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第5章〜拠点編〜
王からの謝罪
しおりを挟む今の宿暮らしが嫌な訳じゃない。
が、前からいい加減にこの街で拠点となる皆んなと暮らせる大きな自分の家を持ちたいと思っていた。
「ふむ、拠点となる家、か。」
何か考えるかのように、国王ミハエル様が自分の顎に手を添える。
「良いだろう、私の大叔父上が住まいにしていたミットウォール家の土地を褒賞として、ソウル嬢に譲ろう。あそこなら、大叔父上が亡くなられてから土地の名義は国の物だから文句は誰からも出なかろうからな。」
おぉ、国王ミハエル様、太っ腹。
まぁ、私達がこの国に拠点を持つ事は彼方にも利点もあるしね?
Sランク冒険者がいる国ってだけで、他国に対しての強い牽制にもなる。
利害の一致です。
「ソウル嬢には、後でその家の権利書と間取り図を渡そう。」
「はい、ありがとうございます。」
満面の笑みが零れた。
やった、拠点になる家をゲットです!
お金よりも嬉しいかも。
「これにて、この場は解散だ。ソウル嬢は、此度の褒賞のお金と土地の権利書などを渡すゆえ、控え室へ来るように。」
国王ミハエル様の解散宣言で、そのままこの場はお開きに。
もっと鬱憤ばらしにカーシュ公で遊びたかったなんて思ってないからね?
・・うん、本当に。
で、私達は別の部屋へ通される。
なぜかルカリオさんも一緒に案内されてて、国王ミハエル様が来るのを待ってます。
「っっ、美味しい。」
待ってる最中に出された茶菓子は絶品だ。
ご機嫌でお菓子を頬張る。
さすがは、一国の王城でお客様に出されるお菓子だけあるよね。
「・・お前さん、美味しそうに食べるな。」
夢中でお菓子を頬張る私に呆れたような表情を浮かべるルカリオさん。
首を傾げる。
「だって、どれも本当に美味しいですよ?ルカリオさんもどうですか?」
「遠慮しておく。全部、お前さんが好きなだけ食べてくれ。」
「はい!」
満面の笑みで頷く。
「あのお菓子たちのレシピを早急に手に入れなくては。リリスさんに協力してもらいましょう。」
小さく、アディライトが呟く。
この日を境にアディライトお手製のお菓子の種類が増えるのは、もう少し後の話。
「ーー・・すまない、待たせたな、ソウル嬢達よ。」
美味しいお茶とお菓子に夢中になっていれば、国王ミハエル様が2人の人間を引き連れて部屋の中へ入って来る。
2人はこの国の宰相と近衛騎士団長なんだとか。
「まずは、ソウル嬢達には不愉快な思いをさせて本当に申し訳無かった。心から謝罪する。」
部屋へ入って来るなり、国王ミハエル様は私達へと頭を下げた。
・・いや、貴方、王様ですよ?
「うるさい者達を黙らせる為、ソウル嬢達を矢面に立たせてしまった。どうか、許して欲しい。」
また、国王ミハエル様に深々と頭を下げられる。
ふむ、反省してるのね?
「謝罪をお受けいたします。ですから国王陛下、どうぞ、頭を上げて下さいませ。」
「しかしっ、」
「急な面会でしたが、国王陛下に対しては何の怒りもございませんので、これ以上の謝罪は不要です。しかし、国王陛下がそんな簡単に頭を下げて良いのですか?」
「其方の怒りが治らねば、この国が滅ぶからな。怒りを鎮めてもらう為なら何度でも頭を下げよう。」
真面目な顔で言われました。
おい、王様!?
人を害悪みたいに言うんじゃありません。
・・しないよ?
「ふふ、あれぐらいの可愛い囀りで、国を滅ぼす訳がございません。ただ、私の大事な子達に害が及ぶのであれば、国1つ滅ぼす事に躊躇いはないでしょう。」
私の大事な皆んなに対して、国が一切その手を出さなきゃね?
国王ミハエル様達へにこりと微笑んだ。
「そちらから攻撃しなければ、私は何もいたしませんわ。他の方々にも国王陛下から周知くださいませ。」
私が動くのは自衛の時。
皆んなを守る為の、防衛なのだ。
「こちらに未だに敵意を持つ自殺願望がある貴族の皆様へ、覚悟を持って私達へ刃を向けてください、と。私が持つ全力でお相手いたしますわ。」
知ってるんだよ?
内心では、未だに私達への敵意が残っている貴族がいるって事はね。
特にカーシュ公は要注意。
「もしも、それを国が黙認するのであれば同罪と思ってもよろしいですよね?」
「「「っっ、」」」
「夢夢、バカな事をしでかす人間が出ぬよう、監視の目を怠らないようお願いいたしますわ。」
「・・肝に銘じよう。」
頷く国王ミハエル様達の顔が恐怖に引き攣る。
「うふふ、国の為に頑張って一部の貴族がバカな事をしないよう監視してくださいね?ついでにお教えしますが、私にはフェンリルと九尾の他にも従魔がおりまして、その子は情報集めが得意なんですの。」
ひたりと国王ミハエル様達を見据えた。
「隠し事はできませんよ?」
警告を告げる。
私は貴方達の行動を監視しているのだと。
少しでもバカな貴族達の方へ味方すれば、その時はすぐ様その事が私へと報告され、国も同罪として報復の対象になるのだと微笑んだ。
言葉を失う大人達を横目に、私は出されたお菓子へと、また手を伸ばす。
「ふふ、本当に美味しい。」
お菓子の美味しさに緩む、私の頬。
はぁ、幸せ。
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