105 / 424
第4章〜暗躍編〜
貴方達がいない夜
しおりを挟む私との触れ合い禁止令。
フィリアとフィリオの2人が皆んなから言い渡された、それが今回の罰の内容。
そうなると必然的に私もフィリアとフィリオの2人と触れ合えない事に。
「・・その罰、私の方こそ耐えられるかしら?」
あんなにも可愛い2人なのだ。
可愛い2人の事を抱き締めたり、頭を撫でたくなりそう。
「コクヨウ達が私に触れられない事を極端に嫌がる理由が分かった気がするわ。」
痛感する。
愛おしい者を可愛がれない事の苦痛を。
「そりゃ、嫌がる訳ね。」
何よりの罰だわ。
分かっていても、耐えるしかない現状。
だってーー
『ディア様、フィリアとフィリオの2人を甘やかしてはいけませんよ?それでは、2人への罰になりませんから。』
にっこりと微笑む、アディライト。
『ちなみに、ディア様がフィリアとフィリオの2人を甘やかした場合は、数日の間はデザート抜きとなりますので。』
実に、私の事を理解している。
『もしも、ディア様がフィリアとフィリオの2人を甘やかしてしまったら、私は悲しみに新作のデザートを作れなくなってしまうかも知れませんね。』
まさに、脅迫だった。
「ぐぬぬ、可愛いフィリアとフィリオの2人が目の前にいるのに愛でられないなんて、何と言う拷問!」
悲し過ぎるではないか。
自分のベッドの上で、フィリアとフィリオの2人の事を愛でられない現実に1人で苦悶に唸り声を上げる。
「うぅ、でも、アディライトが作る美味しいデザートが食べられなくなるのも辛い!」
究極の2択だ。
「ーーー・・ディア様、どうしました?」
「何かありましたか?」
「・・コクヨウ、ディオン。」
いつの間にか、コクヨウとディオンの2人が寝室に入って来て、私の顔を覗き込む。
縋る様にコクヨウとディオンの2人を見上げる。
「ねぇ、コクヨウ、ディオン。フィリアとフィリオへの罰、無くせない?」
私からのお願いに、コクヨウとディオンの2人が顔を見合わせる。
そして言うのだ。
「ダメですよ、ディア様。」
「2人への罰は、ちゃんと受けなければ意味がありませんからね。」
と。
笑顔なのに、反論は許されなさそうな雰囲気。
「あう。」
がっくりと、私は肩を落とした。
「ふふ、ディア様も愛おしい者に触れられない事の苦痛を知ったのですね。」
「何よりも堪えるでしょう?」
「はい、身に染みて実感させられました。」
涙を飲んで我慢です。
「その内、フィリアとフィリオとの触れ合い禁止令も取れますから、そんなに落ち込まないで、そろそろ寝ましょう、ディア様。」
「さぁ、疲れを明日まで残しては大変ですからね。何も考えず、眠りましょう。」
「うん。」
コクヨウとディオンの2人に慰められながら、私は布団に包まった。
どれぐらい、時間が経ったのか。
「・・ん、」
沈んでいた意識が浮上する。
私が薄っすらと目を開けた先、真っ暗闇の部屋だけが映る。
「・・・コクヨウ?ディオン?」
いつもなら、2人の体温が私の身体を包み込んでいるのに、なぜかいない。
この広いベットの中に、今は私1人だけ。
「・・・2人とも、いない、の?」
誰も私の側にいない。
「ーーー・・また、私は1人ぼっち?」
冷たいシーツに、寝起きでぼんやりする頭で私は身体を震わせた。
「っっ、あっ、やっ、」
怖い。
絶望が私を支配する。
私は1人、その場で絶叫を上げた。
「やだ、嫌だよ、1人は怖い、助けて、」
頭を抱えて、踞る。
やっぱり、罰が下ったの?
幸せに浸ったから?
ーー・・皆んな、悪い子の私の前からいなくなってしまうの?
「っっ、ディア様ッ!?」
乱暴にドアが開けられたと思ったら、私の身体は暖かな温もりに包まれる。
冷えていた身体が、体温を取り戻す。
嗅ぎ慣れた匂いに、蹲ったままだった私は顔を上げた。
「コクヨウ・・?」
私の身体を包み込むのは、やはり思っていた通りコクヨウで。
その顔は悲しげなものだった。
他の皆んなも、同じような顔をしている。
「っっ、お側を離れ、お一人にして申し訳ありません。ディア様、何か怖い夢でもご覧になりましたか?」
「・・っゆ、め・・?」
違う、あれは夢なんかじゃなくて。
「・・っっ、目、が覚めたら、ベットの上に私一人、で、」
「はい、」
「っっ、皆んな、私の前からいなくなったかと思って・・。」
涙が落ちる。
この幸せが崩れ落ちてしまうかもしれない事に怯えない日はない。
だからこそ、コクヨウに、ディオンに、皆んなに愛される日々は私を心底安心させた。
なのにーー
「うぅ、バカ、私の事を一人にしないでよッ!」
私を暗闇に1人残し、恐怖を与えた。
理不尽な怒りだと分かっている。
「っっ、もう、私を不安にさせないでッ!」
また身体を震わせた。
皆んなを責めたい訳じゃないの。
なのに、止まらない。
「ディア様、申し訳ありません。」
「っっ、」
「泣かないで、下さい、ディア様。」
コクヨウの細い指先が、私の頬に流れる涙を優しく拭う。
「ーー・・貴方をそんなにも不安にさせる原因は、一体なんですか?」
「・・・、」
口を噤む。
原因は痛いほど分かっている。
「っっ、私が、生まれてしまった事がいけなかったの。」
私が生まれた事。
それば1番の間違いだったの。
7
お気に入りに追加
2,258
あなたにおすすめの小説
旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜
ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉
転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!?
のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました……
イケメン山盛りの逆ハーです
前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります
小説家になろう、カクヨムに転載しています

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
女性が全く生まれない世界とか嘘ですよね?
青海 兎稀
恋愛
ただの一般人である主人公・ユヅキは、知らぬうちに全く知らない街の中にいた。ここがどこだかも分からず、ただ当てもなく歩いていた時、誰かにぶつかってしまい、そのまま意識を失う。
そして、意識を取り戻し、助けてくれたイケメンにこの世界には全く女性がいないことを知らされる。
そんなユヅキの逆ハーレムのお話。

女性の少ない異世界に生まれ変わったら
Azuki
恋愛
高校に登校している途中、道路に飛び出した子供を助ける形でトラックに轢かれてそのまま意識を失った私。
目を覚ますと、私はベッドに寝ていて、目の前にも周りにもイケメン、イケメン、イケメンだらけーーー!?
なんと私は幼女に生まれ変わっており、しかもお嬢様だった!!
ーーやった〜!勝ち組人生来た〜〜〜!!!
そう、心の中で思いっきり歓喜していた私だけど、この世界はとんでもない世界で・・・!?
これは、女性が圧倒的に少ない異世界に転生した私が、家族や周りから溺愛されながら様々な問題を解決して、更に溺愛されていく物語。

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~
月
恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん)
は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。
しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!?
(もしかして、私、転生してる!!?)
そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!!
そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

転生したら乙女ゲームの主人公の友達になったんですが、なぜか私がモテてるんですが?
rita
恋愛
田舎に住むごく普通のアラサー社畜の私は車で帰宅中に、
飛び出してきた猫かたぬきを避けようとしてトラックにぶつかりお陀仏したらしく、
気付くと、最近ハマっていた乙女ゲームの世界の『主人公の友達』に転生していたんだけど、
まぁ、友達でも二次元女子高生になれたし、
推しキャラやイケメンキャラやイケオジも見れるし!楽しく過ごそう!と、
思ってたらなぜか主人公を押し退け、
攻略対象キャラからモテまくる事態に・・・・
ちょ、え、これどうしたらいいの!!!嬉しいけど!!!

二度目の人生は異世界で溺愛されています
ノッポ
恋愛
私はブラック企業で働く彼氏ナシのおひとりさまアラフォー会社員だった。
ある日 信号で轢かれそうな男の子を助けたことがキッカケで異世界に行くことに。
加護とチート有りな上に超絶美少女にまでしてもらったけど……中身は今まで喪女の地味女だったので周りの環境変化にタジタジ。
おまけに女性が少ない世界のため
夫をたくさん持つことになりー……
周りに流されて愛されてつつ たまに前世の知識で少しだけ生活を改善しながら異世界で生きていくお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる