられるチャンスが俺にもあるって事ですから。」
「え・・?」


私の愛を乞う?


「ーー・・ディア様、俺も貴方の事を欲しいと望んでも、願っても良いですか?」


私をただ見上げるオリバーの瞳。
その瞳の奥に熱が孕む。


「・・それ、は、私が欲しいって言う事?」
「はい。」
「オリバーは私の事が好きなの?」
「そうです、ディア様。」


熱を孕んだ真っ直ぐなオリバーの目が私を見つめる。
私が欲しいと。


「1人にだけ愛を向けられない最低な私を、オリバーは求めてくれるのかしら?」


最低な私。
それでも、私は愛を求めて止まない。


「それが許されるなら。」


ーーー・・目の前の、オリバーからの愛も。
この私の気持ちは、オリバーが求める愛情とは違うものだろう。
そんな綺麗な感情じゃない。
汚くて、歪な執着心。


「・・・ずっと、オリバーは私の側にいてくれる?」


なのに、求めてしまう。
同じ気持ちものを私はオリバーへ返せないのに。


「ディア様が俺をいらないと思われないなら、ずっと側におります。」
「私を捨てない?」
「俺がディアを捨てる事など、あり得ないでしょうね。逆はあり得そうですが。」
「・・何で私なの?」


この家には素晴らしい子達が揃ってる。
私の最高の家族だから、それは当たり前の事なんだけど。
オリバーが好きになる素晴らしい子がいるはずなのに、私を選ぶと言う。


「別に、オリバーさ私じゃなくても、っっ、」


ーーーー・・良いんじゃない?
私の続くはずだった言葉は、オリバーの手によって阻まれる。
オリバーの手に塞がれる私の口。


「ディア様以外の方は、俺が嫌なんです。」
「ーー、うん。」


直ぐに外されたオリバーの手。
私の口からは、それしか出ることはなかった。


「ご無礼を、お許し下さい、ディア様。俺は、これで失礼します。」


出て行くオリバーを黙って見送る。


「ーー・・っっ、」


そっと自分の口元を手で覆う。
私の口に触れた、オリバーの大きな手。


「あれ・・?」


何だが、ドキドキする。
コクヨウともディオンとも違う、男の人の手の温かさに頬が熱かった。

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