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第3章〜恋愛編〜
もふもふ天国と邪魔者
しおりを挟む主人と配下。
貴族と庶民。
一体、どこが違うの?
皆んな同じ、心を持った命ではないか。
「フェンリル、私は貴方と対等な立場でありたい。主従とか配下とかではなく、友達になりたいの。」
「ほう、ディアは我と友達になりたいと申すか。くくっ、ますます、ディアは面白い。」
フェンリル尻尾が振られる。
「良かろう、我はディアと友になろうぞ。」
「本当?」
「うむ、友となるディアの大切な者達は、我も一緒に守ろう。何、友の頼みだからな。この我に任せるが良い。」
「っっ、ありがとう!」
「では、ディアよ。改めて、我にそなたが名を与えよ。」
フェンリルの名前。
ふわふわな白い毛並みに、青い瞳。
一体、どんな名前が目の前のフェンリルに相応しいだろうか?
悩ましい。
「・・・うーん、フェンリル、伝説のモンスター、あっ、」
思い浮かんだ、1つの名前。
うん、良いかも。
「・・・アスラーー・・・。」
「うん?アスラ?」
小さくぽつりと呟いた私に、フェンリルが首を傾げる。
・・うっ、可愛い。
「そ、そう、アスラ。神秘的な力を持った存在って意味なんだけど、どうかな?」
伝説のフェンリルには、ぴったりな良い名前じゃない?
「ほう、アスラ、か。良い名だな。良かろう、これからは我はアスラだ。」
「っっ、あっ、」
頷いたフェンリル、アスラと私の間に強い繋がりが出来るのを感じた。
「じゃあ、アスラ!さっそく1つ私からアスラにお願いがあるんだけど!」
「お願い?何だ?」
「思う存分アスラを撫でさせて下さい!」
もふりたい。
心ゆくまで撫で回したいの!
ぱたぱた揺れるアスラの尻尾へ、私は熱い期待の眼差しを向けた。
これ以上の最高の望みがあるだろうか?
いや、ない。
もふもふとは、この世の天国。
私にとっての、パラダイスなのである。
「・・・はぁ、ディア様。」
「お願い、アスラ!」
後ろで呆れるコクヨウもなんのその。
私は全く気にしない。
だって、目の前のアスラの尻尾にしか今は私の目がいかなのだから。
許してね、コクヨウ。
「ねぇ、アスラ、触ったらダメ?」
どうしても触りたい。
アスラの、そのもふもふの身体を。
視線がアスラのもふもふの身体に釘付けになってしまう。
「・・・う、うむ、そんなにもディアが望むなら、それぐらいなら、まぁ、良かろう。」
「本当!?」
「二言はない。ディアが我に触れる事を許そう。」
迫る私に怯み、若干の怯えを見せたアスラだったけと、撫でやすいようにその場に伏せてくれる。
「っっ、やった!」
アスラからもふもふを堪能する許可、いただきました。
思わずガッツポーズしたよね。
そっと、伏せてくれたアスラの背中を撫でてみる。
「ふぁっ、」
この世の幸福が目の前にありました。
ふかふかだぁ。
「はぁう、とても幸せ。」
何、アスラのこの素晴らしい手触りは。
ずっと、このもふもふを撫でていたくなるじゃないか。
「・・・、はぁ、」
でも、そんな私の幸せは長くは続かない。
ずっと展開させていた周囲のマップ。
その展開させていたマップ上に点滅するのは、私の敵を示す赤いマーク達。
「ーーー・・何んで私の幸せの邪魔をするかな。」
ずっと、監視されている事は知っていた。
が、何もしてこないから放置していたら、こうして明確な敵意を向けて迫って来ているので、アスラのもふもふな毛並みを撫でて幸せな気分だったのに、台無しになったじゃないか。
どうしてくれるの?
「でも、何で私達を狙うのかしら?」
何かした気は無い。
私達が狙われるような理由は、まったく思い浮かばないんだけど。
首を捻る私に対して、コクヨウが口を開く。
「・・・あの、ディア様。」
「うん?」
「たぶん、その敵意の相手は魔族狩りの連中では無いでしょうか?」
「・・・・はっ?」
魔族狩り?
なに、その胸糞悪い響き。
「・・コクヨウ、その魔族狩りって、何?」
自然と自分の声が低くなる。
何、魔族狩りって。
「っっ、その、魔族に恨みを持った人や、お金の為に奴隷として捕まえたい、連中、の、事です。」
「・・へぇ?他人の奴隷を奪う事は法で禁止されているのにね?」
ほう、なるほど、それは良い度胸だな。
浮かぶ冷笑。
おバカな連中もいたもんだ。
「えっと、彼等にとって、そんな事は関係ないんだと思いますよ。あの者の中には、魔族の全員を倒す事が当然だと考えている魔族討伐至高主義者も多いと聞きましたから、僕達を狙うとしたら魔族狩りの連中である可能性が高いです。」
困った表情を浮かべるコクヨウ。
「僕がハビスさんの元に来る前の奴隷商の人も魔族狩りの人達の事を怒ってました。魔族が憎い人たちが多いので、奴隷にする前に殺してしまうから。」
「奴隷商人としては、そんな人達は営業妨害だものね。」
「はい、僕がいたので、特に魔族狩りの人達の事を警戒していましたよ。もしかしたら、今回のオークションで魔族であるフィリアとフィリオの2人が出た事が魔族狩りの人達の耳に入ったのではないでしょうか?」
「ふふふ、なら、私が盛大に出迎えてあげなくちゃね?それはもう、相手が泣いて喜ぶくらいに。」
私の可愛い子達を?
傷付けて、無理やり奪い、殺そうって訳だ。
その中には自分の懐を潤したくて、捕まえた魔族を奴隷にするって事ね。
「っっ、ディア様、落ち着いて下さい!」
「大丈夫よ、コクヨウ。私はちゃんと落ち着いているから。」
「どこが、ですか!?」
がしりと、コクヨウに肩を掴まれる。
あら、やだ。
私、本当に冷静なのに。
「ディア様、お願いですから、危険な事に関わらないで下さい!」
「・・・コクヨウ?私が自分の身に危険が及ぶかもしれないからって、貴方達へ向けられる悪意を放置するとでも?」
引き止めようと私の肩に置かれたコクヨウの手に、自分の指を添える。
「ふふ、コクヨウ、無理よ。」
「え?」
「ねぇ、私が大事な貴方達を害そうとする者達を許すとでも思ったの?」
コクヨウに仄暗く微笑んだ。
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