リセット〜絶対寵愛者〜

まやまや

文字の大きさ
上 下
59 / 424
第3章〜恋愛編〜

もふもふ天国と邪魔者

しおりを挟む



主人と配下。
貴族と庶民。
一体、どこが違うの?
皆んな同じ、心を持った命ではないか。


「フェンリル、私は貴方と対等な立場でありたい。主従とか配下とかではなく、友達になりたいの。」
「ほう、ディアは我と友達になりたいと申すか。くくっ、ますます、ディアは面白い。」


フェンリル尻尾が振られる。


「良かろう、我はディアと友になろうぞ。」
「本当?」
「うむ、友となるディアの大切な者達は、我も一緒に守ろう。何、友の頼みだからな。この我に任せるが良い。」
「っっ、ありがとう!」
「では、ディアよ。改めて、我にそなたが名を与えよ。」


フェンリルの名前。
ふわふわな白い毛並みに、青い瞳。
一体、どんな名前が目の前のフェンリルに相応しいだろうか?
悩ましい。


「・・・うーん、フェンリル、伝説のモンスター、あっ、」


思い浮かんだ、1つの名前。
うん、良いかも。


「・・・アスラーー・・・。」
「うん?アスラ?」


小さくぽつりと呟いた私に、フェンリルが首を傾げる。
・・うっ、可愛い。


「そ、そう、アスラ。神秘的な力を持った存在って意味なんだけど、どうかな?」


伝説のフェンリルには、ぴったりな良い名前じゃない?


「ほう、アスラ、か。良い名だな。良かろう、これからは我はアスラだ。」
「っっ、あっ、」


頷いたフェンリル、アスラと私の間に強い繋がりが出来るのを感じた。


「じゃあ、アスラ!さっそく1つ私からアスラにお願いがあるんだけど!」
「お願い?何だ?」
「思う存分アスラを撫でさせて下さい!」


もふりたい。
心ゆくまで撫で回したいの!
ぱたぱた揺れるアスラの尻尾へ、私は熱い期待の眼差しを向けた。
これ以上の最高の望みがあるだろうか?
いや、ない。
もふもふとは、この世の天国。
私にとっての、パラダイスなのである。


「・・・はぁ、ディア様。」
「お願い、アスラ!」


後ろで呆れるコクヨウもなんのその。
私は全く気にしない。
だって、目の前のアスラの尻尾にしか今は私の目がいかなのだから。
許してね、コクヨウ。


「ねぇ、アスラ、触ったらダメ?」


どうしても触りたい。
アスラの、そのもふもふの身体を。
視線がアスラのもふもふの身体に釘付けになってしまう。


「・・・う、うむ、そんなにもディアが望むなら、それぐらいなら、まぁ、良かろう。」
「本当!?」
「二言はない。ディアが我に触れる事を許そう。」


迫る私に怯み、若干の怯えを見せたアスラだったけと、撫でやすいようにその場に伏せてくれる。


「っっ、やった!」


アスラからもふもふを堪能する許可、いただきました。
思わずガッツポーズしたよね。
そっと、伏せてくれたアスラの背中を撫でてみる。


「ふぁっ、」


この世の幸福が目の前にありました。
ふかふかだぁ。


「はぁう、とても幸せ。」


何、アスラのこの素晴らしい手触りは。
ずっと、このもふもふを撫でていたくなるじゃないか。


「・・・、はぁ、」


でも、そんな私の幸せは長くは続かない。
ずっと展開させていた周囲のマップ。
その展開させていたマップ上に点滅するのは、私の敵を示す赤いマーク達。


「ーーー・・何んで私の幸せの邪魔をするかな。」


ずっと、監視されている事は知っていた。
が、何もしてこないから放置していたら、こうして明確な敵意を向けて迫って来ているので、アスラのもふもふな毛並みを撫でて幸せな気分だったのに、台無しになったじゃないか。
どうしてくれるの?


「でも、何で私達を狙うのかしら?」


何かした気は無い。
私達が狙われるような理由は、まったく思い浮かばないんだけど。
首を捻る私に対して、コクヨウが口を開く。


「・・・あの、ディア様。」
「うん?」
「たぶん、その敵意の相手は魔族狩りの連中では無いでしょうか?」
「・・・・はっ?」


魔族狩り?
なに、その胸糞悪い響き。


「・・コクヨウ、その魔族狩りって、何?」


自然と自分の声が低くなる。
何、魔族狩りって。


「っっ、その、魔族に恨みを持った人や、お金の為に奴隷として捕まえたい、連中、の、事です。」
「・・へぇ?他人の奴隷を奪う事は法で禁止されているのにね?」


ほう、なるほど、それは良い度胸だな。
浮かぶ冷笑。
おバカな連中もいたもんだ。


「えっと、彼等にとって、そんな事は関係ないんだと思いますよ。あの者の中には、魔族の全員を倒す事が当然だと考えている魔族討伐至高主義者も多いと聞きましたから、僕達を狙うとしたら魔族狩りの連中である可能性が高いです。」


困った表情を浮かべるコクヨウ。


「僕がハビスさんの元に来る前の奴隷商の人も魔族狩りの人達の事を怒ってました。魔族が憎い人たちが多いので、奴隷にする前に殺してしまうから。」
「奴隷商人としては、そんな人達は営業妨害だものね。」
「はい、僕がいたので、特に魔族狩りの人達の事を警戒していましたよ。もしかしたら、今回のオークションで魔族であるフィリアとフィリオの2人が出た事が魔族狩りの人達の耳に入ったのではないでしょうか?」
「ふふふ、なら、私が盛大に出迎えてあげなくちゃね?それはもう、相手が泣いて喜ぶくらいに。」


私の可愛い子達を?
傷付けて、無理やり奪い、殺そうって訳だ。
その中には自分の懐を潤したくて、捕まえた魔族を奴隷にするって事ね。


「っっ、ディア様、落ち着いて下さい!」
「大丈夫よ、コクヨウ。私はちゃんと落ち着いているから。」
「どこが、ですか!?」


がしりと、コクヨウに肩を掴まれる。
あら、やだ。
私、本当に冷静なのに。


「ディア様、お願いですから、危険な事に関わらないで下さい!」
「・・・コクヨウ?私が自分の身に危険が及ぶかもしれないからって、貴方達へ向けられる悪意を放置するとでも?」


引き止めようと私の肩に置かれたコクヨウの手に、自分の指を添える。


「ふふ、コクヨウ、無理よ。」
「え?」
「ねぇ、私が大事な貴方達を害そうとする者達を許すとでも思ったの?」
 

コクヨウに仄暗く微笑んだ。


しおりを挟む
感想 148

あなたにおすすめの小説

旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜

ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉 転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!? のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました…… イケメン山盛りの逆ハーです 前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります 小説家になろう、カクヨムに転載しています

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

二度目の人生は異世界で溺愛されています

ノッポ
恋愛
私はブラック企業で働く彼氏ナシのおひとりさまアラフォー会社員だった。 ある日 信号で轢かれそうな男の子を助けたことがキッカケで異世界に行くことに。 加護とチート有りな上に超絶美少女にまでしてもらったけど……中身は今まで喪女の地味女だったので周りの環境変化にタジタジ。 おまけに女性が少ない世界のため 夫をたくさん持つことになりー…… 周りに流されて愛されてつつ たまに前世の知識で少しだけ生活を改善しながら異世界で生きていくお話。

セレナの居場所 ~下賜された側妃~

緑谷めい
恋愛
 後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。

女性の少ない異世界に生まれ変わったら

Azuki
恋愛
高校に登校している途中、道路に飛び出した子供を助ける形でトラックに轢かれてそのまま意識を失った私。 目を覚ますと、私はベッドに寝ていて、目の前にも周りにもイケメン、イケメン、イケメンだらけーーー!? なんと私は幼女に生まれ変わっており、しかもお嬢様だった!! ーーやった〜!勝ち組人生来た〜〜〜!!! そう、心の中で思いっきり歓喜していた私だけど、この世界はとんでもない世界で・・・!? これは、女性が圧倒的に少ない異世界に転生した私が、家族や周りから溺愛されながら様々な問題を解決して、更に溺愛されていく物語。

キャンプに行ったら異世界転移しましたが、最速で保護されました。

新条 カイ
恋愛
週末の休みを利用してキャンプ場に来た。一歩振り返ったら、周りの環境がガラッと変わって山の中に。車もキャンプ場の施設もないってなに!?クマ出現するし!?と、どうなることかと思いきや、最速でイケメンに保護されました、

処理中です...