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第3章〜恋愛編〜
呑み込む
しおりを挟む夢、だ。
きっと、これは私の心の闇が見せる、夢。
私が作り出した世界。
『そう、ここは夢の中。お姉ちゃんの心が作り出した、ね。』
目の前に、小さな頃の私が現れる。
ガリガリに痩せ、皮だけの姿をした私がいた。
『ふふ、お姉ちゃんはとてもいけない子だね?だから、お姉ちゃんはお父さんにも愛されなかったんだよ?』
落ち窪んだ目が私を見据える。
私の事を責める様に。
『お父さんからの言い付けに、お姉ちゃんは背くの?』
小さな私が、こてんと首を傾げた。
『ねぇ、お姉ちゃん。」
ーーー何?
小さい頃の私に問い掛ける。
『お姉ちゃんは、私は、幸せになっちゃいけない子でしょう?』
残酷に、小さな私が微笑んだ。
『お姉ちゃんは、忘れたの?自分の罪を。』
ーーー忘れてない。
自分の罪は、ちゃんと覚えてる。
忘れられないよ。
『なのに、お姉ちゃんは幸せを望むの?』
ーーーうん、そうだね。
でも、私は幸せになりたいよ。
ダメなの?
『ダメに決まっているでしょう?』
ーーーどうして?
何で、私は幸せになっちゃいけないの?
『ーーー・・お姉ちゃんが、人殺しだからだよ。』
小さな私が血に染まる。
『ほら、ちゃんと見て?この血は、お姉ちゃんが流したものなんだよ?お姉ちゃんの罪の象徴。』
広がる赤い血。
小さの私の口元が弧を描く。
『お姉ちゃんは、これを見ても、まだ幸せになりたいって言うの?』
ーーーなりたい。
私も誰かに愛されたいよ。
『・・・お姉ちゃんは、我儘だね?』
ーーーかも、ね。
だからこそ、どこまでも貪欲になれる。
『愛されたいからコクヨウと、ディオンからの愛情を受け入れるの?』
ーーーうん、受け入れたい。
まだ、怖いけど、2人の気持ちを大切にしたいから。
『そう言うけど、お姉ちゃんが寂しいから2人の事を利用するんじゃない?寂しさを紛らわせる為だけに。』
ーーー2人を利用、かぁ。
そう、なるのかな。
『ふふ、本当に最低なお姉ちゃん。2人の愛を利用して。』
ーーーでも、私も2人の事が好き。
大事なの。
『ーーー・・それが、愛と分からないのに?』
ーーーだって、知らないから。
愛って何?
家族ってどんなもの?
『愛も家族もお姉ちゃんは知る必要がないものだよ。早く2人の事を手放した方が良いんじゃない?』
ーーーもう、手放せない。
初めて誰かから与えられる幸福を知ってしまった私。
愛される事を覚えてしまった。
ふふっ、きっと、そんな私の事を許さないだろうね、お父さんは。
『そんなの当たり前だよ。お父さんは、お姉ちゃんの事が大っ嫌いなんだから絶対に許さないよ。』
ーーーそう、だね。
胸が痛い。
お父さんが私を嫌っている事は、昔から分かっていたはずなのにね。
『お父さん、お姉ちゃんの事、怒るだろうなぁ。』
小さな私が、くすくすと笑う。
『だって、お父さんは、お姉ちゃんが幸せになる事を許さないもの。』
ーーー私は、いつまで良い子でいなくてはいけないの?
お父さんの望む私の人生って何?
私が泣いて暮らす事?
『お姉ちゃんが不幸になる事だよ。』
ーーー不幸?
あちらの世界の、あの頃の様な?
『そう、それが、お姉ちゃんに相応しい人生何だよ?だから、幸せになろうなんて夢見ちゃダメだよ。』
ーーーここには、もう、お父さんはいないのに?
私は縛られなくちゃいけないの?
『お姉ちゃんは、お父さんの事を捨てて、2人の愛情を選ぶんだ?ふふ、1人からの愛情じゃ、お姉ちゃんは満足出来ないんだね?』
ーーーねぇ、言ったでしょう?
私は貪欲なんだって。
たくさんの愛情が私は欲しい。
『我儘、貪欲、強欲。お姉ちゃんにぴったりの言葉だね。どこまでもお姉ちゃんは最低だもの。』
ーーー否定しないよ。
自分でも、そう思うから。
『分かっているのに、お姉ちゃんは2人の事を解放しないんだ?』
ーーーしない。
うぅん、もう出来ないの。
2人は、他の皆んなも、ずっと私の側にいてもらう。
『狂ってる。』
ーーーそれは、いけないことなの?
永遠に1人は寂しいから、寄り添い合いたい、愛されたいと願う事は罪?
許されない事?
『きっと、お姉ちゃんは地獄に落ちてしまうね。』
ーーー構わないよ。
例え地獄に落ちたとしても、一緒に皆んなも連れて行く。
その手を離しはしない。
『・・ねぇ、お姉ちゃんは、本当にお父さんの事を捨てるの?』
ーーー可笑しい事を言うね。
先に捨てたのは私じゃない、お父さんの方だよ。
だから、私も捨てるの。
私を最後まで愛さず憎み続け、先に捨てたお父さんの事を。
『ーー・・私の事も、お姉ちゃんは捨てる?』
ーーー捨てない。
『本当に?お姉ちゃんは、本当に私の事を捨てない?』
ーーー本当だよ。
だって、貴方は私だもの。
目の前の小さな私を引き寄せて抱き締める。
「私達は、ずっと一緒よ。」
戻ろう。
今の私の中へ。
「ーー・・ほら、私は、もう、これで1人にはならないでしょう?」
夢の中の小さな私を呑み込む。
これでもう、小さな私も孤独じゃなくなるね?
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