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第3章〜恋愛編〜
閑話:全ては主人の為
しおりを挟むリリスside
真っ暗な寝室のベットの中から聞こえてくるのは、私が何よりも大切で愛おしく、敬愛する主人であるディア様の健やかな寝息。
その寝顔は本当に可愛らしい。
ずっと見ていられる。
が、今日は我慢せざる得ない。
「・・・ようやくディア様は、眠られたようね。」
コクヨウに抱き付いて眠る愛おしい主人の寝息をしっかりと確認し、ディア様を起こさぬよう静かに寝室のドアを閉める。
振り向いた私の視線の先。
私の事を待つ、コクヨウ以外のディア様の新しい奴隷達。
「ーーーさて、皆んな分かっていますね?これから先、貴方達はディア様の為に生き、その与えられた力をディア様の敵となる者達に使うのです。」
リビングに集まる全員の顔を私は見渡す。
これから先、私達が最も優先するのは、至高の存在であるディア様の平穏と、その笑顔を守る事。
その邪魔をするものは排除するのみ。
「いいですか?例え誰であろうと、ディア様の敵は全て躊躇なく排除なさい。それがすべてディア様の平穏となると心得なさい。」
「「「「はいっ、!!」」」」
良い返事を返す皆んな。
美しき我らが主人ディア様。
もし、その存在を権力者が欲しがったら?
「敵である相手が権力者だろうと、絶対に屈してはなりません。その為に、貴方達には、もっと力を手に入れて貰います。絶対的な力を。」
薄汚く、ディア様に群がる権力者達を跳ね除けられる力を早急に全員が得る必要がある。
ディア様を守る為にも。
静かに聞いていたアディライトが、ゆっくりちその口を開く。
「あの、リリスさん?リリスさんが言う、その絶対的な力とは何ですか?」
「良い質問です、アディライト。まず貴方達全員には、これから冒険者ランクのSを目指して貰います。」
Sランク冒険者。
そのランクになった冒険者の数は世界でも少なく、憧れと畏怖の象徴。
普通の人間がSランク冒険者になろうとするのは、とてつもなく無謀な夢だと言われる事だろう。
だがーー
「しかし、全員になって貰いますよ?例え、どんな事をしても、貴方達にはSランクの冒険者に。」
その恩恵は、計り知れない。
どんな国の権力者だとて、安易にSランク冒険者相手に手を出そうとは思わないだろう。
一種の抑制力となる。
「力は武器です。愚かな考えを持つ者達への抑制力にもなるでしょう。」
それでも、一握りのバカはいるものだ。
しかし、Sランクの称号は一国の王とて無視の出来ない力を持つ。
「明日から、この私が貴方達を徹底的に扱きます。辛いからと言って、弱音を吐く事は許しませんから覚悟なさい。」
全ては、ディア様の恩為。
今のまま、皆んなが弱いままではいられない。
「貴方達が弱ければディア様を愚かな権力者に奪われる可能性もあるのです。又はディア様を得る為に人質として貴方達を利用しようと考える者も出てくる。」
お優しいディア様は、必ず皆を守ろうとするだろう。
それで、ご自分を差し出す事となっても。
ご自分の事よりも、私達を第一優先に考えてしまうディア様だから。
「そして、貴方達も必ず生き延びられるだけの力を持ちなさい。ディア様が傷つかぬ為に。もしも貴方達の身に何かあれば、ディア様のお心は壊れてしまうかもしれないのですから。」
「「「「っっ、」」」」
その事を想像したのか、全員の顔が歪む。
誰かを失う事に酷く怯えるディア様。
今この場にいる誰かを失った時、愛おしいディア様のお心は壊れてしまう可能性だってあるのだ。
それは絶対に防がなくてはいけない事。
これも私達が守らねばならぬ優先事項でもある。
「全員、良いですね?何が何でも生き抜く事で、ディア様のお心も守るのです。出来ますね?」
「「「「はいっ、」」」」
力強く頷く全員に、私は満足げに笑った。
「良い返事です。これからの皆んなの働きには期待しましょう。」
なんとも鍛え甲斐がありそうだ。
もう全員に寝る様に促し、明日からの予定を考えていく。
「まず初めは、全員がディア様からいただいた新しい力に慣れる事からですね。」
与えられた力に溺れるなら、そこまで。
その者はディア様の可愛い愛玩動物として、一生を安全な檻の中で生きていただきましょう。
「しかし、そうでないのなら、」
救いとなるだろう。
心に何かしらの傷を抱えた、ディア様の。
「ーーー・・全ては、これから先の貴方達の働きにかかっているのです。」
私の呟きは闇に消え、ゆっくりと夜は更けていく。
名前:リリス
LV31
種族:アラクネ
隷属:ディアレンシア・ソウル
称号:蜘蛛の女王、寵愛されし者
HP:3810/3810
MP:4280/4280
スキル
隠密、気配察知、危険察知、幻惑、攻撃力上昇、防御力上昇、魔力回復上昇、状態異常耐性、身体強化、思考加速、光魔法、詠唱破棄
ディアレンシア・ソウルの奴隷となった家族
・コクヨウ
・ディオン
・アディライト
・フィリア
・フィリオ
従魔
・リリス
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