リセット〜絶対寵愛者〜

第3章〜恋愛編〜

リリスの厳しい指導

今、私達がいるのは鬱蒼と緑が広がる森の中。
周囲には、私達以外に誰もいない。


「「はっ！」」
「ふごっ！！」


フィリアとフィリオの2人が今回倒すべきモンスターであるゴブリンの頭へとメイスを振り下ろす。
しかし、振り下ろしたはずの２人の攻撃はゴブリンに、紙一重で交わされてしまう。


「ーーー・・フィリア、フィリオ、武器を相手に振り落とすタイミングが遅いのです！2人共、そんな事では、いくらやっても相手に攻撃は当たりませんよ！？」


すぐさま、フィリアとフィリオの２人へリリスからの厳しい叱責が飛ぶ。


「さぁ、もう一度！今度は正確に上手く連携をしながら、敵に狙いを定めて武器をもっと素早く振り落としなさい！」
「「っっ、はいっ、」


フィリアとフィリオの2人がリリスの指示で、またゴブリンへと向かう。
その目は、真剣そのもの。
ゴブリンの目の前へ飛び出したフィリアが立ち塞がり、後ろからフィリオが迫った。


「ごふっ！？


挟み撃ちされた事に気が付いたゴブリンは、慌てて横へと逃げようとする。
がーー


「ーーーっっ、逃がしません！」


しかし、そこに待ち受けていたアディライトの大鎌がゴブリンの胴体を切断した。
声なく倒れ臥す、ゴブリン。
何度か痙攣を繰り返し、ゴブリンは完全に絶滅した。


「・・アディライト、今、貴方は一瞬ゴブリンを倒す事を躊躇しましたね？」


ゴブリンを倒したアディライトに、リリスは厳しい目を向ける。


「っっ、も、申し訳ありません。」
「貴方は、仲間を危険に晒すつもりですか！？甘えや敵への優しさは全て捨てなさい！」
「はい、かしこまりました。」


頷いたアディライトは、自分の武器である大鎌を強く握り締めた。


「そして、ディオン。貴方は仲間への支援が遅い！周りをしっかりと見て、回復は仲間が攻撃を受けたと同時に掛けなさい！」


アディライトの次にリリスが厳しい目を向けたのは、ディオン。


「ディオン、貴方は戦闘中の状況判断は何よりも、誰よりも素早くしなくては意味がありませんよ！状況判断、決断力をもっと磨きなさい！」
「はっ、申し訳ありません。もっと精進いたします。」
「では、全員もう一度！」


リリスの掛け声に、一斉に新しいモンスターへと全員が走り出した。
厳しいリリスの指導は、まだ続く。
私の目の前で繰り広げられる、訓練という名のリリスの扱き。
地獄の猛特訓とも呼べるだろう。


「・・・うわぁ、」


あまりのリリスの皆んなへのスパルタに顔が引き攣った。
なんて、恐ろしい指導。
そのリリスの扱きに必死に食らいつく皆んなを、私は心から尊敬するわ。


「・・・ははっ、リリス、なんだかスパルタ、だね？」


そんな皆んなの事を邪魔にならない場所で見守る私は、ただ乾いた笑いを浮かべるしかない。
皆んな、大丈夫かな？
私の隣に護衛として控えるコクヨウがその口を開く。


「大丈夫ですよ、ディア様。全ては、皆んなの為なんですから。だからこそ、どんなにキツくても皆んな投げ出さずにいるんです。」
「・・・だと、良いけど。」


溜め息を吐き出す。


「この分なら、私の考えより早く迷宮の攻略へ行けそう。」
「そう、ですね。こうして皆んなの戦いを見た感じですと、迷宮の低層くらいなら苦戦する事なく進めると思います。」
「と、なると、迷宮攻略の為に私の方でも新しく戦力の補充をしようかしら？」


何事も安全第一。
これからの迷宮攻略へ向けて、戦力はいくらあっても無駄にはならないもの。
率先して補充したい所。


「戦力の補充ですか？では、ディア様の新しい従魔を作られるので？」
「うん、そうしようかな。皆んなが頑張っている事だし。」


これも丁度いい機会だ。
暇な時間を有効活用しましょう。


「皆んなの戦闘の邪魔になると行けないし、この場所から少し離れようかな。コクヨウはどうする？」


本当は、私1人でも全く問題ないんだけど、過保護なリリスやコクヨウが絶対に側から離れないんだよね。
現にーーー


「ディア様にお伴します。」


コクヨウの答えは迷い無く即答だし。


「ふふ、ありがとう。」


さて、前から考えていた従魔をこの時間で作ってしまいますか。
その場を離れる。
皆んなの戦闘の邪魔になりたくないからね。


「じゃあ、コクヨウ、行こうか？」
「はい、ディア様。」


頷いたコクヨウを連れ、厳しいリリスの指導でモンスターとの戦闘を何度も繰り返す皆んなから離れて歩き出す。
しばらく、まったりと歩いてたい私とコクヨウは、広々と木々が開けた場所で立ち止まった。
周囲を見渡してみる。


「うん、邪魔になる木々もないし、ここら辺で良いかな？」


見通しも良いしね。
もし敵が近づいて来ても、見通しが良いから安心だ。
もちろん、自分のスキルであるマップで周囲は警戒はするけどね。


「では、ここでさっそく新しい従魔を作りますか。」
「ディア様、もう、どの様な従魔になさるか決めてあるんですか？」
「ふふ、決めてあるよ。」


実はこれから作ろうと思っている新しい従魔のイメージは、少し前から考えていたんだ。
落ち着いたら、作るつもりでね。


「ファンタジーの定番のモンスターと言えば、フェンリルでしょ。」


伝説上の生き物、フェンリル。
私が新しく従魔として作ろうとしている子だ。