リセット〜絶対寵愛者〜

まやまや

文字の大きさ
上 下
68 / 424
第3章〜恋愛編〜

閑話:不器用な愛し方

しおりを挟む





リリスside



ディア様が意識を手放したのを確認した私は、影の中から滑り出る。


「・・ご苦労様でした、コクヨウ。」


涙の跡の残るディア様の目尻。
労しくて堪らない。


『ーーーっっ、お願い、私をいらなくなったら、その時はコクヨウ達のその手で殺して?』


それは、ディア様の本心からの叫び。
悲痛な願いだった。


「ーーー・・それにしても、まさか、あの様な手段でディア様を強引に眠らせるなんて・・。」


厳しい目をコクヨウへ向ける。


「コクヨウ、分かっていますか?貴方は一歩間違えば、絶対に許されない事をしたのですよ?」


ディア様が本気でコクヨウを拒み、その行為を拒絶していたのなら、自分は躊躇なく排除していただろう。
例え、排除の相手がコクヨウであろうとも。


「でも、これでディア様は夢の中でも僕の事しか考えられないはずです。自分が罰せられるよりも、ディア様が悲しんで、苦しむ方が嫌ですから。」


コクヨウの手が、ディア様の頬を撫でる。


「ディア様には、ずっと笑っていて欲しい。僕や皆んなの事だけを見て、考えて欲しいと言う、これは僕のエゴなんです。」
「・・・貴方も、案外不器用な愛し方をしますね。それで、ディア様のお心が貴方から離れても文句は言えないのに。」
「構いません。それでディア様のお心が少しでも晴れるのであれば。」
「本当、バカな子。」


眠るディア様の、まだ涙の残る目尻を愛おしげに撫でるコクヨウに、呆れの溜め息を吐いた。
今さらディア様に拒絶されて、貴方が生きていけるはずなどないのに。


「バカで良いんです。可愛いコクヨウのままでは、ディア様の怯える何かを忘れさせる事なんかできないですからね。」
「自分がディア様に拒絶されるより、怯える何かを取り除きたい、と?」
「当然でしょう?僕の事よりも、ディア様の方が大事なんですから。」


分かる気がする。
自分の事より、私もディア様の方が大事だから。


「僕達以外の事で、ディア様のお心が独占されるんなんて許せません。そんな事になるなら、僕は可愛い自分を止めても良いと思ったんです。」


誰よりも愛する人の為。
可愛いコクヨウを脱ぎ捨て、本性を現した。


「ふふ、ディア様の頭の中は僕の事でいっぱいになれば良い。」


全ては、ディア様への独占欲ゆえ。


「・・貴方も大概、ディア様への愛に狂っていますね。」
「リリスさんも、でしょう?」


お互いに笑い合う。
私達は同じ、愛に狂った者達だ。


「コクヨウ、ディア様のお身体を清めます。外にアディライトを待たせているので中へ入れなさい。」
「・・・はい。」


名残惜しそうにディア様から手を離したコクヨウがベットの上から降り、寝室のドアへと向かう。
離れがたいのだろうが、ディア様の身を整えるのが先決だと分かっているのだろう。


「ディア様も、不安に思う事など何1つ無いのですよ?」


眠る主人へと視線を向ける。
ディア様が望まない限り、誰もその側を離れたいと思う者はいないだろう。
ゆえに、何も怯える必要など無い。


「貴方が望むなら、ディア様は必ず幸せになれると言うのに。」


コクヨウは、覚悟を決めた。
なら、自分は見守るしか無いだろう。
ディア様の幸せを。


「ーーー・・ディア様、貴方は皆んなに愛されているのです。」


そっと、ディア様の頬を撫でる。
その事実を理解した時、きっと私達の主人は誰よりも光り輝くだろう。
幸福の笑みだけを浮かべて。


「リリスさん。」


ディア様の頬を撫でる私の名をアディライトが呼ぶ。


「アディライト、良く来ました。ディア様のお身体を清めてちょうだい。」


早速、指示を出す。


「はい、承知しました。」


私の指示に頷き、迅速に動き出すアディライト。



「ーーー・・リリスさん、コクヨウは、ディア様へ自分の思いを告げたのですね。」


ディア様の身体を拭いながら、アディライトが呟く。


「その様ね。」


それは、必要な事だったのだ。


『・・・幸せに、なんて、なれないよ。』


恐怖に泣く、ディア様には。


「私も、ずっと、ディア様のお側におりますわ。この命が尽きる時まで。」


アディライトが涙を滲ませる。


「いいえ、この命尽きても、お心はディア様のお側におりますわ。私、アディライトの忠誠は生涯ディア様に捧げます。ディア様、貴方だけに。」


眠るディア様へ、アディライトが忠誠を誓う。


「アディライト、そう言う大事な事は、ディア様に起きている時になさい。」
「はい、リリスさん。」
「ゆっくりと、ディア様には理解していただくだけです。」


もう恐怖に、泣く事はないのだと。
私達の、この世の誰よりも大事なディア様。


『死ぬなら、貴方達の手でが良い。』


そんなにも貴方を苦しめ、追い詰めるものは何なのですか?
貴方が隠す心の内。


『・・・でも、その好きがよく分からない。』


愛が分からないと言う。
だからこそ、貴方は貪欲なまでに愛を欲するのですか?


『そんなバカな敵は、私の前から皆んな、いなくなってしまえば良いのに。』


コクヨウから聞いたディア様の豹変。
私達を自分から他者に奪われる事を極端に嫌がり嫌悪し、怯える原因もそこにあるのだろうか?


『ーーー・・こんな事を考える私から、コクヨウは離れていく?』


怯えないでくだい。
ずっと、私達は貴方のお側におりますから。
貴方には、笑っていて欲しいのです。


しおりを挟む
感想 148

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜

ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉 転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!? のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました…… イケメン山盛りの逆ハーです 前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります 小説家になろう、カクヨムに転載しています

高身長お姉さん達に囲まれてると思ったらここは貞操逆転世界でした。〜どうやら元の世界には帰れないので、今を謳歌しようと思います〜

水国 水
恋愛
ある日、阿宮 海(あみや かい)はバイト先から自転車で家へ帰っていた。 その時、快晴で雲一つ無い空が急変し、突如、周囲に濃い霧に包まれる。 危険を感じた阿宮は自転車を押して帰ることにした。そして徒歩で歩き、喉も乾いてきた時、運良く喫茶店の看板を発見する。 彼は霧が晴れるまでそこで休憩しようと思い、扉を開く。そこには女性の店員が一人居るだけだった。 初めは男装だと考えていた女性の店員、阿宮と会話していくうちに彼が男性だということに気がついた。そして同時に阿宮も世界の常識がおかしいことに気がつく。 そして話していくうちに貞操逆転世界へ転移してしまったことを知る。 警察へ連れて行かれ、戸籍がないことも発覚し、家もない状況。先が不安ではあるが、戻れないだろうと考え新たな世界で生きていくことを決意した。 これはひょんなことから貞操逆転世界に転移してしまった阿宮が高身長女子と関わり、関係を深めながら貞操逆転世界を謳歌する話。

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~

恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん) は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。 しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!? (もしかして、私、転生してる!!?) そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!! そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

女性の少ない異世界に生まれ変わったら

Azuki
恋愛
高校に登校している途中、道路に飛び出した子供を助ける形でトラックに轢かれてそのまま意識を失った私。 目を覚ますと、私はベッドに寝ていて、目の前にも周りにもイケメン、イケメン、イケメンだらけーーー!? なんと私は幼女に生まれ変わっており、しかもお嬢様だった!! ーーやった〜!勝ち組人生来た〜〜〜!!! そう、心の中で思いっきり歓喜していた私だけど、この世界はとんでもない世界で・・・!? これは、女性が圧倒的に少ない異世界に転生した私が、家族や周りから溺愛されながら様々な問題を解決して、更に溺愛されていく物語。

ハズレ職業の料理人で始まった俺のVR冒険記、気づけば最強アタッカーに!ついでに、女の子とVチューバー始めました

グミ食べたい
ファンタジー
 疲れ切った現実から逃れるため、VRMMORPG「アナザーワールド・オンライン」に没頭する俺。自由度の高いこのゲームで憧れの料理人を選んだものの、気づけばゲーム内でも完全に負け組。戦闘職ではないこの料理人は、ゲームの中で目立つこともなく、ただ地味に日々を過ごしていた。  そんなある日、フレンドの誘いで参加したレベル上げ中に、運悪く出現したネームドモンスター「猛き猪」に遭遇。通常、戦うには3パーティ18人が必要な強敵で、俺たちのパーティはわずか6人。絶望的な状況で、肝心のアタッカーたちは早々に強制ログアウトし、残されたのは熊型獣人のタンク役クマサンとヒーラーのミコトさん、そして料理人の俺だけ。  逃げるよう促されるも、フレンドを見捨てられず、死を覚悟で猛き猪に包丁を振るうことに。すると、驚くべきことに料理スキルが猛き猪に通用し、しかも与えるダメージは並のアタッカーを遥かに超えていた。これを機に、負け組だった俺の新たな冒険が始まる。  猛き猪との戦いを経て、俺はクマサンとミコトさんと共にギルドを結成。さらに、ある出来事をきっかけにクマサンの正体を知り、その秘密に触れる。そして、クマサンとミコトさんと共にVチューバー活動を始めることになり、ゲーム内外で奇跡の連続が繰り広げられる。  リアルでは無職、ゲームでは負け組職業だった俺が、リアルでもゲームでも自らの力で奇跡を起こす――そんな物語がここに始まる。

二度目の人生は異世界で溺愛されています

ノッポ
恋愛
私はブラック企業で働く彼氏ナシのおひとりさまアラフォー会社員だった。 ある日 信号で轢かれそうな男の子を助けたことがキッカケで異世界に行くことに。 加護とチート有りな上に超絶美少女にまでしてもらったけど……中身は今まで喪女の地味女だったので周りの環境変化にタジタジ。 おまけに女性が少ない世界のため 夫をたくさん持つことになりー…… 周りに流されて愛されてつつ たまに前世の知識で少しだけ生活を改善しながら異世界で生きていくお話。

処理中です...