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第2章〜奴隷編〜
最後のブース
しおりを挟む重なった私達の手。
震えるアディライトの手をしっかりと握り、私はヨーデルへと視線を向ける。
「ヨーデルさん、アディライトの事は私が買います。」
「ほ、本当でございますか!?」
「本当です。ですから、アディライトの真実を、必ず他の人に伝えて下さい。」
「え?」
「狡いかもしれませんがアディライトの事を、私は必ず手に入れたいのです。アデイライトの噂を知れば、他の買い手が減ると言う打算で申しております。」
「・・・。」
「私の言う通りにして下さいますよね?実際に、商人である貴方がすべき事を。」
「っっ、わ、分かりました。アディライトの真実を、きちんと責任を持って私がお客様へお伝えします。」
脂汗を浮かべたヨーデルが頷く。
よし、これでアディライトへ群がるだろう人達を多少は減らせる。
さて、保険もかけますか。
このヨーデルって商人は、いまいち信用が出来ないから。
【ーーーーリリス。】
呼ぶのは、私がもっとも信頼を置く1人、リリスの名前。
(はい、ディア様。このまま、ヨーデルとアディライトの様子を配下に監視させます。)
【ふふ、話が早くて助かるわ。リリス、お願いね?】
(お任せを。)
気負いなく、リリスが請け負う。
優秀なリリスに任せていれば、間違いなくこの場は大丈夫だ。
アディライトの、私の不利益になりそうな場合、リリスから報告がされる事だろう。
これで、ヨーデルも見張れる。
「アディライト、もう私は行くわ。また後で、会いましょう?」
名残惜しいが、次に向かわないと。
あぁ、でも、アディライトにこれだけは言っておかないとね。
「ねぇ、アディライト?次に会う時は、アディライトの本当の笑顔が私は見たいわ。」
「っっ、!?」
アディライトの表情が驚きに変わったのは、ほんの一瞬だけ。
「また、ね?アディライト。」
「っっ、はい、はい、貴方様を、お待ちしております!!」
この場を立ち去る私を見送るアディライトの顔に、偽りの笑顔は、もう無かった。
「・・・、絶対に、アディライトの事も競り勝たなきゃらね。」
その本当の笑顔を守る為にも。
決意を新たに、私はコクヨウを連れて歩みを進める。
私がこのオークションで買うと決めた候補の魔族である双子のフィリアとフィリオ、そして、珍しいオッドアイのアディライトの3人には、無事に会えた。
あとはーーーー
「あの彼が最後の1人、ね。」
小さく呟く。
4人目の購入候補に会う為に、コクヨウ連れて足を進める。
その合間に他のブースにいる奴隷の子達を見て回っていても、特に欲しいと思えなかった。
だから多分、これから会う4人目の候補で、今日のオークションで私が買う奴隷の人数が決まるはずだ。
「ふふ、彼はどこにいるのかしら?」
私の4人目の購入候補の子は。
会うのが楽しみだ。
「ディア様、どうやら、あそこが最後のブースみたいです。」
コクヨウが、ある一角のブースを指差す。
「ここにいるんですかね、ディア様が最後の候補と考えている奴隷が。」
「えぇ、コクヨウ、多分そこに彼がいるはずだわ。」
いよいよ、最後のブースだ。
お目当の子が他の所にいないと言う事は、このブース内で、当たりなんだと思う。
ブース内をマップで確認してみれば、数人の無害である証の青いマークが表示されているので、どうやら先に他のお客もいるらしい。
「コクヨウ、どうやら彼がいるブースの中に先客がいるみたい。」
「本当ですか?まぁ、彼の種族を思えば、お客も集まりますよね。」
「そうね、少しだけ傷物だとしても、彼の種族なら間違いなく欲しがる人は多いでしょうから、注目されるでしょうね。」
それだけ、彼の種族は貴重だ。
お客がいるのも、オークションで競う事も想定内。
まぁ、この後に実際に会ってみて、私が彼を気に入り、買うと決めたら必ず手に入れる気だけど。
「ふふ、これで毎日が一気に華やかになるわね。」
孤独だったあの頃。
こちらの世界に来て、私の世界は大きく変わった。
眩しいほどに。
「ディア様がそんなに嬉しそうで、僕も幸せです。」
コクヨウが嬉しそうに笑う。
「・・あの、でも、」
「うん?」
「・・・、新しい子達が来ても、僕の事も忘れないでくださいね?」
瞳を潤ませて私の事を見るコクヨウ。
な、なんて破壊力。
「もちろんよ、コクヨウ。私が可愛いコクヨウの事を忘れたり蔑ろにする訳がないでしょう!?」
全力で可愛がりますとも。
・・それでコクヨウにうざがられて嫌われたら、絶対に凹む自信がある。
「コクヨウが嫌だってくらい、絶対に大切にするよ。」
「・・我が儘を言っても?」
「おねだり大歓迎!え、もしかして、して欲しい事あるの!?それとも、何か欲しいもの!?コクヨウ、何!?』
可愛いコクヨウからのおねだりなら叶えるよ?
当然じゃないか。
「・・、えっと、ディア様と手を繋ぎたいです。」
恥ずかしそうに頬を染めるコクヨウ。
・・何て可愛いおねだりなんだ。
「ディア様?」
「はっ、」
あまりの可愛らしさに、一瞬意識が飛んでいた。
危ない。
「だめ、ですか?」
「そんな、ダメじゃないよ、コクヨウ。さぁ繋ごう。」
コクヨウと手を繋ぐ。
「・・へへ、僕、今とても幸せです。」
「私も幸せよ。こんなに可愛いコクヨウと出会えて、とっても幸せ。」
こんなに可愛いコクヨウにも会えたし。
この世界に来られて、今の私はとても幸せだ。
「ねぇ、コクヨウ?」
「はい?」
「これから会う彼にも、そう思ってもらえるようにしないと、ね?コクヨウも一緒に幸せになって。」
「っっ、はい、ディア様。僕もディア様と、これから増えていく家族と幸せになります。」
「ふふ、うん、皆んなで幸せになろうね。」
コクヨウと2人、微笑み合う。
皆んなを私の家族として迎えたら、絶対に寂しい想いはさせない。
私の誓いだ。
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