115 / 424
第4章〜暗躍編〜
終結
しおりを挟む皆んなによってあっという間に倒されていく、ベルゼが用意したキメラ達。
「バカなッ!!?」
その現実に焦るのは、ベルゼだけ。
一人驚愕の声を上げる。
「貴方に弄ばれて作られた可哀想な僕のキメラ達も、私の子達には敵わないね?」
「っっ、このッ!」
「そんな風に暴れても無駄だよ?誰もベルゼ、貴方の事を助けられないもの。」
お前の見方など、この場にはいない。
ベルゼがこの場から自力で逃げ出す事は不可能。
狩るものが、獲物に。
獲物が、狩る方へと変わった。
「どう?お前では私達には勝てないとお分かりいただけた?」
変わる私達の立場。
今、ベルゼは私に狩られる側の立場となった。
「なっ、そん、な、」
「何も知らないで私にあんな提案を持ちかけるんだもの、とても可笑しかったわ。途中からは貴方に哀れみまで感じていたのよ?」
「ぐっ、」
ベルゼの顔が屈辱に染まる。
「良いわね、その顔。お前に相応しい表情だ。」
そうだ、思い知れ。
もう、自分には何も出来ないと。
「好き勝手生きてきたのだから満足でしょう?貴方のご自慢のキメラ達と一緒に眠りなさいな。」
魔王様の為?
だから、何をしても良いの?
「ーーー・・ベルゼ、お前如きが私達の脅威となる事さえあり得ないと知れ、下郎。」
「っっ、」
口元を戦慄かせるベルゼへと吐き捨てる。
希望など与えない。
それほどの事をベルゼはしたのだから。
「1人で永遠の孤独を味わいながら、あの世で己の罪を自覚なさい。」
命を弄んだ罪を自覚しろ。
そっと、氷漬けで動けないベルゼの心臓へと手を添える。
「っっ、や、止めろっっ、!!」
「ふふふ、貴方が崇める魔王様には二度と会えないだろうけど良いよね?」
「ひっ、い、嫌だ、魔王様!」
恐怖に歪む、ベルゼの顔。
その顔を見ても、私の心はベルゼに対して何一つ動かされる事はない。
「ーーー・・さようなら、ベルゼ。貴方に永遠の孤独の眠りを、『コキュートス』。」
喚くベルゼの心臓へ自分の魔力を流し込む。
私のオリジナル氷魔法、『コキュートス』は、その魔法を向けた対象の意識さえも凍らせてしまう
まさに、即死系魔法である。
「がっ、っっ、」
流し込まれる私の魔力に呻くベルゼ。
それも、ほんの一瞬。
「ーーー、ま、・・おう、さ、ま、・・。」
消えていくベルゼの瞳の輝き。
私の魔法『コキュートス』で心臓を完全に凍結された瞬間、ベルゼは一切の動きを止めた。
「ーー・・お休みなさい、ベルゼ。」
恐怖に目を見開いたまま絶命したベルゼに同情なんかしない。
してなんかやらないよ。
だってベルゼは、私の敵だもの。
だってお前は私の可愛い、リリスの配下の子達を殺したのだから。
「ーー・・ディア様。」
コクヨウの声に、ベルゼの身体から視線を外して後ろへと振り返る。
「コクヨウ、皆んなは無事?」
「はい、ディア様。皆んな、ディア様を悲しませるような事はしておりません。」
「うん、それなら良いの。」
皆んなの無事な姿を見て、ほっと安堵の息を吐き出す。
信じていたとは言え、誰かが傷付くかも知れない事への恐怖心がなかった訳ではないから。
「・・・ギルドに、魔族の事を報告しなくちゃ、ね。」
気が重い。
こうして魔族が暗躍していた事が知れれば、国の上層部は慌ただしくなるだろう。
そして、その魔族を倒した私達は国に目を付けられる。
「気が重いわ。」
戦争の道具にはなりたくない。
皆んなの事も、戦争の道具にはさせないが、欲深い権力者達が煩わしく言ってくるのは確実だろう。
私が望んでいるのは、皆んなとの平穏な生活なのに。
「はあ、それでも、ギルドへ魔族の事を報告しない訳にはいかないのよね。」
この国に拠点を持とうとしている私としては、魔族の暗躍で荒らされるのは、とても不本意だ。
なら、国に働きかけ、魔族への対処をしてもらうしかない。
ベルゼとキメラ達の遺体である身体を、冒険者ギルドへの証拠品として空間収納の中へとしまう。
「ベルゼを倒した事で、私達のステータスも上がったかしら?」
鑑定で自分のステータス画面を呼び出す。
名前:ディアレンシア・ソウル
LV118
性別:女
年齢:16
種族:人族
称号:世界を渡りし者、神に見守られし者、寵愛し者、魔族討伐者
HP:46940/46940
MP:40210/40210
スキル
言語理解、空間収納、鑑定、経験値倍増、マップ、気配察知、危険察知、隠蔽、状態異常耐性、体力回復上昇、魔力回復上昇、攻撃力上昇、防御力上昇、身体強化、精神耐性、全属性魔法、詠唱破棄、武器作成、思考加速、剣術、体術、転移、従魔召喚、スキル付与、スキル改変、リバイブ、経験値共有、魔道具製作
ユニークスキル
創造魔法
従魔:リリス
従魔:アスラ
従魔:ユエ
装備品:期間の首飾り
レベルも一気に10も上がっている。
しかも、増えている私の称号、魔族討伐者。
魔族討伐者
魔族を倒した勇者のみに贈られる称号。
「・・これ、も、冒険者ギルドへは黙っていた方が良いようね。」
私、勇者じゃないし。
いくら魔族であるベルゼを倒したとは言え、何故この称号が私に出たのかしら?
謎である。
「ディア様、迷宮攻略の証の魔石です。」
アディライトが差し出す魔石。
「これで、この街の迷宮攻略は終わったね。」
魔石を受け取る。
この部屋のボスは最後まで出なかったが、ベルゼのせいだろうか?
「ーーー・・コクヨウ。」
目の前のコクヨウへと手を伸ばす。
「帰りたいわ。」
「ディア様のお望みのままに。」
コクヨウに抱え上げられた私は、そのまま目を瞑る。
今は、休みたい。
もう、何も考える事なく。
「ーー・・お疲れ様でした、ディア様。」
コクヨウの声を最後に、私の意識はゆっくりと闇に沈む。
私達のルーベルン国のダンジョンの攻略は、こうして終わった。
11
お気に入りに追加
2,258
あなたにおすすめの小説
旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜
ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉
転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!?
のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました……
イケメン山盛りの逆ハーです
前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります
小説家になろう、カクヨムに転載しています

セレナの居場所 ~下賜された側妃~
緑谷めい
恋愛
後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…


お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。
下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。
またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。
あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。
ご都合主義の多分ハッピーエンド?
小説家になろう様でも投稿しています。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~
月
恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん)
は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。
しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!?
(もしかして、私、転生してる!!?)
そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!!
そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

孤児院の愛娘に会いに来る国王陛下
akechi
ファンタジー
ルル8歳
赤子の時にはもう孤児院にいた。
孤児院の院長はじめ皆がいい人ばかりなので寂しくなかった。それにいつも孤児院にやってくる男性がいる。何故か私を溺愛していて少々うざい。
それに貴方…国王陛下ですよね?
*コメディ寄りです。
不定期更新です!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる