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第3章〜恋愛編〜
閑話:不器用な愛し方
しおりを挟むリリスside
ディア様が意識を手放したのを確認した私は、影の中から滑り出る。
「・・ご苦労様でした、コクヨウ。」
涙の跡の残るディア様の目尻。
労しくて堪らない。
『ーーーっっ、お願い、私をいらなくなったら、その時はコクヨウ達のその手で殺して?』
それは、ディア様の本心からの叫び。
悲痛な願いだった。
「ーーー・・それにしても、まさか、あの様な手段でディア様を強引に眠らせるなんて・・。」
厳しい目をコクヨウへ向ける。
「コクヨウ、分かっていますか?貴方は一歩間違えば、絶対に許されない事をしたのですよ?」
ディア様が本気でコクヨウを拒み、その行為を拒絶していたのなら、自分は躊躇なく排除していただろう。
例え、排除の相手がコクヨウであろうとも。
「でも、これでディア様は夢の中でも僕の事しか考えられないはずです。自分が罰せられるよりも、ディア様が悲しんで、苦しむ方が嫌ですから。」
コクヨウの手が、ディア様の頬を撫でる。
「ディア様には、ずっと笑っていて欲しい。僕や皆んなの事だけを見て、考えて欲しいと言う、これは僕のエゴなんです。」
「・・・貴方も、案外不器用な愛し方をしますね。それで、ディア様のお心が貴方から離れても文句は言えないのに。」
「構いません。それでディア様のお心が少しでも晴れるのであれば。」
「本当、バカな子。」
眠るディア様の、まだ涙の残る目尻を愛おしげに撫でるコクヨウに、呆れの溜め息を吐いた。
今さらディア様に拒絶されて、貴方が生きていけるはずなどないのに。
「バカで良いんです。可愛いコクヨウのままでは、ディア様の怯える何かを忘れさせる事なんかできないですからね。」
「自分がディア様に拒絶されるより、怯える何かを取り除きたい、と?」
「当然でしょう?僕の事よりも、ディア様の方が大事なんですから。」
分かる気がする。
自分の事より、私もディア様の方が大事だから。
「僕達以外の事で、ディア様のお心が独占されるんなんて許せません。そんな事になるなら、僕は可愛い自分を止めても良いと思ったんです。」
誰よりも愛する人の為。
可愛いコクヨウを脱ぎ捨て、本性を現した。
「ふふ、ディア様の頭の中は僕の事でいっぱいになれば良い。」
全ては、ディア様への独占欲ゆえ。
「・・貴方も大概、ディア様への愛に狂っていますね。」
「リリスさんも、でしょう?」
お互いに笑い合う。
私達は同じ、愛に狂った者達だ。
「コクヨウ、ディア様のお身体を清めます。外にアディライトを待たせているので中へ入れなさい。」
「・・・はい。」
名残惜しそうにディア様から手を離したコクヨウがベットの上から降り、寝室のドアへと向かう。
離れがたいのだろうが、ディア様の身を整えるのが先決だと分かっているのだろう。
「ディア様も、不安に思う事など何1つ無いのですよ?」
眠る主人へと視線を向ける。
ディア様が望まない限り、誰もその側を離れたいと思う者はいないだろう。
ゆえに、何も怯える必要など無い。
「貴方が望むなら、ディア様は必ず幸せになれると言うのに。」
コクヨウは、覚悟を決めた。
なら、自分は見守るしか無いだろう。
ディア様の幸せを。
「ーーー・・ディア様、貴方は皆んなに愛されているのです。」
そっと、ディア様の頬を撫でる。
その事実を理解した時、きっと私達の主人は誰よりも光り輝くだろう。
幸福の笑みだけを浮かべて。
「リリスさん。」
ディア様の頬を撫でる私の名をアディライトが呼ぶ。
「アディライト、良く来ました。ディア様のお身体を清めてちょうだい。」
早速、指示を出す。
「はい、承知しました。」
私の指示に頷き、迅速に動き出すアディライト。
「ーーー・・リリスさん、コクヨウは、ディア様へ自分の思いを告げたのですね。」
ディア様の身体を拭いながら、アディライトが呟く。
「その様ね。」
それは、必要な事だったのだ。
『・・・幸せに、なんて、なれないよ。』
恐怖に泣く、ディア様には。
「私も、ずっと、ディア様のお側におりますわ。この命が尽きる時まで。」
アディライトが涙を滲ませる。
「いいえ、この命尽きても、お心はディア様のお側におりますわ。私、アディライトの忠誠は生涯ディア様に捧げます。ディア様、貴方だけに。」
眠るディア様へ、アディライトが忠誠を誓う。
「アディライト、そう言う大事な事は、ディア様に起きている時になさい。」
「はい、リリスさん。」
「ゆっくりと、ディア様には理解していただくだけです。」
もう恐怖に、泣く事はないのだと。
私達の、この世の誰よりも大事なディア様。
『死ぬなら、貴方達の手でが良い。』
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私達を自分から他者に奪われる事を極端に嫌がり嫌悪し、怯える原因もそこにあるのだろうか?
『ーーー・・こんな事を考える私から、コクヨウは離れていく?』
怯えないでくだい。
ずっと、私達は貴方のお側におりますから。
貴方には、笑っていて欲しいのです。
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