59 / 411
第3章〜恋愛編〜
もふもふ天国と邪魔者
しおりを挟む主人と配下。
貴族と庶民。
一体、どこが違うの?
皆んな同じ、心を持った命ではないか。
「フェンリル、私は貴方と対等な立場でありたい。主従とか配下とかではなく、友達になりたいの。」
「ほう、ディアは我と友達になりたいと申すか。くくっ、ますます、ディアは面白い。」
フェンリル尻尾が振られる。
「良かろう、我はディアと友になろうぞ。」
「本当?」
「うむ、友となるディアの大切な者達は、我も一緒に守ろう。何、友の頼みだからな。この我に任せるが良い。」
「っっ、ありがとう!」
「では、ディアよ。改めて、我にそなたが名を与えよ。」
フェンリルの名前。
ふわふわな白い毛並みに、青い瞳。
一体、どんな名前が目の前のフェンリルに相応しいだろうか?
悩ましい。
「・・・うーん、フェンリル、伝説のモンスター、あっ、」
思い浮かんだ、1つの名前。
うん、良いかも。
「・・・アスラーー・・・。」
「うん?アスラ?」
小さくぽつりと呟いた私に、フェンリルが首を傾げる。
・・うっ、可愛い。
「そ、そう、アスラ。神秘的な力を持った存在って意味なんだけど、どうかな?」
伝説のフェンリルには、ぴったりな良い名前じゃない?
「ほう、アスラ、か。良い名だな。良かろう、これからは我はアスラだ。」
「っっ、あっ、」
頷いたフェンリル、アスラと私の間に強い繋がりが出来るのを感じた。
「じゃあ、アスラ!さっそく1つ私からアスラにお願いがあるんだけど!」
「お願い?何だ?」
「思う存分アスラを撫でさせて下さい!」
もふりたい。
心ゆくまで撫で回したいの!
ぱたぱた揺れるアスラの尻尾へ、私は熱い期待の眼差しを向けた。
これ以上の最高の望みがあるだろうか?
いや、ない。
もふもふとは、この世の天国。
私にとっての、パラダイスなのである。
「・・・はぁ、ディア様。」
「お願い、アスラ!」
後ろで呆れるコクヨウもなんのその。
私は全く気にしない。
だって、目の前のアスラの尻尾にしか今は私の目がいかなのだから。
許してね、コクヨウ。
「ねぇ、アスラ、触ったらダメ?」
どうしても触りたい。
アスラの、そのもふもふの身体を。
視線がアスラのもふもふの身体に釘付けになってしまう。
「・・・う、うむ、そんなにもディアが望むなら、それぐらいなら、まぁ、良かろう。」
「本当!?」
「二言はない。ディアが我に触れる事を許そう。」
迫る私に怯み、若干の怯えを見せたアスラだったけと、撫でやすいようにその場に伏せてくれる。
「っっ、やった!」
アスラからもふもふを堪能する許可、いただきました。
思わずガッツポーズしたよね。
そっと、伏せてくれたアスラの背中を撫でてみる。
「ふぁっ、」
この世の幸福が目の前にありました。
ふかふかだぁ。
「はぁう、とても幸せ。」
何、アスラのこの素晴らしい手触りは。
ずっと、このもふもふを撫でていたくなるじゃないか。
「・・・、はぁ、」
でも、そんな私の幸せは長くは続かない。
ずっと展開させていた周囲のマップ。
その展開させていたマップ上に点滅するのは、私の敵を示す赤いマーク達。
「ーーー・・何んで私の幸せの邪魔をするかな。」
ずっと、監視されている事は知っていた。
が、何もしてこないから放置していたら、こうして明確な敵意を向けて迫って来ているので、アスラのもふもふな毛並みを撫でて幸せな気分だったのに、台無しになったじゃないか。
どうしてくれるの?
「でも、何で私達を狙うのかしら?」
何かした気は無い。
私達が狙われるような理由は、まったく思い浮かばないんだけど。
首を捻る私に対して、コクヨウが口を開く。
「・・・あの、ディア様。」
「うん?」
「たぶん、その敵意の相手は魔族狩りの連中では無いでしょうか?」
「・・・・はっ?」
魔族狩り?
なに、その胸糞悪い響き。
「・・コクヨウ、その魔族狩りって、何?」
自然と自分の声が低くなる。
何、魔族狩りって。
「っっ、その、魔族に恨みを持った人や、お金の為に奴隷として捕まえたい、連中、の、事です。」
「・・へぇ?他人の奴隷を奪う事は法で禁止されているのにね?」
ほう、なるほど、それは良い度胸だな。
浮かぶ冷笑。
おバカな連中もいたもんだ。
「えっと、彼等にとって、そんな事は関係ないんだと思いますよ。あの者の中には、魔族の全員を倒す事が当然だと考えている魔族討伐至高主義者も多いと聞きましたから、僕達を狙うとしたら魔族狩りの連中である可能性が高いです。」
困った表情を浮かべるコクヨウ。
「僕がハビスさんの元に来る前の奴隷商の人も魔族狩りの人達の事を怒ってました。魔族が憎い人たちが多いので、奴隷にする前に殺してしまうから。」
「奴隷商人としては、そんな人達は営業妨害だものね。」
「はい、僕がいたので、特に魔族狩りの人達の事を警戒していましたよ。もしかしたら、今回のオークションで魔族であるフィリアとフィリオの2人が出た事が魔族狩りの人達の耳に入ったのではないでしょうか?」
「ふふふ、なら、私が盛大に出迎えてあげなくちゃね?それはもう、相手が泣いて喜ぶくらいに。」
私の可愛い子達を?
傷付けて、無理やり奪い、殺そうって訳だ。
その中には自分の懐を潤したくて、捕まえた魔族を奴隷にするって事ね。
「っっ、ディア様、落ち着いて下さい!」
「大丈夫よ、コクヨウ。私はちゃんと落ち着いているから。」
「どこが、ですか!?」
がしりと、コクヨウに肩を掴まれる。
あら、やだ。
私、本当に冷静なのに。
「ディア様、お願いですから、危険な事に関わらないで下さい!」
「・・・コクヨウ?私が自分の身に危険が及ぶかもしれないからって、貴方達へ向けられる悪意を放置するとでも?」
引き止めようと私の肩に置かれたコクヨウの手に、自分の指を添える。
「ふふ、コクヨウ、無理よ。」
「え?」
「ねぇ、私が大事な貴方達を害そうとする者達を許すとでも思ったの?」
コクヨウに仄暗く微笑んだ。
11
お気に入りに追加
2,257
あなたにおすすめの小説
旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜
ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉
転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!?
のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました……
イケメン山盛りの逆ハーです
前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります
小説家になろう、カクヨムに転載しています
【※R-18】私のイケメン夫たちが、毎晩寝かせてくれません。
aika
恋愛
人類のほとんどが死滅し、女が数人しか生き残っていない世界。
生き残った繭(まゆ)は政府が運営する特別施設に迎えられ、たくさんの男性たちとひとつ屋根の下で暮らすことになる。
優秀な男性たちを集めて集団生活をさせているその施設では、一妻多夫制が取られ子孫を残すための営みが日々繰り広げられていた。
男性と比較して女性の数が圧倒的に少ないこの世界では、男性が妊娠できるように特殊な研究がなされ、彼らとの交わりで繭は多くの子を成すことになるらしい。
自分が担当する屋敷に案内された繭は、遺伝子的に優秀だと選ばれたイケメンたち数十人と共同生活を送ることになる。
【閲覧注意】※男性妊娠、悪阻などによる体調不良、治療シーン、出産シーン、複数プレイ、などマニアックな(あまりグロくはないと思いますが)描写が出てくる可能性があります。
たくさんのイケメン夫に囲まれて、逆ハーレムな生活を送りたいという女性の願望を描いています。
【R18】騎士たちの監視対象になりました
ぴぃ
恋愛
異世界トリップしたヒロインが騎士や執事や貴族に愛されるお話。
*R18は告知無しです。
*複数プレイ有り。
*逆ハー
*倫理感緩めです。
*作者の都合の良いように作っています。
男女比崩壊世界で逆ハーレムを
クロウ
ファンタジー
いつからか女性が中々生まれなくなり、人口は徐々に減少する。
国は女児が生まれたら報告するようにと各地に知らせを出しているが、自身の配偶者にするためにと出生を報告しない事例も少なくない。
女性の誘拐、売買、監禁は厳しく取り締まられている。
地下に監禁されていた主人公を救ったのはフロムナード王国の最精鋭部隊と呼ばれる黒龍騎士団。
線の細い男、つまり細マッチョが好まれる世界で彼らのような日々身体を鍛えてムキムキな人はモテない。
しかし転生者たる主人公にはその好みには当てはまらないようで・・・・
更新再開。頑張って更新します。
明智さんちの旦那さんたちR
明智 颯茄
恋愛
あの小高い丘の上に建つ大きなお屋敷には、一風変わった夫婦が住んでいる。それは、妻一人に夫十人のいわゆる逆ハーレム婚だ。
奥さんは何かと大変かと思いきやそうではないらしい。旦那さんたちは全員神がかりな美しさを持つイケメンで、奥さんはニヤケ放題らしい。
ほのぼのとしながらも、複数婚が巻き起こすおかしな日常が満載。
*BL描写あり
毎週月曜日と隔週の日曜日お休みします。
異世界転生先で溺愛されてます!
目玉焼きはソース
恋愛
異世界転生した18歳のエマが転生先で色々なタイプのイケメンたちから溺愛される話。
・男性のみ美醜逆転した世界
・一妻多夫制
・一応R指定にしてます
⚠️一部、差別的表現・暴力的表現が入るかもしれません
タグは追加していきます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる