リセット〜絶対寵愛者〜

まやまや

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第2章〜奴隷編〜

4人目の候補

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幸せにしたいと思ったの。
この理不尽な世界で傷ついた、皆んなの事を。


「この場にいる他のお客よりも、ディア様に買われた方が彼も幸せです。絶対に。」
「コクヨウも、私に買われて幸せだって思ってくれている?」
「もちろんです、ディア様!」


即答するコクヨウ。
そこに、なんの躊躇いも、微塵の迷いも見えない。
あるのは、私への揺るぎない絶対の信頼。


「ふふ、コクヨウ、ありがとう。とても嬉しいわ。」


笑みが広がる。
コクヨウが幸せだと思ってくれるって事が、私にとって何よりも嬉しいから。


「僕こそ、見つけてくれて、こうして大切にしてくれてありがとうございます、ディア様。」
「あら、まだまだよ?私はコクヨウが嫌ってくらい、まだまだ可愛がる気だから。」
「・・嬉しいです。」


繋がれた手に、力が込められる。
これから買う全員がコクヨウと同じように、そう思ってくれれば良い。
私と一緒にいて、幸せだ、と。


「さて、そろそろ彼に会いに行きましょうか、コクヨウ。」
「はい、ディア様。」


手を繋いだままコクヨウを連れて、ゆっくりと歩き出す。
彼がいるであろうブース内へ。


「・・・いたわ。」


小さく呟く。
ようやく、見つけた。
今日の4人目の、購入候補をーーーー


『ーーーーディア様、最後の4人目は、片羽の妖精族です。』


足を踏み入れた私とコクヨウの事を、リリスの報告通り片羽の妖精が無感情のまま迎え入れた。
金色の長い髪。
緑色の瞳。
私の視線の先にいる秀麗な容姿の片羽の妖精は、ぴくりとも表情を動かさず椅子に黙って座ったままだ。
まるでーー


「・・・人形のようね。」


誰かの手によって精巧に作られた綺麗な人形のよう。
息をしているのかさえも疑いたくなるほど、微動だにしない妖精族の彼。
こうして、沢山のお客達に見られていても、なんの反応も示さない。


「彼が本当に生きているのか、疑いそうだわ。」


それほどの美。
他者を惹きつける魔性さを、目の前の彼は秘めている。


「ディア様、彼、とても綺麗ですね。さすが妖精族と言うんでしょうか?」


感嘆の吐息をコクヨウが吐き出す。


「えぇ、さすがは、希少種な妖精族。エルフ以上の容姿だわ。」


コクヨウの賛辞に同意する。
エルフよりも希少種である種族なだけあると感心するばかり。
感嘆の溜め息しか出ない。


「ーーーあぁ、いらっしゃいませ、お客様。珍しき、妖精族の奴隷はいかがでしょうか?」


じっと、目の前の片羽の妖精族の彼を見つめていれば、1人の男性がいそいそと私の側に近寄って来る。


「お客様、私は奴隷商人のビルと申します。どうぞ、お見知り置きを。」


どうやら、この人が奴隷商人らしい。
当たり障りなくビルと挨拶を交わし、私はまた視線を妖精族の彼へと向ける。


「我が商品が気になりますか?ああして片羽なのですが、貴重な妖精族ですよ。お客様、良かったら、もっと近くで商品を見て行って下さい。」
「あの、なぜ、彼は片羽なんですか?」
「それが、本人から聞き出したところ、どうやら生まれつき片羽なんだそうですよ。妖精族にとって、羽が損なわれる事は蔑視の対象なんだとかで、住んでいた場所から放逐されてしまったよんなんです。そのまま彷徨い、行き場もお金もなくなって最後には奴隷となったと言うわけです。ささ、お客様、どうぞ、もっとお近くに。」
「えぇ、」


奴隷商人に促され、椅子に座ったままぴくりとも動かない妖精へと近づく。


「こんにちは。」
「・・・。」


無言の彼。
・・ふむ、目に光が無い、か。
覗き込んだ瞳の奥には、何の感情も宿ってはいなかった。
鑑定してみる。




名前:ディオン
LV 4
性別:男
年齢:68
種族:妖精族
HP:460/460
MP:930/930
スキル
生活魔法、風魔法




うぉ、年齢が68歳だよ。
まぁ、エルフや妖精族はとても長命だって聞くから、この年齢はまだ若い方なのかな?


「ーーーー私は、ディア。ねぇ、私の声は聞こえてる?」
「・・・・。」


虚ろな瞳が私の事を見上げる。
その瞳の奥に、やはり感情と呼べるようなものは全く見当たらない。


「・・この瞳、苦手だわ。」


小さく呟く。
昔、あちらの世界の私がしていた目だ。
毎日の様に鏡の中で見ていた。
自分の虚の瞳を。


「貴方、期待する事を止めたのね。この世界の誰も自分を救ってくれないって。」


ただ、彼は心を閉ざしているだけ。
なら、まだ救える。
片方の羽がないと言うだけで、傷付けられてきたこの子を。


「・・・、」
「ふふ、あぁ、良かった、一応は私の声は貴方に届いているのね。」


ピクリと私の声に反応した彼に微笑む。


「苦労したのね、貴方も。」


年齢が68歳だと言うのに、レベルが低いのは、そのせい。
ただ片羽と言うだけで、ずっと彼は周りからろくな世話もされなかったのだろう。


「お客様、どうでしょう?お気に召していただけましたでしょうか?」
「はい、気に入りました。」
「おぉ、ありがとうございます。では、この後にあります競りにご参加下さい。」
「えぇ、そうします。」


この場にいるのも、ここら辺が潮時だろう。
頷いた私は最後にディオンにだけ聞こえるように小さく呟き、嬉しそうな奴隷商人にお礼と別れを告げ、彼がいるブースから離れた。


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